表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
盾にされた私、異世界ではただの猫です  作者: 蛇目菊 欲狐
第1章
29/33

25-治癒士の願い

『お願いします。どうか奥様の御病気の為に、その御力を貸しては頂けないでしょうか』


そう言われても、すぐには答えられなかった。

一度、私の部屋で事情を聞くことにした。


「……先走って、あのような場でお願いしてしまいました。申し訳ありません」


ソファに座り、少し反省した様子でカトレアさんが言う。


私は「気にしないで」と言う代わりに、足元へ擦り寄った。


それで少し気持ちが落ち着いたのか、彼女の表情がわずかに和らぐ。


そこでエルリックさんが口を開いた。


「……セラフィーネ様。カトレアの光魔法でも、回復されなかったのか」


「ええ……ダメでした」


暗い声でカトレアさんが答える。


「テオドール様。アンネリーゼ様のお母君であるセラフィーネ様は、数ヶ月前に急に倒れられました」


「医者を呼び、薬やポーションを処方して頂き、私も第1騎士団の勤務から外れ、セラフィーネ様の治療にあたる事になりました」


森にいた第1騎士団の中にいなかった理由がわかった。

そして、奥様…セラフィーネさんの治療を許されているカトレアさんは、能力含め、かなりの信頼を寄せられてる人のようだ。


「それで、光魔法で回復促進を試みましたが……」


そこまで言うと、カトレアさんは言葉を止め、顔を伏せた。


下から覗き込むように見上げると、口元を歪めているのが見える。

それがあまりにも痛々しくて、胸が締めつけられた。


思わず、前足を彼女の足にそっと乗せる。


カトレアさんは、泣きそうな顔で私を見つめた。


「……辺境伯騎士団の中では、一番の光魔法の使い手だと自負していました」


「それなのに今は、セラフィーネ様を救うどころか、苦しめてしまっています」


「どうすれば回復するのかも分からず、色々試しましたが……全て効果がありませんでした」


苦しそうに言葉を紡ぐその姿は、あまりにも弱々しかった。


見ているこちらまで辛くなり、思わず顔が歪む。


「そこで……あなたを見つけたのです。恩猫様」


「訓練場での、あなたの魔法の技術を見て。光魔法も使えると聞いて……」


「もう、あなたしかいないと思ったのです」


懇願するように向けられた言葉は、あまりにも切実だった。


……私が、救う?


確かに今まで助けられた人はいる。

でもそれは、たまたま上手くいったり、知っている魔法だったから出来たことだ。


今回の話は違う。


もし私の勘が正しければ、セラフィーネ様は――


「……やはり、無理なのでしょうか」


考え込んでいた時、カトレアさんの悲しげな声が聞こえた。


顔を上げる。


そこには、諦めと絶望が入り混じった目をしたカトレアさんがいた。


「……セラフィーネ様には、返しきれない恩があるのです」


「憧れて背中を追い続け、共に戦い、旅をして……」


「この領地へ嫁ぐ時も、私を誘ってくださって。私はそれについて来ました」


「なのに私は……その恩も返せないまま、見送ることになるのでしょうか」


涙を堪えるその姿を見た瞬間。


さっきまで考えていた迷いが、全部吹き飛んだ。


……このままだと。


前の世界にいた頃と、何も変わらない。


誰も助けられず、役にも立てない。

そんな自分に、また戻るの?


そう思った瞬間、答えは決まっていた。


ソファへ飛び乗る。


そして、カトレアさんの腕へ前足をちょんちょんと乗せた。


ゆっくり私を見る彼女に、こくりと頷く。


やってみよう。


出来るかどうか悩むんじゃない。


やるしかない。


やってみなければ、助けられる可能性すら見つからないのだから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ