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盾にされた私、異世界ではただの猫です  作者: 蛇目菊 欲狐
第1章
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閑話-メイドを救った恩猫


恩猫様に初めてお会いした時、領主様に抱えられているお姿があまりにも可愛らしく、胸がときめいたことを覚えています。


その時は、領主様方がいる場だからと、なんとか踏みとどまることができました。


ですが翌日。

お独りでアンネリーゼ様たちを待っている恩猫様の姿を見て――


思わず、


「撫でさせてください!」


などとはしたないお願いをしてしまいました。


驚かれている様子でしたが、それでも頷いて触れることを許してくださった時は、どれほど歓喜したことでしょう。


恐る恐る触れると、柔らかくふわりとした感触。

それでいて、さらりと整った毛並み。


ずっと撫でていたくなる、上質な触り心地でした。


優しく撫でていると、気持ち良さそうに身を委ねてくださる恩猫様。


その可愛い姿に、完全に心を撃ち抜かれてしまいました。


無心で、心ゆくまで撫で回していると――


ふと後ろに気配を感じました。


振り返ると、そこには列ができていました。


周りも囲まれています。


……どうやら皆、恩猫様に触れてみたかったらしいのです。


私が場所を譲ると、次々に皆が恩猫様に触れ始めました。


そして終いには、恩猫様が揉みくちゃにされているところを、アンネリーゼ様たちに回収されていきました。


もちろん、後でしっかり叱られました。


その後。


私が事の発端ということもあり、通常業務に加えて、訓練場にある騎士団の事務所へ書類を届ける役目を任されました。


そこそこの量の書類を抱え、訓練場の横を通りかかった時のことです。


ふと視界の先に、恩猫様の姿が見えました。


少し離れているので見えにくいですが、アンネリーゼ様と第1騎士団長様もいらっしゃいます。

間違いないでしょう。


アンネリーゼ様に擦り寄る恩猫様。


……羨ましい。


私も、あんな風にすりすりしてもらえないでしょうか。


そんなことをぼんやり考えていました。


その時です。


キィン――!


鋭い金属音が響きました。


「危ない!!」


叫び声が聞こえ、思わず顔を上げます。


すると。


模擬刀が回転しながら、こちらへ飛んできていました。


書類を抱えている以上、身構えることもできません。


そして恐怖で足がすくみ、逃げることもできませんでした。


思わず、ぎゅっと目を瞑ります。


降りかかる衝撃に耐えるしかありませんでした。


――ですが。


その衝撃は、来ませんでした。


キンッ――!


何かが弾かれる音。


恐る恐る目を開けると、目の前に薄い膜のようなものが張られていました。


模擬刀は、それに弾き返されていたのです。


その時、横から黒い影が視界に入りました。


弾き返された模擬刀の柄を、口で咥えています。


目を凝らして、その正体を確認します。


――恩猫様でした。


一瞬、恩猫様と目が合います。


先ほどまで鋭かった目が、ふっと柔らかくなりました。


それはまるで、無事を確認して安心したかのようでした。


恩猫様は模擬刀を咥えたまま、アンネリーゼ様たちの元へ駆けていきます。


「あれが……恩猫様のお力……」


誰にも聞かれないような小さな声で、ぽつりと呟きました。


「恩猫様」と呼ばれる理由。


その力の一端を、私は見てしまったのです。


それはあまりにも――


神々しいお姿でした。


我に返り、私は慌てて恩猫様の元へお礼を言いに向かいました。


先ほどの神々しさを感じながらも、やはり目の前にいるのは可愛らしい猫の姿。


神々しい存在なのか。

それとも、ただ可愛い猫なのか。


そのどちらもが本当の姿のようで――


私は、思わずそんなことを考えてしまうのでした。


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