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第12話「テロ」

マリアンジェラはテロリストの指示に従い、指定された席に座る。丸テーブルを挟んでリーダーと思われる人物と話をしている。


一方、ジュリアは他の客達と共に一箇所に集められた。マリアンジェラが手荒な扱いを受けていないようで、ジュリアは胸を撫で下ろす。


そして、静かに周囲を見回す。



近くにいる老夫婦は無言で手を握り合っている。


少し離れたところでは、男性が女性に小声で何度も「大丈夫だ、きっと助けが来る」と囁いている。しかし、彼女の肩にかける彼の手はわずかに震えている。


他には、(うつ)ろな目で床を見つめるスーツ姿の男性やハンカチを握りしめて涙を流し続けている若い女性。



王都の治安は良く、過去にテロがあったという話は聞いたことがない。客の誰一人、テロに遭遇した場合など想定していなかった。彼らが不安にかられて意気消沈するのは無理もないことだった。



ジュリアはテロリスト達を観察する。


全員、フルフェイスのヘルメットで顔を隠している。


服の生地は頑丈で、耐摩耗性の素材。ジャケットの前面には多くのポケットが配置されている。


肩や肘の部分には強化パッドが内蔵され、伏せた姿勢や衝撃の多い状況でも保護できるよう工夫されている。


ブーツのソールは厚く、足首までしっかりと保護されるデザインになっている。


軍隊のような格好だが、服装や武器からはテロリストの正体は特定できない。



次は現状を分析する。


ローズローズ王国の警察、軍の目を掻い潜ってテロを成功させた手腕は相当なもの。


だが、その割に人質の見張りが甘く、銃の持ち方も甘い。


作戦を立てた参謀は優秀だが、作戦の実行部隊には加わらなかった、といったところか。


王妃と王女が巻き込まれた事件に警察や軍が気付かないはずはない。少しすれば制圧部隊が到着し、いずれ突入してくるだろう。


ほどなくして事件は終結するとジュリアは結論付けた。



「あなた、王女よね?」


人質の見張りをしているテロリストの一人がジュリアに話しかけた。ジュリアをじっと見つめている。


「他の客達と全然違う。ずいぶん冷静ね」


声からして十代の女の子、自分と同じくらいの年齢だろうかとジュリアは思った。


「混乱していて何も考えられてないだけよ」


ジュリアの返答にテロリストは「ふーん、なるほどね」と相槌を打ち、他の客達に視線を移す。


間を置いてから、テロリストの少女が再び口を開いた。


「国王ってどんな人?」


「国王? 何でそんなことを?」


ジュリアは慎重に言葉を選びながら質問に質問を返す。


「仇だから」


「仇ってどういう……?」


ジュリアが聞き返した瞬間、彼女のお腹から「ぐぅ〜」と間抜けな音が鳴り響いた。


それほど大きな音ではなかったが、話をしていたテロリストには聞こえてしまっていた。


二人は一瞬硬直した。


そして、テロリストは口元をヘルメットの上から手で覆ってくすくすと笑い始める。笑いは止まらず、ついには肩を震わせて、声を押し殺そうとしながら笑い続けた。


「普通さ、この状況でお腹鳴る?」


「えへへ、面目ない。

前菜しか食べてなかったので」


二人が小さく笑っていると、部屋の中に白い煙が立ちこめ、ほとんど視界が利かない状況となる。


すでに特殊部隊の救出作戦は開始していた。

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