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三十四話 揺れ動く熱 2


 玉蓮はそっと天幕を後にした。身体に残る赫燕の熱を抱えたまま、一人で野営地を歩く。


 すれ違う兵士たちが彼女を見て、何かを喉に詰まらせたかのように、はっと息を呑み、足を止める。彼らの視線が、首筋や襟元に吸い寄せられ——次の瞬間、弾かれたように()らされた。まるで、触れてはいけない「禁忌」を見るような目。


 己から立ち上る濃厚な伽羅(きゃら)の香りが、彼らを怯えさせているのだと気づき、いたたまれずに顔を伏せた。


 そして、足早に歩を進めて向かうのは、朱飛の天幕。入り口の前で、掠れた声で彼の名を呼べば、すぐに幕が勢いよく開けられる。


「玉蓮? どうした」


 朱飛の視線が、顔から首筋へと滑り落ちる。そこで、彼の目が大きく見開かれた。じっと一点を凝視した後、苦しげに眉根を寄せ、ふいっと顔を背ける。


「……お頭は?」


 絞り出すような朱飛の声。


「戻っていい、と……」


 その言葉を最後に、玉蓮の足から力が抜けた。張り詰めていた何かが、ぷつりと音を立てて切れる。

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