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盾にされた私、異世界ではただの猫です  作者: 蛇目菊 欲狐
第1章
25/30

23-隠密騎士エルリック

数日後。


その後は特に何事もなく、穏やかな日々が続いていた。


「……恩猫様、今日はどうする?」


声をかけてきたのは、第1騎士団員のエルリックさんだ。

今日は護衛兼お世話係として、側に控えてくれている。


……というか、かなりの頻度でエルリックさんが付いてくれている。


有難い反面、少し申し訳ない気持ちにもなる。

初対面の時にやってしまったことを思い出すからだ。


そんなことを考えながらエルリックさんを見ると、

薄い緑色の瞳が静かにこちらを見ていた。


感情のあまり読めない目。


だが、しばらく私を見ていたエルリックさんは、小さく息を吐いた。


「……気にしなくていい」


短く、それだけ言う。


そして視線を少し細めた。


「見ているだけで面白い」


……どうやら、考えていたことが顔に出ていたらしい。


私は思っていた以上に分かりやすいようだ。


エルリックさんとの初対面は、

領主が私を正式な客人として認めた、あの日だった。


……正確には、私が少し先走ってしまったのだけれど。


あの日、護衛兼世話係を誰にするかという話し合いになり、

その役目はアンネリーゼに決まった。


それならばと、私は部屋の隅へ近づき――じっと見つめた。


「恩猫様、何をされているのです……?」


振り返ると、アンネリーゼが不思議そうな顔でこちらを見ていた。


だが私は答えず、再び部屋の隅を見る。


すると。


「……まさか」


レオンハルトさんが目を見開いた。


「恩猫様、気付いていたのですか……?」


気付くも何も。

この部屋に来る前から、ずっと一緒にいたのだ。


「……領主様、申し訳ございません」


観念したように姿を現したのは、森で助けた時に一緒にいた騎士の一人だった。


部屋の隅で魔法を使い、姿を隠していたらしい。


彼は一昨日から二日間、ずっと私の近くで監視していた。


疑いが晴れ、今日はアンネリーゼが側にいる。

ならば、この人はもう離れてもいいのではないか。


そう思って、つい見つめてしまったのだ。


「まさか……エルリックが見破られるとは」


ローガン団長が呟く。


「騎士団で最も隠密に長けた男だぞ」


視線がエルリックさんに向く。


彼は特に動揺した様子もなく、ただ静かに立っていた。


「……闇魔法」


ぽつりと一言だけ呟く。


それだけで、皆が理解したようだった。


「やはりそうでしたか」


カイ副団長が頷く。


「昨日ギルドで見た黒い魔法は、闇魔法でしたか」


「……俺以上の使い手」


その会話を聞きながら、レオンハルトさんは頭を抱えていた。


「……光属性を持ちながら、闇属性魔法まで使えるとは……」


遠くを見る目には、疲労が浮かんでいる。


「ますます守らねばならぬ理由が増えたな……」


そしてエルリックさんを見る。


「エルリック」


名前を呼ばれ、彼は静かに顔を向けた。


「最近、偵察任務は入っていなかったな」


「紹介するのは後にするつもりだったが、話が変わった」


「恩猫様の護衛を主任務として受けてくれないか」


「承知した」


短い返事。


それだけだった。


そしてエルリックさんは私の方へ向き直る。


「エルリック・ナハト、です」


わずかに礼をする。


「よろしくお願いします」


……そんな流れで、今に至る。


正直、何かやってしまった気はするのだけれど、

何が問題だったのか自分ではよく分からない。


気付いた時には話がとんとん拍子に進んでいて、止めることも出来なかった。


後になってから、

エルリックさんのプライドを傷付けていないかと心配になったのだが――


当の本人は、特に気にしている様子はない。


むしろ、どこか面白そうにこちらを見ていることがある。


……本当に、気にしていないのだろう。


思考の波に溺れる前に、気持ちを切り替える。


さて、今日は何をしようか。


屋敷の散歩でもしよう。

ついでに、訓練場も覗いてみようかな。


試してみてほしい魔法の使い方もあるし。


今日の目的を決め、私は部屋の扉へ向かう。


エルリックさんが先回りして、静かに扉を開けてくれた。


私を受け入れてくれた辺境伯家の人たちに、

少しでも恩返しが出来たらいい。


そうして私は、屋敷の散歩へと出発した。


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