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盾にされた私、異世界ではただの猫です  作者: 蛇目菊 欲狐
第1章
18/30

16-疑念と一振りの剣

汗の匂い。

砂が舞い、鋭い金属音が訓練場に響き渡る。


屋敷の裏に、こんな広大な訓練施設があったなんて。


歯を潰した模擬刀で打ち合う者。

奥では体術の手合わせをしている者達の姿もある。

さらにその周囲では、基礎体力を鍛えるためのトレーニングをしている騎士達がいた。


表の厳かで美しい屋敷とは裏腹に、ここには騎士達の野性味あふれる迫力ある光景が広がっていた。


皆、それぞれに己を鍛えているのだろう。


模擬刀の打ち合いを観戦している騎士達も、ただ見ているわけではない。

戦術を考えたり、戦闘中の問題点を指摘したりしているようだった。


「こちらが訓練場になります。今日は第5部隊が主に訓練をしていますね。第1部隊のメンバーも、指南役として来ているはずですが……」


騎士団長が説明してくれる。


その時だった。


「おっ!団長!お疲れ様だなぁ!」


聞き覚えのある、少ししゃがれた元気な声。


「手に抱えてんのは……恩猫様じゃねぇか!この間はありがとうよ!」


大きく温かい手が、私の頭を豪快にわしゃわしゃと撫でる。


目が回りそうになりかけた瞬間、その手を騎士団長が軽く払った。


「やめるんだ。恩猫様が目を回されているだろう。」


「おっと、いかんいかん。すまんな恩猫様。」


「ブラム……お前は力が強すぎる。もう少し手加減を覚えろ。」


「いやぁ、すまんすまん。」


豪快に笑う男――ブラム。


深紅の瞳が、優しげに細められている。


対して騎士団長は、深いブラウンの瞳でこちらを心配そうに見つめていた。


……二人とも、きっと良い人なんだろうな。


ふわふわと揺れる頭で、そんなことをぼんやり考える。


「ブラムさん!基礎トレと組手、終わりました!」


若い騎士が駆け寄り、ブラムに声をかけた。


「お、それじゃ一旦休憩にするか。」


「分かりました!」


元気よく返事をした青年は、そこでようやくこちらに気付く。


「……っと、第1騎士団長殿にアンネリーゼ様!いらっしゃってたんですね!」


そして、不思議そうな顔で私を見る。


「……あの、団長殿のお手元に抱えられているその方は?」


それも当然だろう。


騎士の訓練場に、猫が一匹。

どう考えても場違いだ。


「こちらの方は恩猫様だ。『縫目の森』奥地で危険な状態にあった私を助けてくださった。」


「へぇ!?」


青年の目が大きく見開かれる。


「この辺境伯騎士団で随一の実力を持つ第1騎士団長が、助けてもらったんですか!?」


やっぱり、すごい人だったらしい。


そんな人に抱えられていることが、なんだか申し訳なく思えてくる。


「そうだぜぇ?」


ブラムが豪快に笑いながら言う。


「団長だって不覚を取ることはあるんだ。だからお前さんも身を引き締めて、もっともっと訓練しなきゃな!」


そして大きく手を叩く。


「ほら、十五分後には打ち合いだぞ!休憩行ってこい!」


「えぇー!」


青年は不満そうな声を上げながらも、素直に戻っていった。


その様子を見て、ブラムは楽しそうに笑う。


和やかな空気に、私の心も少し落ち着いていった。


「いやぁ、最近の若いのは元気が良くていいねぇ。」


ブラムはそう言ってから、団長を見た。


「んで、隊長様。今は恩猫様の屋敷案内ってところだろ?」


少しだけ声の調子が変わる。


「もし時間があるならよぉ……恩猫様のお力。もう一度、確認させてもらえねぇか?」


「……ブラム。」


騎士団長の声が低くなる。


「恩猫様に対して無礼だ。」


「実力を疑ってるわけじゃねぇんだがな。」


ブラムは真剣な目で続ける。


「本当にその猫が“魔物”じゃねぇって確証は、まだ無いだろ?」


訓練場の空気が、少しだけ張り詰めた。


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