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盾にされた私、異世界ではただの猫です  作者: 蛇目菊 欲狐
第1章
24/29

22-恩猫、正式な客人となる

領地案内をしてもらった翌朝。

私は領主の執務室にいた。


そこには、テオドール、アンネリーゼ、第1騎士団の団長と副団長もいる。


……やはり昨日、一昨日の行動は問題だったのだろうか。


騒ぎになりかけた件もある。

叱責を受けるのだろうか。

…もしくは追い出される…?


悪い予想が脳内を巡る。

迷惑をかけてしまったのだと思い、思わず身を縮こませる。


「小さきものよ。一昨日は我が騎士の魔法向上指導に加え、昨日は我が領のために貴重な資源を提供してくれた。感謝する」


項垂れていた私に、領主は丁寧に礼を述べた。


……怒られる方じゃ、ないの?


思わず顔を上げる。


不思議そうに見つめる私に、領主は苦笑を浮かべた。


「……感謝することはあれど、怒るなど出来るわけがないだろう」


そして、少し表情を引き締める。


「むしろ、謝るべきはこちらだ」


……?


謝られるようなことがあっただろうか。


小首を傾げる私に、領主は説明を続けた。


「『歓迎する』と言いながら、我々はあなたを試した。ブラムが先走って伝えてしまったようだから、もう知っているだろう」


訓練場での出来事を思い出す。


「結果として、あなたの力も行動も、魔物でも間者でもないと証明された」


領主は静かに続けた。


「だが、それでも。あなたの信用を裏切る行為だったことに変わりはない」


そして、深く頭を下げた。


「大変申し訳なかった」


確かに、少しだけショックは受けた。


けれど、仕方のないことだとも思った。


危機の場に突然現れた、正体不明の猫。

何の確認もせず信用する方が無理がある。


貴族であれば、相手を推し量る為に、狡猾さも必要だ。


だから、笑顔で迎え入れつつ、この二日間。


案内役も二人に限定し、私がどう動くのかを見ていたのだろう。


それでも、皆優しく接してくれた。


ブラムがああして先に伝えてくれたのも、きっと私の心の傷を少なくする為だったのだと思う。


信用したい気持ち。

だが、信用してよいのか分からない葛藤。


皆、その間で悩んでいたのだろう。


それでも優しくしてくれた。


それだけで、十分だった。


私は領主と目を合わせる。


そして頷き、ゆっくりと首を振った。


――気持ちは受け取るけれど、謝罪はいらない。


私の信用を得るために必要なことだったのだから。


すべては伝わらなくてもいい。

少しでも伝われば、それでいい。


領主はしばらく私を見つめていたが、やがて静かに頷いた。


「……あなたの寛大な心に感謝する」


口元をわずかに緩める。


それを見て、私も少し肩の力を抜いた。


どうやら、伝わったらしい。


「では、改めて宣言させてもらおう」


領主は背筋を正した。


「私、レオンハルト・オルデンヴァルトは――」


「恩猫様を、オルデンヴァルト家の大切な客人として、領地へ迎え入れることを正式に認める」


正式に。


私はこの領地に留まることを認められた。


……ここに、いていいんだ。


信用に足る存在だと、認めてもらえた。


思わず視界が滲む。


だが、その感情は次の言葉で吹き飛んだ。


「それに伴い、以下の者を客人の生活補佐および護衛として任命する」


「テオドール・オルデンヴァルト」


「アンネリーゼ・オルデンヴァルト」


「第1騎士団団長、ローガン・アイゼンヴァルト」


「同じく副団長、カイ・ルーベルト」


「そして第1騎士団団員四名」


「私が信頼を置く者達だ。実力も申し分ない」


領主は穏やかに言う。


「安心してこの領地で過ごしてほしい」


「皆、よろしく頼む」


「「「「承りました」」」」


一斉に頭が下げられる。


……思わぬ展開だった。


まさかここまで大事になるとは思っていない。


先ほどまでの感動はどこへやら。

内心では完全に慌てていた。


どうやらそれが顔に出ていたらしい。


テオドールがくすりと笑った。


「これから、よろしくお願いいたします。恩猫様」


テオドールの言葉に続き、


アンネリーゼ、ローガン団長、カイ副団長も私へ礼をする。


彼らの背後の窓から、朝の日差しが差し込んでいた。


外には、少し雲はあるものの――


澄み渡った青空が広がっていた。


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