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盾にされた私、異世界ではただの猫です  作者: 蛇目菊 欲狐
第1章
17/29

15-屋敷の案内、閉ざされた扉

「…先程は、うちの使用人たちが無礼を働き、申し訳ございません。」


廊下を歩きながら、アンネリーゼが苦笑混じりに言う。


気疲れでぐったりしている私を、今は騎士団長が腕に抱えてくれている。そのまま屋敷の案内が続いていた。


遡ること、数十分前。


アンネリーゼが準備をするとのことで、私は屋敷の玄関で待たせてもらっていた。


すると、遠くの方から一人の若いメイドがこちらへ駆け寄ってくる。


「恩猫様。無礼を承知で申し上げます!」


勢いよく頭を下げたあと、顔を上げると真剣な瞳で言った。


「あなたを撫でさせてください!お願いします!」


思わず目を丸くしてしまった。


だが、あまりにも真剣な様子が少し可笑しくて、まぁいいかと小さく頷いたのが事の発端だった。


最初はその子一人だった。


だが、いつの間にか一人、二人と増えていき、気付けば十人以上の使用人たちに囲まれ、撫でられていた。


そこでようやく現れたアンネリーゼと騎士団長に救出され、今に至る。


……皆、癒やしが足りないのだろうか。


こんな私で良ければ撫でてもらうのは構わない。


けれど、一度にもみくちゃにされるのは、さすがに困るなぁ……。


そんなことをぼんやり考えながら案内を受けていると、ふと鼻に独特の匂いが届いた。


青臭い薬草の香り。


それに混じる、アルコールの匂い。


意識が一気にそこへ向く。


……医務室?


いや、屋敷の医務室はさっき紹介された。ここは階層が違う。


だとすると、この匂いは何の部屋なんだろう。


その扉の前で、アンネリーゼがぴたりと足を止めた。


「……こちらは、母の部屋になります。」


少しだけ声が落ちる。


「現在、少し体調が悪く、部屋で療養しております。また体調の良い時に、ご紹介させてください。」


容態は、あまり良くないのかもしれない。


「次、ご案内しますね!」


無理に明るくした声と笑顔に、胸が少し痛んだ。


通り過ぎるその瞬間、私はもう一度その匂いを嗅ぐ。


……あれ?


この匂いには、覚えがあった。


だが、それがこんな場所でしているのは、本来あり得ない。


確証が持てない。


……ご挨拶の時に、確認しよう。


そして、もし何かできることがあるのなら、その時は——


…その時は…?


自分の思考に、ふと引っかかる。


私は、今何を考えた?


何ができるかも分からないのに。


思考がぐるぐると巡る。


「恩猫様、大丈夫ですか?」


アンネリーゼが心配そうに覗き込んできた。


私は慌てて小さく頷く。


「そうですか?それならいいのですが……」


優しい子だな、と思う。


母親のことが心配だろうに、それでも私を気遣ってくれる。


「屋敷内の案内はここまでです。次は騎士の訓練場に向かいましょう!」


アンネリーゼはいつもの明るい声に戻って言った。


「騎士団長、よろしくお願いします!」


「承りました。それでは参りましょうか。」


次の案内は、騎士団長が担当らしい。


……悩んでいても仕方ない。


今は案内に集中しよう。


私は思考を切り替え、これから向かう訓練場へ意識を向けることにした。

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