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プロローグ
人が1日1人通るかどうかの砂利道の中で
僕は、一枚のb5サイズの紙切れを見つけた
今にもボロボロに破けてもおかしくなさそうな紙切れだ
すでに端っこには亀裂が入っている
破かないようにそっと拾い上げてみると
茶色に変色した紙切れには今にも消えそうな筆圧で文が書かれていた
・灯台下暗し
意味:自分にとって大切なものほど近くにあって見えにくい
追記:でも一番見えないものは
自分なのかもしれない
………
誰かの落とした単語帳だろうか
何回か字を眺めたのち、もう一度道端に紙切れを置く
その10秒後
「びゅぅぅぅっ」っと風の群れが砂利道を横切り
紙切れは粉々になりながら夏の空に消えていった