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第1話【Metempsychosis:転生】 Ⅲ

 洞窟の更に奥。

 遺跡のような場所で男3人と女1人が焚き火を中心に円になって座っている。

「駄目だ。いくら探してもそれっぽい物が見つからん」

「仕方ねぇよ。100年経っても誰も見つけてないんだから」

 嘆く男の隣で干し肉を食らう女が地図を凝視する。

「地図もほとんど機能してないわ。やっぱりここのダンジョンは定期的に配置が変わるタイプね。例えるならゴーレムの胃の中って感じ」

「例えが分かりづらい」

「念の為にマッピングしてて良かった。してなかったらここで野垂れ死んでたな」

 ダンジョンに入って暫くが経ち、体力を回復させる為に休憩していたが、リーダーが立ち上がる。

「さてと。休憩は終わりだ、出発するぞ」

 支度を終えたと同時に焚き火を消して4人はその場から立ち去る。

「どこにあるんだー俺のお宝ー」

「俺達のだろ。噂によれば隠し部屋にあるらしい」

「その噂もここまで来たら疑うわね。百年前の噂だし」

「案外あの廃村にあったりして」

「灯台下暗しにも程があるだろ」

 その時だった。

 先頭を歩いていたリーダーが突然足を止めた。

「静かに。何か来る」

 その一言を聞いた瞬間、三人に緊張が走る。

 身構えていると、遠くの方から人間の声に酷使した叫び声が響いていた。

 その叫びは次第に近付き、そして、その姿を現した。

「ぎゃぁぁぁあ!!」

 泣き叫びながら俺が登場しましたとさ。

「なんなのここ!?洞窟かと思ったら遺跡っぽくなるし!骸骨とかデカい虫とかオバケとかめっちゃ出るし!なんなのここ!?なんなのここ!?」

「お、落ち着けって」

「って!?人ぉ!?」

「今更!?」

 騒いでいると4人のうち1人が水筒を取り出して俺に渡す。

 どんな仕組みなのか分からないが革で出来た水筒に入っている冷たい水を飲む。

「はぁ……お水美味しい……」

「変わった格好してるな。あんた名前は?」

「俺?俺は……」

 冷静になって4人を見て、考える。

 こんな怪しい洞窟にいた見知らぬ人間に安易に名前を教えて良いものなのだろうか?

 いいや、どの世界だろうと安易に本名を教えてはいけない。

 怪盗の志に従い、偽名を名乗る事に。

「俺はタロウだ」

「タロー?名前も変わってるな。異国の人間か?」

 赤毛や金髪、緑に青の髪をしたあんたらの方がよっぽど異国の人間だよ。

「そんなところだ。あんたらこそ誰?」

「俺達はトレジャーハンターだ」

「とれじゃ……なんだって?」

 この世界にもそんな言葉があるとは思っていなかったので、思わず聞き返す。

「おいおい。トレジャーハンターを知らないのか?世界各国にあるダンジョンに入り宝を手に入れる。それがトレジャーハンターだ」

 リーダー的存在の男が胸を張りながら説明する。

 ダンジョン?なんだそりゃ?

 おいおい聞くとして、肝心な言葉を聞き逃さない。

「宝があるのか?」

「あぁ。と言ってもここは100年も攻略されてないダンジョンだ。本当にあるのかも分からない」

「じゃあなんでそんな所に来てんだ?」

「お前本当に何も知らないんだな。ダンジョンってのは定期的に魔物が活発化する。そのタイミングで宝も出現するんだ」

「俺達はその調査兼宝探しに来たって訳」

「分かりやすく言うと、年に1回お祭りがあるって感じよ」

「なるほど、分かりやすい説明ありがとう」

 その後、歩きながら色々な事を聞いた。

 ダンジョンの仕組み、ここに生息するモンスターの種類等。

 細かい事は自分で調べるとして、現状で説明されやすく怪しまれないような情報を聞く。

 ゲームをほとんどしなかったが、よく聞くRPGのような場所だった。

「それで?ここの宝ってのはどんなの?」

「噂によれば人類が加工不可能な鉱石、ミスラルを使用した武器だ」

「刀身は水色で短剣。柄は黒くて、剣とは思えない程の軽さらしい」

「おまけに超頑丈で生涯使用したとしても刃こぼれはしないだとか」

「当時の人間も血眼で探し回ったらしいんだけど、それでも見つからないんだって。ここに来るまでにそれっぽい剣見た?」

「それっぽい剣……」

 めちゃめちゃ見覚えある。

 なんなら俺の上着の内ポケットに入ってる。

「なぁ、その剣って──」

「ちょっと!皆あれ見て!」

 短剣を確認させようとすると、女が声を上げ、指を差す。

 そこには石造りの遺跡とは全くと言って協調しない装飾の銅で出来た扉があった。

「如何にもお宝部屋って感じだな」

「遂にお宝ゲットか!?」

 興奮気味で男が近付き扉を開けようとするが、扉はビクともしない。

「……駄目だ、開かない」

「マジかよ」

「多分鍵が必要だ。ほら、ここに鍵穴がある」

 男が差す指の先に言葉通りに鍵穴がある。

「鍵穴?どれどれ……」

 職業病とはよく言う。

 興味のある鍵穴を見ると解錠できないかついつい覗いてしまう。

「どうやっても開かないわよ。ダンジョンの鍵はダンジョン内で生成されるようになってるし」

「一旦戻るか。鍵を見落としていたかも知れないし」

「せっかく見つけたのに戻んのかー。面倒だけどそれが手っ取り早いな」

 ──カチャン……

「「「「……ん?」」」」

 来た道を戻ろうとした4人は静かに鳴り響いた音を聞いて振り返る。

「開いたぞ?」

 あれ?なんで鳩がマメ鉄砲食らったような顔してんの?

 開けちゃマズかったの?

「はぁぁ!?」

「ダンジョンアイテムを使わないで!?」

「うわっ、本当に開いてる!?なんで!?」

「タローさんって何者なの!?」

 鍵を開けた事に対し驚く4人。

 こんな単純な鍵穴を開ける事など造作も無いね。

 宝の部屋の鍵がこんな簡単に開いて良いのかと思うが。

「職業柄、鍵穴があると開けたくなるんでね」

「職業柄だと?」

「何のジョブなの?もしかして盗賊?」

「俺の事は良いだろ。それより中に入ろうぜ」

 やはり開けるべきでは無かった。

 4人の好奇心と探求心が織り交ざる目線が刺さり、話題を無理に変えようと扉を開け、一足早く中に入る。

「あっ!待って!罠かも知れな──」

 次の瞬間、4人の前から俺は音も無く消えた。

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