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Universe world  作者: 神藤彼方
プロローグ
1/22

#01 事前準備 -Advance preparation-

 



 7月も半ば、日本特有の蒸し暑い日が続いているが、夏休みを目前に控えた学生達のテンションはうなぎ登りである。




「――明日からは夏休みですが、あまり羽目を外し過ぎないようにね。課題もしっかりこなした上で夏休みを満喫して下さい」

「「「「はい」」」」

「「「「はーい」」」」

「「「羽目外しませーん」」」

「もう。本当にわかってるの?先生達は夏も忙しいんだから、補導なんてされないようにね!」


 我がクラスの担任、小森美鈴先生の有難い〆の言葉と共に帰宅準備を始める生徒達。

 俺、風馬航宙(かざまこうちゅう)も帰宅しようと席を立つ。

 すると、馴れた様子で他クラスの生徒3名が入ってくる。


「航、もう明日から夏休みだ!お前も一緒にUWOやろうぜ!」

「いや、急に来ていきなり何だよ、お前暑苦しいぞ」

「航くん急に御免ね」

「剣斗もう少し落ち着きなさいよ」


 幼稚園からの腐れ縁である幼馴染3名。

 暑苦しいのが高谷剣斗(たかやけんと)、次に大人しい伊月楓香(いつきふうか)、ハキハキしてる浅川麻衣(あさかわまい)である。


「UWOは第一陣に当選してるから当然やるけど、お前等はβテストの時にPT組んでた人達が居たんだろ?俺はソロでマイペースに遊びたいから遠慮しとくわ」


「βの時のフレもリア友誘うって言ってたから、そっちとプレイするんじゃねぇかな。一緒に遊べば戦闘その他色々教えてやれるぞ?」

「航宙も一緒にやりましょうよ。幼馴染4人でPT組んだら楽しいわよ」

「航くんも一緒に冒険しよう?」

「いや、他者に振り回されたくないから遠慮する」


 断っても粘る3人。


「航くん、クラスは違うけどゲームなら一緒に楽しめるよ?」

「4人で遊んだら絶対楽しいわ!ね、遊びましょう?」

「…わかったよ。半ば無理矢理誘ったんだから、しっかり面倒みろよ? ”約束”な?」

「おう、来週頭から正式サービス開始だからキャラ作って準備しておけよ!」

「わかった。準備しておく」


 この後、剣斗は職員室に呼ばれて去って行き、楓香と麻衣はそろって買い物に行くと言って帰っていった。


「さて、俺も帰りますかね」




 Universe world online ユニバースワールドオンライン、略してUWO。

 宇宙と惑星探索のダイブ型VRMMORPGである。プレイヤーは「異世界人」として世界に降り立ち、惑星でフィールド探索・ダンジョン攻略や各惑星地域の人々と交流し、宇宙船を入手したら惑星間を移動して、別の惑星や宇宙を探索していくゲームだ。


 人間盟主惑星 「エアスト」、半獣人盟主惑星 「ハベスティア」、エルフ盟主惑星 「フルール」、ドワーフ盟主惑星 「エルツオーア」、巨人族盟主惑星 「プロトリーゼ」の5つの惑星があり、各惑星がそれぞれ一つの国になっている。物語は始まりの惑星でもある「エアスト」でスタートする。



 尚、プレイは安全を考慮して体がほぼ出来上がっている15歳~となっており、取得可能アカウント数は1つのみ。顔写真付き個人情報がアカウントに紐づけ管理されているので、サブ垢や詐称してプレイする事は出来ない。

 これは、ダイブ型のゲームでは極一般的な事である。



 タイトル発表と共に公開されたPVでは、その洗練されたグラフィックと住人NPCがまるで現実の人間かの様に受け答えする映像に、各界が衝撃を受けて話題を掻っ攫う程だった。

 となると当然の様に疑われるのが捏造・合成の類であり、映像関連の専門家が検証した上でも「捏造・合成の類は確認出来無い」との見解を示し、それもまた話題となった。


 そんな中、突発的にβテスト募集の発表と共に受付が始まり応募が殺到。サーバーが長時間パンクすると言う事態に見舞われた。幸い、先着順では無く抽選だったので大きな問題にはならなかった。


 そしてβテスターの栄光を勝ち取った5000人のプレイヤー達は、UWOの世界をその目で直に堪能した結果、「PVに偽り無し」との感想だったのがまた話題となり、ゲーマー達は狂気乱舞し、専門家は驚き、大きなバグも確認されずテスター全員が満足する結果に終わった。


 因みに航宙は幼馴染達からテスター応募に誘われていたのだが、その時は祖父の家に帰省しており連絡がつかなかったので応募すら出来なかったのである。


「ただいま」

「お帰りー。航宙、荷物来てるわよ」

「UWOのソフトかな? 鍛錬終わったら確認するよ」


 そのまま荷物を2階の自室に持っていき、鞄と荷物を置いて制服からトレーニングウェアに着替える。


「鍛錬怠るとじいちゃんに怒られるからな…」


 ブツブツ言いながらランニングに始まり一通りの肉体トレーニングを開始する航宙。


 遥か大昔存在した風魔の忍を先祖に持ち、我が家はその分家筋との事で、航宙は祖父に幼い頃から英才教育と言う名の苛烈な鍛錬を強いられて来た。お陰様で一部の武器?忍具?の扱いには長けており、身のこなしや体術は忍者のソレである。忍法?そんなものは無い。アレは創作物の中だけの話だ。

 高校3年にして忍者の才能を持つ航宙だが、悲しい事に本人は忍者刀よりもライト〇イバー、吹き矢よりも銃が好きなのである。


 鍛錬後軽くシャワーで汗を流し、サッパリした状態になった航宙は届いた荷物を開け、UWOのソフトをVRゴーグル本体にセットしデータをダウンロードしていく。


「本当は戦闘機だけのゲームが良かったんだけどなぁ。フライトシューティング大好き人間としてはさっさと宇宙船手に入れて、船メインでプレイしたいもんだ」


 父が旅客機のパイロットをしている影響で幼い頃に飛行機が大好きになり、プレイするゲームは基本的にフライトシューティングかFPSがメインになっている。

 因みに父は婿養子であり、風馬は母の性である。そしてその母は元戦場カメラマンと言う経歴で、現在は専業主婦。 本人曰く、「余生を過ごしている」だそうで。戦場カメラマンとして活躍していた当時は、「気配を消す修行をしておいて本当に良かった」との事。戦場カメラマンになるにあたって、祖父からは、少しの体術と気配を消す鍛錬を強制的に受けさせられたと言っていた。



「おっ、ダウンロード終わったか。じゃあ、今のうちにキャラ作成しておこう」


 VRゴーグルをつけてそのままベッドで横になる。するとだんだんと意識が薄れていき、若干の間を置いて意識が覚醒する。



 ――――――――――――――――――――



 目の前に水晶のような物が浮いている。水晶の表面に顔文字のようなものが表示されてるけど、なんだこれ。




<<UWOへようこそ。私は、アバター作成サポートAIです。アバター作成を開始致しますか?>>


「はい」



<<まず、アバターの名前を設定してください。尚、本名など個人の特定に繋がる可能性があるものは極力避けて下さい>>



「コウで」



<<ではあなたの分身となるアバターの外見を設定して下さい>>



 インナーを来ただけの黒髪黒目な自分の姿が宙に投影されている。



「事前に調べた情報では、ステータスの影響は受けるみたいだけど、リアルの運動神経等もそのまま反映されるって話だから、あんまり弄っても感覚狂いそうだしそのままでいいか。念のため、髪と目を少し変えておくか。」



 髪色を銀色に瞳を碧眼に変更する。



<<続いては種族を選んでください。人間以外はそれぞれ特化したステータスになりますが、ステータスで各能力値は確認出来ないのでご注意ください。>>



「は?ステータスで基礎能力値確認できないのか!?」



<<はい。基礎能力値はすべてマスクデータとして処理されております。ステータスで確認出来るのは、名前・Lv・種族・HPバー・MPバー・所持戦闘艦・スキル・サブスキル・所持金等です>>



「HPMPも数値じゃ確認出来ないのか。管理に気を使いそうだなぁ…格ゲーかよ…」



 種族は人間・半獣人・エルフ・ドワーフ・巨人族が存在していて、プレイヤーが選択できるのは巨人族以外か。

 人間は平均的な能力値で、半獣人は敏捷と力寄りの能力、エルフは魔力と精神、ドワーフは力と器用か。

 それと選択出来ないけど、巨人族は力極振りと。ガチガチの悩筋なんだな…選択出来ないのはきっと宇宙船に乗れないからとかだろうなぁ。



「これ、種族変えたら体の感覚が変わるんじゃないか? …うん、無難に人間にするか」



<<続いて初期武器を選んでください武器はメインとサブ計2つ選べます>>

<<装備にはファンタジー装備と近未来装備、2つの系統があります。>>



「剣・大剣系だったり飛び道具系だったり魔法系もあるのか…。おっ、ライ〇セイバーっぽいのと銃もある!ハイ決定」



<<レーザーソードとレーザーガンが選択されました。本当に決定してよろしいですか?>>



「はい」



<<続きまして初回スキルリストから希望するスキルを5つえらんで下さい>>

<<尚、メインスキルを全く選ばずにサブスキルだけ選択する場合は6つ取得可能です>>



「うーん、そもそもメインスキルとサブスキルの違いがわからんのだが…」



<<メインスキルとは、極一部を除いた魔法スキルと主に攻撃スキルを指します。そしてサブスキルとは、主にステータスやその他補助を目的としたサポートスキルです>>



「まぁ、宇宙船手に入れたらそっちメインに引きこもるつもりだから、サブスキルのみでもいいか」



「魔法はあんまり興味ないし、最初は宇宙船探さないといけないんだよな… メインスキルってこの機会を逃すと取得出来なかったりするのか?」



<<プレイヤーの動作・行動蓄積次第になりますが取得は可能です。それ以外ですとスキルスクロールと言うアイテムを使用する事で取得できます>>



「おお!一応取得手段はあるのか。じゃあ、サブのみの6つでいいか」







「……よし、この6つで頼む」



<<確認しました。本当にこの構成で宜しいですか?>>



「はい」



<<では、このアバターで決定致します。正式サービス開始までお待ちください。お疲れ様でした>>



 名前:コウ Lv.1

 種族 : 人間

 所持戦闘艦

 なし

 メインスキル

 なし

 サブスキル

 【鑑定】【HP自動回復】【MP自動回復】

【器用値上昇】【敏捷値上昇】【生活魔法】

 所持金

 5000G



 ――――――――――――――――――――



 風間航宙 18歳 高校三年 


 好きな物・飛行機と銃とSF映画

 嫌いな物・ゴーヤと豚足

 約束を破る者(正当な理由がある場合は除外)





お読みいただきありがとうございます。

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