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盾にされた私、異世界ではただの猫です  作者: 蛇目菊 欲狐
第0章
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00-転移する

初作品でございます。

温かい目で見てやってください。

私は、出来損ないらしい。


兄と姉は優秀で、両親はそれを誇りにしている。

会食の席でも、社内の会議でも、話題に上がるのはいつも二人だ。


「どうして貴女はあの子達のように出来ないの?」


責める声ではない。

ただの事実確認のような、淡々とした響き。


私は無能で、要領が悪くて、出来損ない。


だから努力するしかない。


誰もいない早朝に出社し、

誰もいなくなった深夜に帰る。


それでも足りなかった。


そんな日々が続く中、今日は身体が重かった。

熱があるのだと思う。


出来損ないに体調不良は許されない。

けれど、体は言うことを聞かない。


仕方なく早退の申請を出し、ふらつく足で会社の玄関へ向かった。


「おい、出来損ない。何をしている?」


兄の声。


「まさか早退? 無能のくせに?」


姉が笑う。


「申し訳ありません。体調不良で……」


「たかが風邪だろう」


「仕事も放り出して、オフィスに菌を撒き散らして、これだから出来損ないは…」


言い返せない。

すべて事実なのだから。


戻らなければ。

個室で作業すれば迷惑はかからない。


そう引き返そうとした時、玄関の自動扉が開いた。


見覚えのある顔。

先日、兄達が切り捨てた元社員。


目が、濁っていた。


「ああ、運がいい」


ナイフが光る。


狙いは兄だった。


逃げようとした瞬間、腕を引かれる。


兄が、私を盾にした。


鈍い衝撃。


熱が一点に集まり、すぐに冷えていく。


痛みで力が抜ける。

床が近い。


「こんな時くらいは役に立ったな」


遠くで声がした。


――ああ。


役に立てたのか。


それなら、良かった。


次の生があるなら。


誰にも迷惑をかけない生き物がいい。


そうだ。


猫になりたい。



暗闇の中で、声がした。


「聞こえていますか?」


夢だと思った。


「単刀直入に言います。貴女は私の世界へ転移していただきます」


ああ、やっぱり死んだのだ。


「魂が消える前に移します。時間がないので説明は後ほど」


不思議と怖くはない。


「……随分きれいな魂ね。どうしてこんなに擦り減っているのかしら」


誰かが呟く。


「能力は高いし、加護も少し足しておきましょう」


何かを与えられているらしい。


「欲しいものは?」


少しだけ考える。


「猫に、なりたいです」


「猫?」


「人間だと、迷惑をかけるので」


小さな笑い声。


「……そう。なら『変身』をあげましょう」


「分からないことは『鑑定』しなさい」


「最後に、行きたい場所は?」


静かな場所がいい。


誰もいないところ。


「森が、いいです」


「わかりました。行ってらっしゃい」


その声と同時に、意識が落ちた。


楽しんで頂けたら、感想などお待ちしてます。

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