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Universe world  作者: 神藤彼方
プロローグ
2/22

#02 戦闘と街 -Battle and city-

 



 アバター作成が終わったその後は、しっかり夏休みの課題に取り掛かっていた。

 UWOにド嵌まりした場合に備えて、サービス開始される来週頭までに終わらせる予定である。と言っても、明後日の正午からサービス開始なので時間に余裕はあまりない為、スマホの電源を切り集中して課題に取り組んでいた。








 そして無事に夏休みの課題も終わり、サービス開始当日。電話が鳴り、画面には剣斗と表示されている。


「航、準備出来たか? と言うか何で連絡付かなかったんだよ?」

「準備出来てるぞ。 あー、すまん、スマホは課題に集中する為に電源落としていたわ」

「は?もう課題やったのか!?」

「UWOに集中出来る様に終わらせたぞ。お前は大丈夫なのか? 剣斗の場合、ゲームに集中し過ぎて課題忘れる未来しか見えないんだが…」

「大丈夫だ!少しプレイして落ち着いたら、課題に取り掛かる予定を立てている!」

「そこはかとない不安があるのだが…それで大丈夫か高校3年生…」

「大丈夫だ! 問題ない!」

「まぁ、課題終わらなくて焦っていても俺は一切手伝わないし、助けないから別にいいか」

「そこは助けて欲しいけど、航はそう言うの厳しいし容赦ないよな…」

「そうだな。厳しいし、容赦はしないぞ。 それはそれとして、合流はどうするんだ?楓香と麻衣も来るんだろ?」


 本日、サービス初日は幼馴染4人で一緒にプレイする予定だ。β組3人が俺に色々教えてくれる約束になっている。


「ログインすると、最初は王都の中央広場に居るはずだから、そこで待機で。それと、航のPNを教えてくれ。俺のPNはタカトだ」

「俺のPNはコウだ」

「じゃあ、ログインしたらこっちからフレンド申請飛ばすから承認してくれ。フレンドになればチャットが使えるから、それで連絡を取り合って合流しよう」

「わかった。じゃあ、後でな」

「うぃー」


 ――よし、サービス開始までまた時間があるから日課のトレーニングを終わらせよう…





 サービス開始時刻になったので、VRゴーグルを被りベッドで横になる。事前に食事とトイレも済まし、母にもVRMMOをプレイする事を伝えてあるので、準備は万端だ。



 ――――――――――――――――――――



<<UWOへようこそ。それでは新たな世界をお楽しみください>>




 目を開けると、そこは中世ヨーロッパ風の建造物が立ち並ぶ街並みだった。これは凄い…確かに本当にそこにあるかの様なグラフィックだ…しっかり触った感覚もあるから、本物としか思えない。これは凄まじいな。

 ログインしたプレイヤーが出現するこの噴水広場だが、流石に人が密集し過ぎているので、端に移動する。プレイヤーは頭上に青印のマークが出ていて、NPCは白印のマーク、敵対生物は赤印となっている。

 今いる噴水広場は真っ青になっているので、どれだけプレイヤーが密集してるのかよくわかる。



 そのままボーっとしてると頭の中にベルの音が鳴り響く。確認してみると、タカトからのフレンド申請だったので「承認」する。すると直ぐチャットが来たので話合った結果、人が多すぎるので一旦外に出る事になった。

 待ち合わせ場所である南の門に辿り着くと、3人のプレイヤーが待っていた。



「コウか?」

「タカトか?」

「よし、合流出来たな!」



 ――タカトは短い茶髪をおっ立てて瞳の色を金にした、身長178cm位のアバターだ。 …うん、髪色は違うがほぼリアルと変わらんな。因みに俺の身長は172cmだ。



「コウくん、私のPNはフーカだよ」



 ――フーカは金髪を腰あたりまで伸ばした緑の瞳の160cm位のエルフアバターだ。 …うん、耳の長さと髪・瞳の色以外は楓香も大して変わらんな。



「コウ。私のPNはマイよ」



 ――マイは真っ赤なショートヘアー&瞳の165cm位の半獣人(狼)アバターだ。 …うんお前もか。髪・目の色と追加された狼耳と尻尾以外は変わらんな。



「…みんなあんまり変わらんな」

「βで使ってた見た目そのままだ」

「私は見た目はβで作ったままだけど、種族は本サービスで解禁されたエルフにしたよ」

「私もフーカと同じで本サービスで解禁された半獣人にしたわ」



 耳をピコピコ動かしたフーカと狼の尻尾を揺らしたマイが答える。



「βでは種族は人間だけだったのか?」

「そうなんだよ。種族選択は正式サービスで追加されたものだ」

「私達みたいな変更の仕方をしている元βプレイヤーも結構居るでしょうね」



 フーカはマイの発言を受けてうんうん頷いている。



「人もそこそこ増えて来たし、そろそろフィールド行かないか?」

「おう、戦闘がどんな感じかコウに見せてやるぜ」




 王都ベナウィー南のフィールドはβの時から初心者向けと言われており、比較的初心者に優しいモンスターが出てくるとの事。 皆でモンスターを探していると、角を生やしたウサギが2体こちらに接近してきた。



「よし、まずは俺が戦うから見ててくれ」

「わかった」

「油断しないでね」

「調子に乗らずに戦いなさいよ」



 角ウサギに向かって盾と剣を構えるタカト。

 油断なく構えるタカトに対して角ウサギは突進を敢行する。



「はっ、甘い!」



 角ウサギの突進を盾でいなし、角ウサギの側面胴体を切りつけるタカト。



「ギュッ! キュゥゥゥ!!」



 ダメージを負い怒りを露わにする角ウサギがもう一体の角ウサギと共に先程よりも早い速度で突進する。



「喰らうか! スラッシュッ!!」



 タカトの剣から光る斬撃が飛び、2体の角ウサギの胴体が纏めて真っ二つになる。そして光の粒子と共に消え行く。



「ざっと、こんな感じだな。 倒したモンスターは光の粒子となって消えて、取得ドロップアイテムは自動でインベントリに入っている。 PTで倒した場合は、ランダムでPTメンバー内の誰か一人のインベントリに自動で入るシステムだな。ソロとPTの違いは、ソロの方が若干取得量が多い事。後、一杯になった事は無いが、インベントリに入らない場合は倒したその場に物理的にドロップするから注意な」



「インベントリはかなりの容量があるみたいだから、気にしないでいいぞ。ステータスもそうだけどここの運営、マスクデータにするの好き過ぎだろ… だからこそ余計にリアルっぽく感じられるんだろうけど。 あ、ステータスと言えば、レベルが上がるとステータスもちゃんと上昇してるから安心してくれ。上昇幅はそこまで大きい訳では無いけどな。どちらかと言えばHPMPの方が上がり幅はあると思う」



「なるほど」



 タカトの説明を聞いてる間にまた別の角ウサギが2体やってきた。



「じゃあ、次は私達が()っちゃうわよ!」

「頑張りますね」



 自分の身長近くある大剣をブンブン素振りするマイと青い水晶が嵌まっている杖を構えるフーカ。

 マイは突進状態に移行しようとする角ウサギに突っ込んでいった。



「先手必勝!はぁぁぁぁぁぁッ!!!」

「ギュッ…!」



 マイの斬撃一撃で頭から真っ二つになる角ウサギ。

 一方、フーカは



「ファイアボール!」

「キュゥゥゥゥゥ……」



 残りの角ウサギが火達磨になりながらこっちに突進してくるが、辿り着く前に光の粒子と化した。



「ふふ…コウ、どうです?」

「コウ君、やりました!」



「…結構えげつないのな」



「私のメイン武器は両手剣よ。見てわかる通り盾を使わない分攻撃力が高いわ」

「私は魔法メインなので杖です。そしてこの杖は、β特典の所持金で購入した魔力上昇値の高い杖ですね」



「なるほどなぁ。そんでタカトはスモールシールドとショートソードか。3人は見事にファンタジー装備だな」



「装備に[ファンタジー装備]と[近未来装備]があるって知った時、コウは確実に近未来の方行くと思ってたぜ」



「俺は現代の装備もだが、映画等で見る未来系装備とか好きだからな」



 ファンタジー装備は付与魔法など魔法との相性がとても良く、近未来装備は魔法を付与する事が出来ない代わりに、アタッチメント(例・銃器につけるスコープや光学迷彩など)がある。



「次は、俺も戦闘してみよう」



 次のモンスターを探そうと動き出した所で幼馴染達の動きが止まる。



「どうしたんだ?」

「悪い、βのフレからチャットが来たからちょっと待っててくれ」



 近くにあった大きめの石に腰を下ろし、チャットが終わるのを待つ。何だか3人とも目を見開いたと思ったら、今度は興奮してるようだが何かあったのか? 疑問に思いつつものんびり周りの風景を眺めて行く。



 それなりに離れた所にPTで角ウサギと戦闘してる人達が居る。3人PTと思われるが、4体の角ウサギに囲まれてるようだ。 中々の死闘を繰り広げているのが遠めからでもわかる。思わず手を握り締めて観戦してしまったが、何とか倒したようだ。 うん、闘技場とかで試合を観戦するのも楽しめそうだなぁ、あるのかわからんが。その内対人専用施設とか出てきそうではある。

 FPSとかではやっていたが、俺個人としては対人に全く興味無いし、PKとかも好きじゃない。このゲームにPKがあったらプレイしてなかったと思う。



 そんなこんなでチャットが終わった幼馴染達が近づいてきた。何か申し訳無さそうな顔してるな… 何となく察せるが。



「なんだ?フレンドに呼ばれでもしたのか?」



「…ああ、すまん。 そうだ、コウも一緒に来ないか? 俺達、βテストの時に遺跡を攻略して、その時に戦闘艦を手に入れてPTリーダーが所持してたんだ。 そして正式サービス移行時に、β時のレベルや所持アイテム等は金に変換されていたんだけど、戦闘艦はそのまま引き継いでいたみたいなんだよ!」



「そうそう!βPTのリーダーが運営にバグか問い合わせたみたいなんだけど、”戦闘艦引継ぎは仕様だから問題ない”って回答を貰ったんですって!」



「戦闘艦早く乗りたいですね。コウくんも行きましょう!」



 ――戦闘艦?宇宙船じゃなくて戦闘艦って言うのか… あっ、そういえばステータスには【所持戦闘艦】って項目あったな。それはまぁいいとして、βフレに呼ばれたのは予想してたけど、まさかβで手に入れた戦闘艦が引継ぎ対象とはなぁ。あいつらは行きたくてしょうがなさそうだし、しかし俺、まだ戦闘すらしてないんだよな…幼馴染達が3回戦闘しただけで。 



「…長い付き合いなんだから、集団行動苦手なの知ってるだろ?少人数なら問題ないが。βのフレは友人誘うとかって言ってなかったか? …俺を誘っておいてそれはあんまりじゃないか?」



「すまん…βのフレは3人誘うって言ってたが…」



「そこに元βPTの3人が居るんだろ?俺達も行ったら10人になるな。俺は元々ソロでマイペースにプレイしたいから無理だわ。集団行動だとそういう訳にもいかないし、合流する気満々のお前等とこのまま続けてもお互いの為にならないだろうし、もう良いから3人で合流してくれ」



「…ほんとにすまん」

「ごめんね」

「ごめんなさい」

「この埋め合わせはしっかりするからな!」



 ――それなりに付き合い長いが、こんな身勝手な奴等だったとはなぁ…もういいや面倒臭い。



「いや、埋め合わせとかも一切要らないから。こっちは自由にやるからそっとしておいてくれ」



 申し訳無さそうな顔しながら小走りに去って行く3人。



「はぁ…、しっかり誘いを断ってソロでやっとけば良かったな。 不快な気持ちになる事もないし。 …ようやく初戦闘だ、あんな奴等の事は忘れて切り替えよう」



 再びモンスターを注意深く探す。幼馴染達と居た時と違って今はソロなので、しっかり自分の気配を消しつつ、他者の気配を探りながら歩いていく。しばらく歩いていると、草原だったの地形が林に代わっていた。木々の根本に白い角ウサギであろう個体が見える。



「それなりに大きくて白いけど角ウサギなのか? そうだ、鑑定持ってたわ。【鑑定】」



 名前 : 白角ウサギ(角ウサギ亜種) Lv.5

 種族 : 魔獣

 スキル

 【突進】【跳躍】【聴力強化】



「角ウサギの亜種か…林は俺としても戦いやすいし、丁度いいから戦ってみるか」



 気配を消し、足音を一切立てずに木の枝に飛び乗る。枝から枝へ音もなく飛び移り、白角ウサギの背後にある木の枝に移動する。



「よし、気づいてないな。 …母さんじゃないが、忍の鍛錬を学んでて本当に良かった。…半ば強制だったけど」



 無音で地面に降り立ち、地を這うように白角ウサギの背後に接近し、レーザーソードの出力口を奴の首にあてると同時に刃形成のスイッチを押す。 

 白角ウサギの首横から光の刃が生えると、今度は一気に刃を引き抜く。白角ウサギの首が宙を舞い、少し間を置いて光の粒子となって消えて行く。



<<レベルアップしました>>



「ふぅ。ちょっと緊張したけど、問題なかったな。懸念だったレーザーソードの攻撃力も問題ないな」



 最初はハンドガンタイプの銃であるレーザーガンを試そうかと思ったのだが、明らかにレーザーソードより出力で劣るだろうと言う予想と、それを前提に考えるともう一丁揃えて二丁装備にした上で、威力を手数で補うしかないという結論に至り、使用を断念していた。



「ハンドガンタイプの銃はもう一丁あると良いんだけどなぁ。二刀流や二丁拳銃装備が出来るのは確認済みだから何とかしたい所だな。そういえばレベルが上がってたから確認するか」



 名前:コウ Lv.3

 種族 : 人間

 所持戦闘艦

 なし

 メインスキル

 なし

 サブスキル

【鑑定】【HP自動回復】【MP自動回復】【器用値上昇】【敏捷値上昇】

【生活魔法】new!【気配察知】new!【隠密】new!【跳躍】

 new!【バックスタブ】 

 所持金

 5000G



【気配察知】

 一定の範囲に居る生命の気配を感じ取る事が出来る。 


【隠密】

 自分の気配を消し、他者に見つかり辛くなる。


【跳躍】

 ジャンプの飛距離が伸びる。


【バックスタブ】

 相手の背後から攻撃を行うと大ダメージ。



「ん?スキル生えてるな。【気配察知】に【隠密】と【跳躍】、それに【バックスタブ】か… 生えたスキルが全部サブだし、見事に暗殺忍者だな…【バックスタブ】って攻撃スキルっぽいけど、常時発動タイプでサブ扱いなのか。 まぁリアルの動きもしっかり反映されるのは確認出来たけれども、どうせなら銃かレーザーソードのスキル欲しいなぁ」



「今日はこのまま周辺でレベルを稼いで、素材を街で売り払って装備更新の資金を貯めつつ、現地のNPCに遺跡について何か知らないか聞き込みしようかな」



「よし、サクサク行くぞ!」


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


 暫く角ウサギを相手にレベルを上げに勤しんでいると、2つの気配が近づいてるのが分かった。



「ん?何か来てるな。あれは狼か?」



 2頭の狼はこちらには気づかず、角ウサギを標的にしているようだ。



「よし、このまま一体速攻で仕留めて、2体目ガチンコでいくか。その前に【鑑定】」



 名前 : グローヴウルフ Lv.5

 種族 : 魔獣

 スキル

【噛みつき】【爪撃】【疾走】【嗅覚上昇】【聴覚上昇】



「普通に狼だな」



 グローヴウルフ2頭は角ウサギを挟み撃ちで仕留めようとしているのか、二手に分かれた。その内一体にコウは忍び寄り、白角ウサギの時と同様の手口で音も立てずに仕留める。



「奇襲と言うか、暗殺と言うか… 楽だけど地味だな」



 そのままもう一体へと真正面から突っ込んでいく。流石に残されたグローヴウルフもこちらに気づき、疾走から飛び掛かってくる。



「さすがに速いな」



 かなりの速度が乗った状態からの飛び掛かり攻撃に対して、コウは驚いてはいるものの、落ち着いて半歩体をずらしグローヴウルフの爪撃を躱す。躱すと同時にホルスターから引き抜いたレーザーガンを、背中を見せたウルフの後ろ足に打ち込む。



《チュンチュン》

「キャンッ!」



「チッ、やっぱり手数で攻めないと厳しいな」



 レーザーソードと比べるとやはり威力は大分控えめだったが、後ろ足を攻撃した事によりグローヴウルフの機動力が大幅に削られた。



「ご苦労さん」

「ギャッ…」



 体勢を整えたグローヴウルフがこちらに振り向いたと同時にレーザーソードで首を落とし終了。



<<レベルがあがりました>>



「おっ、レベルが上がったか」


 その後もクローヴウルフを十数体ほど倒してレベル上げを行った。


<<レベルがあがりました>>

<<レベルがあがりました>>




 名前:コウ Lv.6

 種族 : 人間

 所持戦闘艦

 なし

 メインスキル

 なし

 サブスキル

【鑑定】【HP自動回復】【MP自動回復】【器用値上昇】

【敏捷値上昇】【生活魔法】【気配察知】【隠密】

【跳躍】【バックスタブ】

 所持金

 5000G




「そろそろ素材を売りに一旦街に戻るか。しかしずっと戦闘してたから、いい加減汚れている状態が気持ち悪いな。あっ、生活魔法があったな」



「【クリーン】」



 クリーンの魔法で全身が綺麗サッパリになった。



「生活魔法取って良かった、これは便利だわ。現実に欲しいレベルだ」



 生活魔法は、火を起こすための【種火】飲み水の【浄水】乾かす為の【乾燥】そして対象を綺麗にする【クリーン】4種の魔法を内包している。これはメインスキルから除外され、サブスキルに分類される極一部の魔法となっている。



「さて街に戻るか」





 王都ベナウィーに戻ったコウは、そのまま門を通ろうとすると門の側にいた兵士に呼び止められる。



「すまないが、身分証の提示をして欲しい。無い場合は500Gを払ってもらう事になる」

「では500Gで。 …すみません身分証はどうすれば発行して貰えるのでしょうか?」



「500G確かに受け取った。 身分証は本来は冒険者・商業ギルドで発行して貰えるのだが、君達は異世界人であろう?すまないが異世界人は対象外になっている。

 今上層部の方で、異世界人用の身分証を発行する為の準備を進めている状況だ。登録料はかかるが中央噴水広場の前にある、総合庁舎にて仮の身分証を発行しているのでそちらを利用してくれ」



「わかりました。それでは総合庁舎に行ってみたいと思います。申し遅れました、自分はコウと言います。情報ありがとうございました」



「私はラックと言う。情報は気にするなそれが仕事だ」

 ラックは手を振って笑顔で答える。



 ――良い人に当たったな。取り敢えず総合庁舎に行って身分証発行して貰おう。




「ここが総合庁舎か、噴水広場に居た時は全然気づかなかったな」



 そのまま、庁舎の中に入っていく。入ってすぐに総合受付があったのでそこで聞いてみる。



「すみません、門の兵士の方からお聞きしたのですが、身分証を発行して貰えますでしょうか?」

「ああ、異世界人の方ですね。…はい、こちらで発行いたしますが、登録料金が1000Gかかりますが宜しいですか?」

「お願いします」

「はい、1000G確かに。 お名前はコウさんですね、ではこちらが仮発行の身分証になります」

「ありがとうございます」



「何かご不明な事があれば何時でもお尋ねください。私は総合相談窓口・受付担当のネイトです。今後ともよろしくお願い致します」



「改めましてコウです。こちらこそ今後ともよろしくお願いします。 あっ、では早速なのですが、遺跡についての情報って何かご存じですか?」



 遺跡の情報を尋ねたら、受付の女性職員が少し考え、悩んでいる。



「何かご存じなんですか?」

「そうですね…ここ王都ベナウィーからずっと南に向かうと、”枯葉てたダンジョン”と呼ばれる場所があるのですが、そのダンジョンは古代遺跡に繋がっていると言う噂が数年前までありましたね」

「数年前?今は違うのですか?」

「はい。丸一年かけて大規模な調査隊も派遣されましたが、何も成果を得られずそのまま調査は打ち切りになりました。…元々ダンジョン自体が死んでいるので魔物も沸かず、素材・宝箱も無いに等しいので、冒険者も訪れないのです」

「そうですか…」

「お役に立てず申し訳ありません」

「いえ、こちらこそ貴重なお話ありがとうございました」



 そのまま立ち去り、庁舎の近くにあるベンチに座りつつ考える。

 ――枯葉てたダンジョンは何もなかったとの事だが、どうにも気になって仕方ないな。仮に聞いた通り何も無かったとしても、如何にも冒険って感じがしてワクワクしてしまう。



「よし、行くか! でもその前に装備やアイテム類を調達しよう。準備はしっかりとしないとな」



 素材を売却する為のお店を知らなかったので、直ぐ側にある総合庁舎に再び訪れる事に。



「あら?コウさんどうされました?」

「ネイトさん何度もすみません、討伐したモンスター素材を売却したいのですが、おすすめのお店ってどこかありますか?」

「ああ、それでしたら庁舎出て左手にある大通りに「グランド」と言う装備と雑貨を取り扱ってるお店があるので、そこがおすすめですね。ただ、紹介状が無ければ利用できないのですが、今お時間は大丈夫ですか? 大丈夫であればご用意致しますが」

「時間は大丈夫ですので、お願い出来ますか?」

「わかりました。では、少々お待ちください」




 数分後…




「…お待たせしました。こちらが紹介状となります。このお店は総合庁舎からの紹介状が無ければ利用は出来ません。例えば、ご友人・お知り合いなどにコウさんが紹介しても利用する事が出来ませんのでご注意下さい」

「ありがとうございます。…そういうシステムなんですね。自分は基本ソロなので問題ありません」


 紹介状を受け取り、眺めているとネイトが口を開く。


「このお店は、誰にでも紹介する訳では無いのでこの事は広めないで頂けますか?」

「そうなんですか?自分は何故紹介して貰えたのでしょうか?」



「2つ理由があります。1つ目は礼儀正しい事と、2つ目は受付担当としての直感ですね」

「2つ目は何とも言えませんが、礼儀とかって割と当たり前の事だと思うのですが…」

「少し前、期間は短いですが異世界人の方々が来訪された時がありまして、その時の態度があまりにも傲慢で酷かったと言う経緯があります。勿論、表面上だけ礼儀正しくしてもある程度本質を見抜く自信がありますので、意味はありませんが」



 ――これ、βテスト時の話だろうな。「人」として接する事無く、「NPC」としてしか見てなかったのだろう。



「そうだったんですね… 同郷の者がご迷惑をおかけしました。もちろん、お店の事は秘匿しておきます!紹介状ありがとうございました!」

「またお待ちしてますね」



 ニコニコしながらお辞儀をするネイトさんに、再び頭を下げ庁舎を後にする。

 ラックさんといい、良い人?NPC?最早人だな!ありがたい事に良い人達との縁が出来たもんだ。よし、紹介されたお店に向かうか。



 教えられた場所に向かうと、しっかりしたレンガ造り大きなお店が佇んでいる。



「このお店かな?立派な看板だなぁ。 ごめんください」



 お店はとても清潔で色々なものが置かれてる。装備類や雑貨もあるって聞いたけど、まさに「何でも屋」だな。店内を見回してると、店の奥からドワーフと思われる人物が出てきた。



「おう坊主、何の用だ?この店は紹介状が無ければ利用出来んぞ?」

「すみません、自分はコウと言います。総合庁舎のネイトさんのご紹介できました。これが紹介状です」

「……おう、確認したぞ。坊主は異世界人だったのか。で?何しに来たんだ?」

「まずは素材の買い取りをお願いします」



 レベル稼ぎで取得したグローヴウルフ素材の半分だけを残し、それ以外の素材を出す。そこそこ溜まってたな。



「結構あるな。査定するからちょっと待ってろ」

「わかりました」



 暫く店内の商品でも眺めてのんびり待っておくか…





お読みいただきありがとうございます。

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