エピローグ:結婚式当日 -「誓いの陽光」
朝、目覚めると、窓の外からは澄んだ青空と柔らかな日差しが差し込んでいた。今日は、春斗と陽葵の人生で最も特別な日。心地よい緊張感と、胸の高鳴りで、春斗は思わず深呼吸をした。
リビングに降りると、母が用意してくれた朝食がテーブルに並んでいた。トースト、スクランブルエッグ、フルーツ、そして小さな花が添えられた皿。だが、春斗の目は朝食に向かず、今日一日で交わす誓いのことばかりが頭を巡る。
「春斗、ちょっと!」
そこへ、陽葵の声が聞こえた。花嫁衣装の着付けを終え、ヘアメイクの最終確認をしてもらったばかりの彼女が、満面の笑みで立っている。光を浴びたその白いドレスは、まるで空に浮かぶ雲のように軽やかで、彼女の笑顔は朝日よりも眩しかった。
「陽葵……本当にきれいだよ」
思わず口から出た言葉に、彼女は少し照れくさそうに笑いながら、手を伸ばして春斗の手を握った。
「ありがとう、春斗。今日、ずっと楽しみにしてたんだ」
陽葵の手は温かく、春斗の胸にしっかりと触れてくる。その感触だけで、心臓の鼓動が早まった。
挙式会場に到着すると、すでに花々やキャンドルで美しく飾られた空間が二人を迎えていた。柔らかな光に包まれたチャペルの中、ゲストたちの笑顔が緊張と期待を和らげる。春斗は深呼吸をし、隣に立つ陽葵をそっと抱き寄せた。
「大丈夫、春斗。私たちならできるよ」
陽葵の声に励まされ、春斗は安心して頷く。二人は互いの手をしっかりと握り、歩みを進めた。
祭壇の前で牧師の声が響く。
「本日ここに、お二人を結びつける神聖な儀式を執り行います」
春斗は陽葵の瞳を見つめ、心の中で誓う。
(陽葵を、これからもずっと守り続ける……一緒に笑い、一緒に泣き、どんな時も支え合うんだ)
指輪の交換では、二人の指先が触れ合うたびに小さな火花のような幸福感が走る。微笑み合い、少し照れながらも互いの存在を全身で感じる瞬間は、どんな言葉よりも強く心に響いた。
「春斗、私、ずっとあなたの隣にいたい」
陽葵の声は静かで、でも強く、春斗の胸に深く刻まれる。
「陽葵、俺もずっと……君と一緒だ」
春斗も真剣な眼差しで答える。ゲストたちの祝福の拍手の中、二人は初めての夫婦として、未来への第一歩を踏み出した。
披露宴では、緊張が徐々にほぐれ、二人は笑顔でゲストと交流する。友人たちとの写真撮影、親族への挨拶、料理を楽しむ姿。すべてが祝福に満ちた温かい時間だった。
「ねえ、春斗」
陽葵が小声で囁く。
「ん?」
「ここだけの話……私、緊張してたんだよ」
「ふふ、でも、今は笑ってるじゃないか」
春斗は陽葵の手をそっと握り、肩にそっと頭を寄せた。お互いの体温を感じながら、二人だけの静かな時間を楽しむ。披露宴の喧騒の中でも、二人だけの世界が存在していた。
ケーキカットの時間になると、二人は顔を寄せ合い、笑いながらクリームを少しずつ付け合う。頬に触れる甘いクリームに、思わず笑い声が漏れる。陽葵の目がキラキラと輝き、春斗はその可愛らしさに胸を打たれる。
「春斗、あーんして」
「はいはい、あーん」
互いに食べさせ合う小さな仕草も、この日だからこそ特別な思い出になる。
挙式と披露宴を終え、二人はホテルのスイートルームへと向かう。窓から見える夜景は、無数の光で彩られ、まるで二人の未来を祝福しているかのようだ。ドアを閉めると、外の喧騒は遠くなり、部屋には静かな二人だけの世界が広がった。
「ねえ、春斗……やっと、夫婦になったね」
陽葵が肩に頭をもたれかけさせ、目を細める。
「そうだな……でも、まだ信じられないくらい、夢みたいだ」
春斗も微笑み、彼女をそっと抱きしめる。
ベッドに入る前、二人はお互いの体を洗い合い、触れ合う。お湯の温もり、肌と肌の感触、髪から漂う香り。すべてが愛おしく、胸が熱くなる瞬間だった。
「陽葵……これからもずっと、こんな風に一緒にいられるんだな」
「うん、春斗。ずっと一緒だよ」
二人は夜景を背に、静かに抱き合いながら眠りにつく。幸せの重みと温かさに包まれ、人生で最も特別な一日が静かに幕を閉じた。




