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盾にされた私、異世界ではただの猫です  作者: 蛇目菊 欲狐
第1章
23/31

21-恩猫の力、溢れる魔法石

少年の回復に、ギルド内は大きく沸き上がっていた。


だが私は、先ほど受付嬢が口にしていた言葉を思い返していた。


『近日、魔物が頻出するようになったこともあり、光魔法の魔法石は入用で……貸し出せる在庫がないのです。光魔法の使い手も、今は皆出払っています』


私が一人で森にいた間、魔物に遭遇することはなかった。

しかし痕跡は、至る所にあった。


それも浅瀬から奥地まで、関係なく。


もし、あれが通常ではない――イレギュラーだったのだとしたら。


魔物たちは、間違いなく。


――街に向かって来ようとしている。


目的は分からない。


森の浅瀬と整地された平原の境目。

そこまで続く足跡を、私は何度も見かけていた。


まるで、何かを待っているかのように。


もし今、魔物たちがこの街を襲えば――

資源が足りず、多くの命が失われるかもしれない。


……看過できなかった。


猫だから関係ない、とは思えなかった。


もう、あの時。

彼らについて来た時点で、人との関わりを完全に断ち切ることなど出来ていなかったのだから。


私はテオドールに近づき、目を合わせる。


「……恩猫様? いかがされましたか?」


首を傾げるテオドール。

後ろに控えていた副団長も、不思議そうな顔をしていた。


少年は助かった。


だが、この街の未来が危ういのなら意味がない。


私は空間を歪ませ、その中に尻尾を突っ込む。

そして、ある物を巻き取って取り出した。


「!! 今のは一体……」


驚くテオドールの前に、それを置く。


副団長が拾い上げ、目を見開いた。


「これは……光の魔法石ですか!?」


さらに驚きの声が上がる。


「しかも魔力量も申し分ない……。こんなものを一体どこで……」


そう言って私を見る二人の前に、今度は魔力のこもっていない水晶を出す。


それを床に置き、前足で押さえた。


そして魔力を流し込む。


すると、水晶はゆっくりと乳白色の光の魔法石へと変化していった。


「まさか……あなたがこれを作ったと言うのですか……!?」


副団長が、再び目を見開く。


そう。

これは私が森にいる間に作った魔法石だ。


水晶を見つけた時、鑑定で特性を理解し、研究がてら魔法石の作り方を調べていたのだ。


「……まさか、この魔法石を私たち――いえ、この領地にくださると言うのですか?」


テオドールの言葉に、私は頷き――そして首を振る。


釈然としない様子で、さらに首を傾げる二人。


私は再び空間を開く。


そして、袋を逆さにするように中身を落とした。


ガラガラガラッ!


音を立てて、光の魔法石が床に落ちていく。


その音に、先ほどまで盛り上がっていたギルド内が一斉に静まり返った。


「ど、どこからそんな量が……」


副団長が呆然と呟く。


「……これ、全て光の魔法石ですか」


テオドールがゆっくりと言う。


「……これ全てを領地へ、という事でしょうか」


私は頷いた。


これらは、転生時に与えられた能力――『収納』によって持ち運んでいた。


鑑定によると、


『異空間に生物以外の物を収納できる。収納中は時間が停止する。容量は魔力量によって増減する』


という能力らしい。


その便利な機能を使い、必要そうな物や作りすぎた物を全てしまっておいたのだ。


……あれ?


二人が困惑している。


もしかして、少ない?


他の属性魔法石も必要だったのだろうか。


それとも薬草や鉱石もあった方がいいのだろうか。


そう思い、私は再び収納を開く。


そして他の魔法石や資源を、次々と取り出していった。


「え、え?」


テオドールの声が裏返る。


「恩猫様!? 量が――」


「まだ出てくる……」


副団長も絶句していた。


「待ってください! 待ってください!」


テオドールの制止で、私はようやく手を止めた。


気づけば、ギルドのフロアの三分の一が資源で埋まっていた。


その後。


どうやらあの量は「やり過ぎ」だったらしい。


冒険者ギルドにいくつか買い取ってもらい、

その後は商人ギルドや協会を巡り、物資を回収してもらうことになった。


結果として、売りに行くついでに領地を案内してもらえることになったのだが。


私の軽率な行動で、テオドールと副団長に大量の物資を売りさばく作業をさせてしまった。


……猛省した。


ーーー

〈テオドール視点〉


恩猫様が持っていた魔法石や薬草、鉱石は、どれも極めて品質が高いものだった。


次々と高値で買い取られていく。


ただの領地案内のはずだったのに、目の前には金貨が山のように積まれていく。


……不思議な光景だった。


――父上に、どう説明すればいいのでしょう。


あの光景を、上手く言葉に出来る自信がない。


あんな奇跡のような出来事を、ぽんぽんと見ていいはずがない。


……私は、本当に。


神でも連れ帰ってきてしまったのでしょうか。


何度も容量を超える経験をし、私は思わず途方に暮れてしまった。

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