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盾にされた私、異世界ではただの猫です  作者: 蛇目菊 欲狐
第1章
20/31

18-訓練場で示された力

何か、まずかっただろうか。


ブラムの反応を見て、私はそっと剣を地面に置き、小さく身を屈めた。


使った魔法自体は、そこまで特別なものではないはずだ。

けれど、今の使い方が――魔物に通じる危うさとして受け取られてしまったのかもしれない。


そんな考えが頭の中をぐるぐる回る。


その時だった。


ぐいっと脇の下から身体を持ち上げられる。


「お前、すっげぇなぁ!?」


顔を上げると、そこには満面の笑みのブラムがいた。


さっきまでの真剣な表情はどこへ行ったのか。


あまりの変わりように、思わず目を瞬かせてしまう。


「普通よぉ!使える属性ってのは一つ、多くても二つなんだ!」


興奮した様子でブラムは続ける。


「それをこの猫はどうだ!光、風、水、それに土!」


片手に私を持ち替えながら、もう片手で指を折りながら数えていく。


「しかも適性が強くねぇと扱えねぇ氷と植物まで生み出しやがった!」


訓練場の地面を指差す。


「コントロールも抜群にいい。とんだ天才……いや、天才超えたバケモンだぜ、こいつは!」


熱く語るブラムに、私はただ目を白黒させるしかなかった。


そんなにすごいことだったんだろうか。


派手な魔法は使っていない。

ただ、助けるためにコントロールできる範囲の魔法を使っただけだ。


それなのに、ここまで評価されるなんて……。


「ブラム。興奮しすぎだ。」


騎士団長がブラムから私を引き剥がし、低い声で言う。


「恩猫様が怯えているだろう。それと……失礼な物言いは控えろ。」


「いやでも団長、あれ見て興奮するなってのは無理だろ!」


ブラムは頭をかきながら笑う。


「まぁでも、さっきの言い方は悪かった。そこは謝る。」


そう言ってから、少し真面目な顔になる。


「それにな。」


私を見る。


「あの状況で、隙だらけになってた俺らより先に、あの嬢ちゃんを助けに行くやつが魔物なわけねぇよな。」


短く息を吐く。


「疑ってすまんかった。」


そして――


すぐに顔を輝かせた。


「だから頼む!もっかいさっきの見せてくれ!」


身を乗り出す。


「あんな無駄のねぇ、精密な魔法の使い方、初めて見たんだよ!俺は豪快なやり方しかできねぇからさ!」


ぐっと拳を握る。


「な!頼むよ、もう一回!」


騎士団長に抱き上げられながら話を聞いていた私は、未だ興奮冷めやらぬブラムの様子に呆然としてしまう。


……とりあえず、疑いは晴れたのかな。


騎士団長を見ると、ブラムのあまりの変わり身に苦笑していた。


その時だった。


「……恩猫様!」


声がかかる。


「助けていただき、ありがとうございました!」


振り向くと、先ほどの使用人の女性が駆け寄ってきていた。


剣を咥えた時に無事なのは確認していたが、改めて怪我がないことを確かめて、ほっと胸を撫で下ろす。


……良かった。


怪我、してない。


ちゃんと守れた。


何も出来ないと見て見ぬふりをして生きていた、あの頃。


今は――自分に出来ることをするために、動けるようになっている気がする。


「……あの、第1騎士団長殿。」


別の声がかかる。


振り返ると、騎士たちがぞろぞろと集まってきていた。


少しだけ身をすくめる。


「今の……その猫がやったんですよね?」


「……あぁ。恩猫様のお力だ。」


団長が静かに答える。


その瞬間。


「すげぇ!?あんなの初めて見たぞ!」


「まじかよ!人間でもあんなのできるの見たことねぇぞ!」


「てか魔法って、あんな使い方できんのか?」


「普通、あんな使い方しねぇよな!」


騎士たちが一斉に盛り上がり始めた。


――その後。


結局もう一度魔法を見せることになり。


なぜか騎士たちに魔法の指導をすることになり。


魔法の流し方や、力の調整の仕方をゆっくり見せながら説明して――


気が付けば、訓練場はちょっとした講習会のようになっていた。


……色々と、濃い一日だった。


明日は領地の案内。


街にも出るらしい。


どんな一日になるんだろうか。




《閉ざされた扉の内側》


???視点


「……何?」


女は、小さく呟いた。


先ほど訓練場で起きた出来事を、頭の中で繰り返す。


使用人に当たるはずだった模擬刀。


それを止めた――一匹の猫。


「……あの猫……」


複数の魔法。


しかも――光魔法。


昨日、団長たちを助けた猫が客人として招かれていることは聞いていた。


だが。


振り返る。


そこには、ベッドに横たわる人物。


細く、窶れた、儚い姿。


ポーションでも。


光魔法でも。


治すことができない、原因不明の病。


女は静かに目を細めた。


「……もしかしたら。」


小さく呟く。


「――あの猫こそ。」


その視線は、ベッドの人物へ向けられる。


「この方の、救いになるかもしれない。」

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