【Prolog:記録】
その日、世界に激震が走る記事が新聞に取り上げられた。
見出しには『世紀の大泥棒、遂に逮捕!!』と大々的に載っており、新聞のみならずニュース、ラジオと言った様々なメディアが彼の逮捕劇を武勇伝のように語っていた。
彼を収容しているアメリカの刑務所にマスコミが殺到している中、とある部屋にて取り調べが行われていた。
この記録は、その一部である。
【証拠記録映像その①】
あなたの名前は?
『なになに?最近のポリスはビデオログとか残すの?俺の名前は世紀の怪盗ミラージュ!どんなお宝もお金も林檎を捥ぐように簡単に盗む大泥棒さっ☆…………そんなシラケた目で睨むなよ。トウヤ・イシバシです』
【証拠記録映像その②】
いままで盗んだ物を言いなさい。
『多すぎて覚えてないよー。あっ、最近ので良い?超有名な〇〇社の大型金庫の中身かなー。お金だけじゃなくて危ない薬とかも沢山入ってたよ。勿論その辺に捨てたけどね。今頃ホームレスが楽しんでるんじゃない?』
【証拠記録映像その③】
どうして盗みを働くのか?
『そんな事言われてもなー。おたくらが息を吸って吐くみたいなもんさ。それが当たり前になってるんだよ。ところで後ろにいる姉ちゃん、セクシーな体してるね。今晩俺の腰の上でダンスしない?』
【証拠記録映像その④】
被害者達に謝罪の言葉はありますか?
『そんな事よりそこの凶暴な姉ちゃん日本語分かるんだ。おかげで怪我しちゃったじゃん。15針くらいは縫うレベルよ?』
【証拠記録映像その⑤】
その口達者はどうにかならないのか?
『これに関してはどうする事もできないね。文句を言うなら俺を口から取り出した助産師に言ってよ』
【証拠記録映像その⑥】
あなたの犯行仲間はいますか?
『俺の携帯見たんでしょ?友人や恋人、実の両親の連絡先すら入ってないのによくそんな事聞けるよね?泣いて良い?普通に悲しいぞ?』
【証拠記録映像その⑦】
最後に言い残す言葉はありますか?
『生まれ変わるとしたら鳥が良いな。あいつら自由に空を飛べるし、何したって許される存在だからな。もう人は懲り懲りだよ』
───以上、トウヤ・イシバシの処刑前の記録映像。