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第1話【Metempsychosis:転生】

 はて、ここはどこだ?

 違和感のある浮遊感に溺れながら俺は意識が目覚める。

 俺こと石橋冬弥は世間の富豪達に恐怖を齎せた怪盗だった。

 しかし、無闇矢鱈と盗みを働いてた訳では無い。

 裏で悪事に手を染めていた富豪達のみターゲットにし盗んだ金品は貧しい人達に寄付していた。

 巷では蘇った五右衛門なんて言われていた。

 そんな俺はちょっとヘマをしたおかげで警察に捕まり、一人寂しく投獄された後に処刑された。

 何回か脱獄しようと思ったが道具類は全部没収されて裸で投獄されたんだ、何も出来ないよ。

 そうか、ここがあの世ってやつなのね。

 色んな人が語るような世界ではなかったのがちょっと残念。

 そんな訳で死んだ俺だが、どうしてかこうやって意識がある。

 手足の感覚は無く、言葉は発せない。

 何も見えず何も聞こえない。

 謎の浮遊感だけが今分かる事だった。

 もしかしてずっとこのままなの?何それ地獄じゃん。

 あっ、まさかここって地獄?嫌だよー誰か助けてーオシッコ漏らしちゃう。

『くくくっ。死んでも喧しい奴だな』

 突然、何者かの声が聞こえた。

 聞こえたと言うより、脳内に響いたの方が表現的に正しい。

 え?誰?もしかしてオバケ?やめてよー俺オバケとか信じないタイプなのに。

『やっぱお前は面白いな。連れて来て正解だった』

 何言ってんの?連れて来た?

 声の主の意味深な発言に戸惑うも、声はそんな俺にお構い無しに語り続ける。

『トウヤ、お前は死んだんだ。そこは分かってるよな?』

 俺ってば鳥頭だから三歩歩いたら忘れるんだよね。

 多分三秒後には死んだ事も忘れてると思うよ?

『本来ならお前の魂は輪廻に飲み込まれ消えるところだったが、森羅万象の理を操作出来る俺が──』

 あー待った待った。もっと簡単に説明してくんね?死んですぐの頭じゃ理解すんの難しいから。

『……成仏する前に俺がお前の魂を引き抜いてやったんだ』

 簡単に説明してくれてありがとう。

 そりゃどうもって言いたいけど、ありがた迷惑って言葉知ってる?

『今からお前をとある世界に生き返らせてやる。転生って奴だ』

 ちょっとー?急に端折りすぎてませんか?

 一方通行な話してると友達無くすよ?てか友達いるの?

『友は作らん。無意味な存在だからな』

 あ、これ強がってる奴の台詞だ。

 勝手に心の中を読む奴が悪いんだと思っていると突然視界が明るくなり、真っ白な空間が現れる。

「うおっ、眩し!あれ?喋れる?」

 体の感覚もあるし投獄される前の服装に戻っていた。

 これがファンタジーってやつか、すごい。

『これからお前が行く世界は地球とは全くの別世界。科学では無く魔法が普及している世界だ』

「魔法ね……ふーん」

 未だに姿を見せない声の主にいまいちピンと来ないワードを言われて、俺は信じようとはしなかった。

 そりゃそうだ。漫画やアニメの世界にいきなり放り投げられたような展開なのだ、すぐに受け入れる訳が無い。

「なんで俺なんだ?俺以外の奴でも良かっただろ?」

『お前を選んだ理由は、退屈しなさそうだったからだ』

「え?それだけ?そんな理由で俺みたいな犯罪者選んじゃダメだろ?」

『魔王を倒した勇者や世界を救った英雄なぞつまらん。己の欲に塗れた蛮勇を選んだ方が見ていて飽きんからな』

「そんな……蛮勇だなんて……」

『褒め言葉じゃないからな?』

 確かに死ぬ前は悪事に手を染めていた富豪の財産しか狙っていなかったが、蛮勇とまで言われる程の事はしていない。

 他者に言われると、妙に照れてしまう。

『俺に気に入られた餞別だ、好きなスキルをくれてやる。選ぶと良い』

 と言われた直後、目の前にズラっと文字が表示される。

 1つ選択するとスキル名と効果が表示されたが、無数とも言える量から好きな数選べとなると時間がかかり面倒。

「んー……適当に見繕ってくれない?」

『それで良いのか?人間ってのは選び放題と聞けば喜ぶと聞いていたが?』

「確かにこんだけの量があれば喜んで選ぶ奴はいる。だけど全員じゃない。少なくとも俺はそんなに欲深い訳じゃないんだよ。それにゲームとかしてこなかったからこんなの見せられても訳が分からないんだ。だから頼む」

『……ふっ。本当に変わってるな、お前』

「今鼻で笑ったな?俺意外と根に持つタイプだぞ?」

 文字達が一斉に消え、残った4つのスキルが中央に集まる。

 選ばれたスキルは『鑑定』『隠蔽』『空間収納』『創造』

 前半のスキルは大まかに理解は出来るが、後半が理解出来ない。

 各スキルの説明を見ようとすると、俺の足元が光り輝き、足から徐々に消え始めた。

「おいおいおい!?なんか消えているんですが!?」

『騒ぐな。転生を始めたんだよ』

「さらっと始めるのやめてくれません?心の準備ってものがですね?」

 気が付けば下半身はすでに消えており、物は無いが感覚はある不可思議な現象を体感しながら、これが最後であろうと思い、問いかける。

「今更だけど、あんた何者なの?」

『あぁ、言ってなかったな。俺は──』

 顎まで消えかかっている時、声の主は今まで見せなかった姿を見せた。

 人型をしているが皮膚は白く、顔には口しかない異形の姿を。

『俺は邪神。邪な神だ。お前にはお誂え向きだろ?』

 なるほど、通りで嫌な気がしない訳だ。

 そして俺は静かに転生された。

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