なんだこの世界は
貞操逆転世界って流行ってるじゃないですか(勝手)
ただ実際に逆転するには何があったらするのかなって思って考えてみました。
そうして俺は三か月のリハビリを受けた。
前世では大きなケガをしたことがなかったからか、思うように体が動かないもどかしさや、少し動いたら疲れる自分の体への苛立ちでなかなか大変な期間だったと思う。幸運だったのは前世と身長がほとんど同じだったのでその部分の違和感はなかったことと、前世の俺よりもちょっとだけカッコイイってことだ。
もちろんこの世界に転生した俺がただリハビリを受けていたわけじゃない。世界のことをネットを駆使して調べに調べた。
そうネットがあるのだ。というか俺の過ごしていた世界の100年後だった。魔法がある時点で俺にとっては異世界だけど、世界としては連続して続いていて、最初に考えた異世界転生とは少し異なるようだった。そして調べるうちにいくつも衝撃の事実が発覚した。
俺が死んだ2022年、突如として女性にのみに「魔力」と呼称される(キリスト教では聖力と呼ばれているらしい)謎の力が備わり、女性は従来の科学では解明不可能な現象を引き起こすことが出来るようになった。それは何もないところに火の玉を出現させたり、大きな竜巻を生み出したり、自身の身体能力を強化するなんてこともできたらしい。
突如出現した魔法としか思えない現象に世界はパニックになり、その混乱のさなかに魔法を使ったテロが行われたことがきっかけで世界魔法大戦が始まった。従来の兵器はもちろん活躍したが、個人の生身で兵器と同等の働きをする女性は重宝され、その戦火には日本も否応なく巻き込まれた。
その結果として、女性が前線で魔法を行使し、男性は機器の操縦や生産にまわることとなった。これによって女性の地位は劇的に向上し、三年間の大戦を経て人々の価値観は大きく変わった。
そう。
女性は強い魔法を習得して、かよわい男性を守るべきである。男性は献身的に女性につくし、家庭を守らねばならない、というように、第二次世界大戦後の男女の価値観をそのままひっくり返したような世界になっていたのだ。
ここまで調べて俺は軽く絶望した。戦争によって大きく摩耗した世界は技術力も衰退し、この西暦2130年が結果として俺のいた時代と変わらない技術力しかないのは、未来技術に興味があった俺としては残念だがまあいい。魔法が使えないのだ。魔法の存在を知った俺のワクワクを返してほしい。
しかもなんだ、男性の地位が第二次世界大戦後の女性くらい低くなってるんだが。こんなことで俺はこのさきやってけるのかなあ。
入学を明日にひかえた俺は悶々とした気持ちのまま、この世界について調べたノートを読み返していた。
「蓮司ー!明日の用意できたのかー?」
リビングから父の声がする。
俺は「瀧 蓮司」という少年に生まれ変わったらしい。明日から通う予定の私立朝日丘学園高校に入学が決まっていたが、交通事故で命を失い、俺と入れ替わったのだ…と思う。
幸いにして専業主夫の父も仕事であまり帰ってこない母も、記憶喪失という扱いの俺に対してすごく優しく接してくれている。この両親のもとでなら楽しく過ごしていけそうだ。
「できてるよー!もう寝ようと思ってたとこ!」
コンコン
「蓮ちゃん、入るわよ」
返事を聞かずに母が入ってくる。垢ぬけた自然な茶髪が簡素にまとめられており、快活そうな目鼻立ちをしている母は息子目線でもかなり美人だ。母は魔法製薬会社にて部長を務めており、いつも忙しそうで付き合いなどもあることから、いつも遅くに帰ってくる。
「もう母さん、返事してから入ってくれよ。」
「アハハハ、いいじゃない家族なんだから。それより蓮ちゃん、明日から学校でしょ?私心配だわ。帰るのとかも遅くなるでしょう?変な女に襲われないかが心配で・・・」」
「何いってんのさ母さん、大丈夫だよ。」
「いや、蓮ちゃんは分かってない!世の中には変な女がたくさんいるのよ。人気のない道とかは通らないようにしなさいね。無理やり引きずり込まれたら男じゃ勝てないんだから。」
・・・・・・そう、女性の劇的な地位向上に伴って貞操観念も逆転したのだ。やれインナーは必ず着ろとか、暗い場所は通るなとか耳が痛くなるくらい母からは何度も言われている。
俺としてはあまり実感がわかない話である。目の前の母親と比べても力で負けるとも思わないし、女に襲われるならむしろウェルカムって感じさえある。
「はいはい、気を付けるよ。俺はもう寝るから。おやすみ、母さん」
「ほんとに気を付けるのよ!おやすみなさい、蓮司」
そういって母は退室した。
「さて、寝るか。寝坊したら、、、まあ今更か。もう三か月遅れてるわけだし。」
そう思うと気が楽になった。しかし前世では社会人だった俺がいまさら高校生かあ。
社会人としての経験があるからこそわかる高校時代もっと頑張ればよかったってことが。
せっかく行くんだ俺は目いっぱい頑張るぞ!そして楽しむぞ!
どんな人がいるのかな・・・。
筆者は別に社会学とか歴史学の専門ではないのでこれから出る設定が全て論理的で合理的な保証はありませんが、もし気になることがあればぜひ感想で教えてください。
あと貞操逆転世界ならこんなとこもこうだよね、みたいなのも教えてもらえると嬉しいです。