二十一話 見透かされた心 2
そして、玉蓮は眉間に深い皺を刻むと、再度、力任せに石を投げた。石は、栗色の髪の毛に吸い込まれていく。
「玉蓮! おまえっ、この」
迅が叫ぶ。
見かねたように朱飛が立ち上がり、表情を変えることなく歩み寄ってくると、玉蓮が投げようとした次の石を寸前で掴み取った。石が朱飛の大きな手のひらに、パシィッ、と乾いた音を立てて収まった。
「あっ!」
玉蓮は、はっとして手を引っ込める。朱飛は玉蓮の頭に、ごつんと自身の指をぶつけた。
「うっ……」
そして、そのまま何の躊躇もなく玉蓮の隣に腰を下ろした。玉蓮は、朱飛の指が当たった額を撫でる。
「迅に八つ当たりをするな。何を怒っている」
闇に溶け込むような朱飛の静かな声。玉蓮は顔を背けて、頬をさらに膨らませ、地面の小石を弄ぶ。
何を怒っているのか、何がそんなに苛立たしいのか、自分でもわからない。でも、心が落ち着かなくて、忙しなくて、そのままにはどうしてもできない。
(あの男が、まるで王のように振る舞うからだ。だから——)
血に塗れた敵将の顔も、込み上げてきた酸っぱい匂いも、響き渡る悲鳴も、全てが玉蓮にとっては、あまりにも大きなことなのに。あの男は少しも意に介していない。
「……なんでもありません」
「……そうか。まだ、子供だったな」
「子供ではありません。十六になりました」
「十分子供だろ」
「違います!」
ふ、と朱飛が笑みをこぼす。朱飛の笑みから逃れるように、玉蓮は膝を抱える腕にぐっと力を込めた。耳の縁が、じんと熱くなる。地面の小石の数を数えるふりをして、彼の視線から必死に顔を隠した。隣にいる朱飛からは、微かに土と鉄の、落ち着く匂いがした。




