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八十八話 届かぬ慟哭(周礼)

◇◇◇ 周礼(しゅうれい) ◇◇◇


 周礼(しゅうれい)は、空の玉座を横目で一瞥(いちべつ)すると、焦茶の衣をはためかせて(きびす)を返した。謁見の間を離れ、回廊をゆったりと進む。周礼の耳朶(じだ)に焼き付いている、大臣どもの怯えと崔瑾の咆哮(ほうこう)。それは、予想を遥かに超えるものだった。


「……まさか、あれほどとは。あのお方に報告せねばなるまい」


 独りごちながら、左手に持った扇で口元を隠し、唇の端を釣り上げる。


(若造めが。私に楯突くからこうなるのだ)


 崔瑾の若さと、それ故の未熟さ。周礼は、自身の描く筋書き通りに物事が運ぶことに、笑いを止めることができなかった。


 やがて、回廊の闇に紛れた人影を見つけ、すっと歩み寄る。


「……どうした」


 影の中に控えていた配下が、小さく頭を下げた。


掖庭(えきてい)より、西苑(せいえん)鵠池(くげいけ)の客殿を払い清めよとのことです。今宵より逗留(とうりゅう)支度、いつも通り伽羅(きゃら)を焚け、と」


 感情の気配を欠いた平板な響きが耳に届く。周礼は、眉間に皺を寄せつつも「承知した」と一言返した。配下の報告は続く。


「もう一つ。王より……『華を御前へ』と」


「華を……?」


 周礼は、その報告を聞き、扇で隠した口元をさらに歪め、視線を頭上に投げる。


「ふん、大王も懲りぬお方よ……あの方は?」


「進めよ、と」


 配下の返答に、満足げに頷く。周礼は、背後で糸を引く人間の顔を思い浮かべ、扇で隠した口元で、さらに深く、口角を吊り上げた。

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