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三十七話 すれ違う手 1

◇◇◇ 劉永(りゅうえい) ◇◇◇


 手綱(たづな)を握る拳に青筋が浮かび上がり、血が滲むほど固く握りしめられていた。視界の端で、玉蓮の姿が揺れる。紫紺(しこん)色の外套(がいとう)を纏い、あの男の隣を当然のように馬で進む、その姿が。


 遠くから聞こえてくる、赫燕(かくえん)哄笑(こうしょう)と、子睿の皮肉めいた声。それらが、毒のように耳から流れ込んでくる。


 身体の中で何かが沸騰しそうなほどに熱い。戦場でもないのに、目の前が赤く染まっていく。たおやかな白菊が、血に(まみ)れた剣で無残に切り裂かれる——そんな、見たこともない凄惨な瞬間が脳裏をよぎって消えない。


 息が浅く、早くなる。心の臓の音が鼓膜を直接叩く。



 ——ヒン。



 刹那、馬が微かな鳴き声をあげ、主の殺気を嫌がるように首をくねらせた。


劉永(りゅうえい)様、お気を確かに……」


 傍らに控える温泰(おんたい)の声に、込み上げるどす黒いものを押し殺すように、一度だけ強く目を閉じる。


「……大丈夫だ」


 再び開いた瞳に映るのは、もはや遠い世界の住人のような、彼女の背中だけだった。

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