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盾にされた私、異世界ではただの猫です  作者: 蛇目菊 欲狐
第1章
19/31

17-恩猫様、駆ける

張り詰めた空気の中。


「ブラムさん、魔物に知能はありません。それに、あんな神秘的な癒しの力を使えるはずもありません……」


アンネリーゼが震える声で言う。


「それに……私達は助けて頂いたんですよ……?」


その表情は、今にも泣き出しそうだった。


私が不甲斐ないせいで、そんな顔をさせてしまっている。


申し訳なくなり、私は騎士団長の腕からそっと飛び降りた。


そしてアンネリーゼの足元にすり寄る。


「ごめんね」と言葉にできない代わりに、必死に身体を寄せて慰める。


きっと騎士団長がずっと私を抱えていたのも、私がアンネリーゼに危害を加えないよう警戒していたからだろう。


アンネリーゼも、それを理解している。


そして最後にこの訓練場へ私を連れてきたのも――


きっと、試すためだ。


どうすれば、彼らに信頼してもらえるのだろう。


何かをやりすぎれば、逆に疑われるかもしれない。


そもそも私は、そんな大したことをしていないのに。


どうしたらいいんだろう。


そんな思考に飲み込まれかけた、その時だった。


キィン――!


鋭い金属音が、訓練場に響いた。


「危ない!!」


大きな叫び声。


反射的にそちらを見る。


打ち合いをしていた騎士の手から、模擬刀が弾き飛ばされていた。


回転しながら、一直線に飛んでいく。


その先には――


一人の女性。


先ほど、私に「撫でさせてください」と頭を下げてきた、あの使用人の女性だった。


彼女は恐怖で身体を固め、動けずにいる。


誰もが、最悪の事態を想像した。


……まだ、助けられる。


さっきまでの迷いは、一瞬で消えていた。


今は、そんなことを考えている場合じゃない。


さっきまで嬉しそうに私を撫でてくれていた彼女を、助けることが先だ。


そう思った瞬間、思考がすっと澄んだ。


私は、今できることを使う。


彼女を助けるために。


まず――守る。


空気が震え、淡い光が広がる。


女性の前に、薄い光の壁が現れた。


だが、まだ足りない。


速く。


風を纏う。


身体が、ふっと軽くなる。


……地面より、空の方が速い。


私は跳んだ。


水魔法で空気中に氷の足場を生み出す。


風魔法でそれを固定。


空に作られた道を、駆け上がる。


女性へ向かって飛んでいた模擬刀は、光の壁にぶつかり弾かれた。


宙へと跳ね上がる刃。


その瞬間、私は空を蹴った。


回転する模擬刀へと飛び込み――


それを咥える。


勢いを殺すように、土魔法を発動。


地面から蔦状の植物が伸び、私の身体と模擬刀を優しく受け止めた。


ゆっくりと、地面へ降りる。


……良かった。


間に合った。


胸の奥から安堵が溢れる。


私は模擬刀を咥えたまま、団長たちの方へ駆け寄った。


そして顔を上げる。


そこにいた全員が――


言葉を失っていた。


騎士団長も。


アンネリーゼも。


ブラムも。


訓練していた騎士たちまでもが。


ただ、驚愕した目で私を見つめている。


静まり返った訓練場で、ぽつりと声が落ちた。


「……おいおい。」


ブラムだった。


深紅の目を細め、呟く。


「今の……全部。」


ゆっくりと私を見る。


「この猫がやったのか?」

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