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三十四話 揺れ動く熱 3

◇◇◇ 朱飛(しゅひ) ◇◇◇


 ふらりと(かし)いだ彼女の体を、間一髪で受け止める。鼻先をかすめる甘い伽羅(きゃら)の香りが胸を(えぐ)る。だが、朱飛はその残酷な匂いごと、彼女を抱き止めた。


 玉蓮は、震える声で言葉を紡ぐ。


「……熱いのです」


 朱飛の衣を握りしめる、白く小さな手が震えている。


「あの人の熱が……身体の奥まで……消えないっ……」


 言葉は嗚咽(おえつ)に溶け、彼女は救いを求めるように朱飛の胸に(すが)り付く。


「……っ」


 一瞬、玉蓮を抱き潰すほどの強い力が腕にこもった。指の関節が白く浮き出るほどの力。だが、次の瞬間にはふっと緩み、壊れ物を扱うような優しさに戻る。何も言わず、その震える背中を、不器用な手つきで撫でた。


 腕の中で、玉蓮の体が小刻みに震え続けている。まるで、今にも消え入りそうな小さな炎のように。


 朱飛は、今にも崩れ落ちそうな玉蓮を抱きかかえた。小さな体の温もり。それが、これまで武骨な生き方しか知らなかった己の胸の奥に、じんわりと染み込んでいく。まるで、凍てついた大地に、初めて陽の光が差したかのような、そんな感覚。


 ゆっくりと寝台に横たえ、頭を撫でてやると、やがて、彼女の呼吸が穏やかになり、小さな寝息が聞こえ始める。


 朱飛は、その華奢な体に布と毛皮をかけた。涙の跡が残る頬を、指の背でそっと拭う。だが、その指先は、決して届かぬものに触れるかのように、微かに震えている。


 吸い寄せられるように、顔を近づける。彼女の寝息が頬にかかる距離。あと少しで、その柔らかな額に触れられる。だが——月明かりに照らされた首筋の、赤い痕が朱飛の視界を刺した。


「……ッ」


 弾かれたように身を引く。伸ばしかけた手は、行き場を失い、空中で強く握りしめられた。

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