第2話【Different World:異世界】
とある国にある巨大な教会の地下に存在する部屋で、話し合いが行われていた。
部屋に窓は無く、薄暗い空間をランタンが静かに灯している。
議題は様々で話し合いが終盤に刺しかかろうとした時、それは報告された。
「西のダンジョンが崩落したようだ」
「崩落?となると淵落の魔女が復活したのか?」
「どうやら、そのようだ」
円卓に座るローブを着た老人達が1人の老人の言葉を聞いて皆が驚いた。
「調査隊を送ったが既にダンジョンに入る事は困難。最後に入ったハンターの証言によると、魔女は連れ去られたらしい」
「連れ去られた?」
「誰だ?奴隷商人か?」
「モノ好きにも程があるな」
緊張感の無い発言がその場の空気をほんの少しだけ和らげる。
会議が長引いていたのもあって集中力が切れかかっていたのもあってだろう。
「奴隷商なんて、その様な輩しかおらんじゃろうて」
「最近わしも試しに1人買ってみたが、奴隷は良い物じゃぞ」
「連れ去ったのは、商人では無い」
戯言と失笑が飛び交う中、中でも緊張の糸を切らさなかった老人が告げる。
そして、1枚のカードを卓上に放り投げる。
「なんだ?」
「これは……チェスカード?」
この世界にトランプカードは存在しない。
類似したこのチェスカードと呼ばれる、トランプと何ら代わりの無いカードがトランプの代わりとなっている。
中央に雑に投げられたカードに視線が集まったと同時に、報告した老人は口を開いた。
「『怪盗ミラージュ』。そう名乗っていたそうだ」