2話
もう日没の時間を過ぎただろう。あの「萌えごわす」男が言った通り、新幹線は全く動く気配を見せない。乗客も最初は車内が暑いだのスマートフォンを使うことができないだの言っていたが、状況を理解したのか今は車内は比較的落ち着いてきている。
そうこうしているうちにごわす男が帰ってきた。男は非常食の乾パンの入った缶とと手回しライトを何十個も荷台に乗せて運んできている。
「あの、手伝いましょうか?」
僕はごわす男に聞く。
「ありがたいでごわす。駅の改札のところにまだ届けられてない物資があるからはこんでくれるとうれしいでごわす。」
「はい、分かりました。手伝わせてもらいます。ところであなたのお名前を教えていただけませんか?」
「さいごうたかもりでごわす。」
んん!!!??? あなたはもしかしてモノマネ芸人なのか?それとも同姓同名の超そっくりさんか?それとも現代にタイムワープしてきた本人か?それとも………
「あの?よく聞き取れませんでしたのでもう一回お名前を言ってくださいませんか?」
「斎藤道三の斎藤にT〇 REVOLU〇IONの西〇貴教さんの貴教でごわす。わかったでごわすか?」
斎藤貴教さんだった。
「はい………。分かりました。」
僕はそう答えて改札に物資を取りに行くことにした。
駅の改札につくとそこには斎藤が言った通り大量の物資と10台ほどの荷台があった。10両編成の新幹線が満員だったということもありスーパーの倉庫にでも行かない限り見られない量の乾パンやこれをすべて使えば小さいプールくらい満タンになりそうな量の500mlのペットボトル水がある。
とりあえずまずは荷台に入る量だけ持っていくとするか。
荷台に20個くらいの乾パンの缶と10本くらいの水を積んで階段を上がる。当然ながらエレベーターやエスカレーターは止まっているから階段になるのだが、物資を入れて重くなった荷台を運びながら階段の段差を上がるのは1段上がるだけで一苦労だ。
「お、本当に手伝ってくれるとは有り難いでごわす。」
斎藤が空になった荷台をもって階段を下りながら話しかけてくる。その時、
「おっとととと」
危うく荷台の車輪が階段の段差から外れそうになった。とりあえずは自分の作業に集中しないとだめだな。
半分くらい階段を上がったところだろうか やっと少しコツがつかめてきた気がしてきていたところだった。あと2分くらいでホームにつけるだろうか。そう考えていたその時、
「危ないでごわすよ」
下の方から斎藤が話しかけてきた。危ないとはなんだろう?そう思って斎藤の方向を見たら今の僕にとっては仰天的な光景があった。
僕の荷台に乗っている物資の量の3倍はあろうかという量の物資を荷台に詰めた斎藤がいた。お前…… 間違いなくトラックだったら過積載の量だぞ。そのうち荷台が真っ二つに割れるんじゃないか?
ただそれだけだと危ないとわざわざ言う理由にはならないんじゃないか。そう思っていると、
「シュウウゥゥゥゥゥ~」
斎藤が蒸気機関車が動き出すかのように息を吐いた。そして次に目にした光景はさっき物資の量で驚いていたのが恥ずかしくなるような光景だった。
「POWERRRRRRRRRRRRRR!!!!!!!」
その掛け声?とともに下手したら僕が階段を全速力で駆け上がるよりも速く荷台をもって駆け上がっていったのだ。あまりの光景に私は目を丸くすることしかできなかった。
なんであんな爆速で上がれるんだよ。あれは危ないどころじゃないだろ。あんな暴走機関車1センチでも当たったら即骨折即病院だぞ。
僕の身体と、それよりも心にどっと疲れが来た気がした。
よく緊急事態になると人の本性が見えるというが、それにしても斎藤貴教………こいつはいろいろな意味で恐ろしい男だ。