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消失したもの  作者: miya
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想い

20××年7月。

都会から程遠い、田舎の町。そのずーっと奥のほうにある山、恩念山おんねんやま。その山にはただ1つ「美光志みこうしの館」というものがあるだけ。

この館で起こった数百年前の残酷な事件。その事件が再び起こる。


僕は、、、あの時大事なものを失った。


時は、1ヶ月前へと巻き戻る。

僕、佐々木慧(ささきけい)は、幼馴染のゆいせいに夏休みに何か記憶に残る思い出を作らないかと提案した。

そしたら、

「じゃあ、肝試ししない?」

と唯がいってきた。

「どこでやるんだよ。」

と聖がきく。

「この前、友達と恩念山のうわさについて話したの。いろいろなうわさ聞いてたら、行ってみたくなったから、行こうよ!」

「唯って、幽霊とかもう怖くないの?昔はお化け屋敷でさえだめだったじゃん。」

小さい頃、お化け屋敷に入って唯は号泣してたのを覚えていた僕は、心配になり聞いてみた。

「ちょっと慧、いつの話してんのよ。あれから、10年以上経ってるのよ。」

唯は、呆れた顔をしていた。

「唯、慧は唯のことが心配なんだよ。な、慧。」

「そういうことわけじゃないけど。」

僕は、聖に僕の気持ちを当てられ、戸惑いその気持ちを隠した。

「とにかく、私は大丈夫だから行こうよ。」

唯は、笑顔で言った。

「おれは、心霊系信じてないから、別に行ってもかまわない。」

聖まで、行く感じになってしまった。

「二人とも、行く感じなんだ、、、。」

「なに、もしかして、私のことを心配するふりして、実は、自分が怖いから行きたくないんじゃないの。」

「そ、そんなんじゃないよ。いいよ、行くよ。」

この時、俺が行きたくなかった理由は、怖いと思っていないのに、なぜか体に不思議な寒気を感じたからだ。


今考えると、それは僕の体から僕に向けての忠告だったのかもしれない。


夏休み1週間前になり、唯は、「クラスで行きたい」と言いだし、僕たちは、クラスの肝試しとして恩念山に行こうと提案した。参加、不参加の人数を取ろうと「参加したい人手を挙げて」というとクラス全員が手を挙げた。僕は、かなり驚いた。恩念山のうわさはこの町の誰もが知っていて、知っているうわさは異なるが、僕の知っている限り、恩念山のうわさにいいうわさなんてない。クラスには、僕たちを含めないで32人いるのに、1人も怖いと思い行かない人がいないとは、、、そんなことがあるだろうか。

「みんな、行きたいんだ~、じゃあ、みんなで行って楽しもう!」

唯が楽しそうに話を進めていく。

「じゃあ、、、」

僕は、みんなが行きたいということに驚きすぎて、このあとの日時など決定するところまでの話し合いをほとんど覚えていなかった。


決まったこと

日時・・・7月30日

集合場所・・・恩念山南入り口

日程・・・午後5時45分集合→出席確認・グループ順番決め→午後6時1・2グループスタート(5分

経過したら次のグループスタート)→各グループ、ゴール到着後人数確認・ゴール記録にサイン後解散

ルート・・・南入り口→頂上「美公志の館」→北入り口

グループ・・・35人を4・4・4・4・4・4・4・4・3に分ける。南入り口を入るとすぐに2つに分かれているので2つのグループ同時にスタート。3人グループは幹事の3人で、ラストスタート。

※注意事項・・・懐中電灯は各グループ1本。夜の山は危ないので走らず、慎重に行く。もし、前のグループに追いついたら、追い越しはしてもいいが、背後から脅かすことは極力やめよう。怪我などの緊急事態が起きた時は、すぐさま幹事に電話をかける。携帯の電源を入れといていいのは、各グループ一人のみ。ゴール時には、幹事に携帯で報告をする。


月日はあっという間に恩念山へ行く日になった。

クラスでの肝試しの最終確認のため、幹事である僕たち三人は、2時に集まり、恩念山に向かった。

途中地点である、美光志の館にちょっとした商品としてお菓子を置き、これを肝試しの特典とした。

昼間なのに、意外と暗い美光志の館までの道。僕は、夜になって本当にここを通るのかと恐怖を感じた。

僕が怖がっているのも気づかないでさっさっと歩く2人、、、。

準備が終わり、僕たちは恩念山に1番近いファミリーレストランで時間をつぶした。

「今から、わくわくするね。」

唯は、すごく楽しそうに言った。

「おれも楽しみ。慧、大丈夫か?」

「う、、、うん。大丈夫。」

「もしかして、今行ってきて、夜行くの怖くなっちゃった?」

2人は感じなかったのだろうか、あの山の不気味な気配を、、、。

「いや、別に、、、。」

僕は言葉を濁した。

「男が女の私より怖がらないでよ。」

「僕は、、、いや、なんでもない。それより、メニュー決まった?」

「うん。聖も決まった?」

「うん。」

僕らは、それからいつもと同じく、何気ない話をして集合時間が迫ってきた。

「そろそろ、行こうか。」

「そうだね。集合時間前に来る人も多いからね。」

僕たちは、店を出て、恩念山へ向かった。


「来てる来てる。」

「みんな、どれだけ楽しみにいてるんだよ。まだ、集合時間じゃないのに全員いるんじゃないか。」

みんな、かなり楽しみにしているの様子だった。それは、2人も同じだ。

「まぁ、一応集合時間になってから、点呼とりますか。」

聖は、本当にしっかりしているやつだなと思った。


集合時間がくると、僕たちは点呼を取り、チーム分けのくじをみんなに引いてもらい、肝試しをスタートさせた。


スタートから20分後、僕たちのスタート時刻になった。

「やっと20分たったね。」

「そうだね、、、。」

「なんだよ。慧、本当に大丈夫か?」

僕は昼よりも強く恐怖を感じ、たくさんの汗をかいていた。

「なんか、、、不気味な感じがする。」

「不気味?お前、霊感あるタイプだっけ?」

「ないと思う、、、けど、、、」

「やめてよ。入る前から怖がらせようとしてる?」

「怖がらせようとしてるんじゃなくて、本当になにか嫌な予感がするんだ。」

「嫌な予感かぁ、、、。まぁ、とりあえず行ってみればいいんじゃね。みんなからなにも連絡ないから、緊急事態は起きてないみたいだけど、もうゴールしていてもおかしくない最初のグループから報告がきてないことはおれも少し気になる。だから、とりあえず行ってみようぜ。」

確かに。この恩念山はどんなに怯えて遅く歩いたとしても20分もかからず抜けられる小さな山だ。なのに誰からもゴール報告がない。報告することをただ忘れているだけならいいなと僕は思った。

「ただ忘れてるだけでしょ。まぁ、行こう。」

唯は、本当に忘れたと思っている様子だった。

「うん。」

僕は、恐怖はあるがそんなことよりもみんなが心配になり行く決意を決めた。


少し歩くと、一気に町の明かりがなくなり、三人の頼りは1本の懐中電灯のみとなった。

「暗いね。今日って新月だっけ?」

「今日は、満月だったと思うけど、きっと木々が月の光さえも隠しているだよ。」

2人は、僕が感じているような不気味な気配でなく、暗さに怖さを感じているのだろうか、、、。

「時間的にもう少しで美公志の館に着くころね。」

「そうだな、昼間はそのぐらいで着いたからな。」

僕たちは、二つあるルートのうち、本番で行かないルートを昼間に下見したため、今歩いているルートは初めて通る道だ。

「慧、大丈夫?さっきから何も喋ってないけど。」

結が僕を心配して聞いてくれた。 僕は、、、大丈夫と言いたかった。結に心配させたくなくて、言いたかった。しかし、僕の声は、、、もう発することができなっかった、、、。

「慧?」

「慧、本当に大丈夫かよ?」

2人は、僕のほうに懐中電灯をむけ、心配してくれた。声が出せないと理解した僕は、親指を立て大丈夫ということを伝えようとした。

2人は、僕が声を発さないことに、違和感を感じながら、僕の手の意味はしっかりと理解してくれたようだった。

「もう少しだ。あそこじゃない?」

唯が、館を見つけた。


不思議だった。


館に光が灯っていた。


「どうなってんの?ここって、昼間無人だったよね。」

唯が本当に驚いていた。

「マジかよ。本当にどうなってんだよ。みんなが、あそこにいるのかな。」

聖までもがこの異様な館に動揺していた。

声を発せれない僕は2人の驚きに頷くように首を縦に動かすしかなかった。

「みんながあそこにいるかもしれないから、とりあえず館の中に入ってみよう」

唯は、震えた声でそう言った。


館に入ると館の中は暗かった。


どういうことだ。


外から見たら、光が灯っているように見えるのに、中に入ると真っ暗。


その時、僕は何かを踏んだ。


「きゃああああああああああああああ」

「唯どうした?」

懐中電灯を持っている結は、僕と聖より早く見てしまったのだ、、、僕らの足元にある何かを、、、。

唯が落とした懐中電灯を聖が拾い、僕らの足元の周りを見てみると、、、


血だらけの、、、床と、、、壁、、、そして、、、


ひ、、、と、、、


「うぁあ、なんだこれ。」

「、、、、、、」

僕は、、、自分の目を疑いたかった。

しかし、僕らの目の前にあるのは、正真正銘、僕らより先にスタートしたクラスメイトの死体だった、、、。


パチッ


いきなり明かりがついた。

「いやぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

「、、、マジかよ。」

明かりがついたことにより、部屋中に転がるみんなの死体が明らかになった。

それは、、、本当にむごいものだった。

体から出た大量の血が服にしみ込んでいたり、床や壁に飛び散っている。また、大量の血のにおいは僕に吐き気を感じせるものだった。


バタンッ


いきなりドアが閉まった。


聖が、必死でドアを開けようとするが、

「開かない。」

「嘘でしょ。閉じ込められた、、、。嫌だ、嫌だ、嫌だ。」

「落ちつけ、唯。」

あぁ、落ちつくことなんて無理だ。高校3年といっても、まだまだ子供だ。聖が、落ち着いていることは本当にすごいと思った。


「だいぶ遅かったですね。」

誰かの声がした。

声がするほうを振り向くと、そこには、、、知らない人ではなく、僕たちが夏休みに入る前まで毎日のように会っていた人、、、それは桜木さくらぎ先生という僕たちの担任だ。

「なんで、先生がここにいるんですか?」

無論、肝試しのことは、先生を誘うどころか、やることさえも伝えていなかった。

「君たちが、計画を立てて、肝試しを開催することは知っていた。ここを使うということも。」

「なんで、知っているんですか?」

「そろそろ、演技にも飽きたんじゃないの?」

え、、、演技?

「そうね。」

唯がそう言った。

「唯?」

唯?

「うふふ、気づいていなかったの?」

「唯、何言ってんだよ。」

落ちついていた聖が、動揺し始める。

「聖、お前はもういらない。消えて。」

グサッ

、、、、、、

「ゆ、、、い、、、」

倒れる聖。

何が起きたのか、僕には理解ができなっかった。いや、理解したくなかった。

唯が聖をナイフで刺したということを、、、。

「さぁ、唯ちゃん。そろそろ、本題に入ろう。」

「うん。その前に、慧にあれを渡して。」

「そうだった。ごめん、ごめん。忘れてた。」

先生は、僕のほうへ近ずいてきた。そして、僕に透明な液体が入った瓶を渡してきた。

「これを飲め。そうすれば、声が出せる。」

なんで、僕の声が出ないことを知っていると思った。

「飲んでくれないと、話が進まないんだが」

僕は、怪しいがこの液体を飲む決意をした。


ゴクッゴクッ


驚いた。何かわかんないけど、喋れるような気がした。そして、、、

「唯と先生が、僕の声をださせなくしたんですか?」

「慧、君は私の計画を阻止する人間になりそうだった。だから、私はあなたに薬を飲ませた。森に入る前に喋れなくなったら、君は帰るようみんなから言われてしまう。だから、薬をいい具合に調合し、ちょうど森に入るときに喋れなくさせようとした。調合は、大成功。いいタイミングで君は喋れなくなった。」

「なんで、そこまでして、僕をここまで来させたの?」

「慧、ここのうわさで一番広まっているうわさが何か知ってるわよね?」

「何年前かの殺人事件のこと?」

数百年前ここで残酷な殺人事件があったらしい。僕は、祖母から聞かされたことがある。一番大きなうわさでもあるから、この町で知らない人間はいないと思う。

「そう。そのこと。」


昔の恩念山と言えば、誰もが一度は行ってみたいと思うぐらい綺麗な山だった。

美公志の館も貴族の別荘のような綺麗な建物だった。

しかし、今から数百年前、この山と館はみんなのものからある貴族のものに変ってしまった。

それから、恩念山の運命も変わってしまう。

山を買ったある貴族とは、加賀美(かがみ)家という天皇一族の端くれだ。どんなに端くれでも、天皇一族なので庶民からすれば相当お金持ちの貴族だった。

ある日、加賀美家は美光志の館でパーティーを行っていた。そこには、貴族のパーティーには珍しく、町の住民、言ってしまえば庶民の人たちも招待されていた。パーティーなんて豪華なものに招待さえた喜びとおいしい食べ物に浮かれていた住民は多かった。そして、事件は起きた。

加賀美家の当主、泰治(たいじ)はパーティーの最後のスピーチの時こう言ったのだ。

「今日は、たくさんの方々のご参加ありがとうございます。さぁ、みなさん運命の時です。」

この言葉の本当の意味を理解した者は、きっと誰もいなかっただろう。

その後、住民も含むパーティーの参加者全員が泰治の使用人に襲われた。その結果、生き残ったのは、泰治の妻であった貴子夫人(たかこふじん)だけだった。しかし、後に貴子夫人も行方不明となってしまった。

この出来事から、恩念山に近づく者はいなくなり、山はうわさだらけの不気味な山へと変わってしまったのだ。


「僕が知っているのは、このぐらい。」

祖母から聞いた内容を全て思い出せた気がした。しかし、こんな残酷な出来事が本当にあったなんて僕は信じていなかった。

「結構知っているんだね。」

唯は僕の目をしっかりと見て言った。

「そのお話には、続きがあるんだよ。」

先生は、僕に興味を持たせるような口調だった。

「もう、黙って。これは、私と慧の話なの。ありがとう。協力してくれて。」

そう言いながら、先生に近付いて行った唯は、聖と同じように、先生をナイフで刺した。

先生は倒れこみ、僕と唯の2人っきりになった。

「唯、僕の知る唯は人を殺せる人間じゃない。一体何があったの?」

「、、、、、、」

唯は、何も答えなかった。僕は、この状況になった原因を知るため唯の話したいことを聞こうと決意した。

「いいよ、話したくないんなら。恩念山のうわさの続き教えてくれる?」

「ごめん、慧。」

唯の悲しそうな表情をした。

「私の本題に戻らせてもらうね。私の祖先は、貴子夫人なの。」

そう切り出した後、唯はゆっくりと話し始めた。


貴子夫人は事件が起こる前日、加賀美泰治から1つの封筒を預かり、こう言われたそうだ。

「明日、パーティには出ないでこの封筒だけをもって裏口からこの町から出てほしい。」

彼女は、自分の夫の真剣なまなざしに「はい。」と頷くことしかできなかった。

朝になり、彼女は夫にパーティが始まる前には出ていくと伝えた。しかし、それは彼女が最愛の夫の死を覚悟し、夫に安心してもらうための嘘だ。彼女はパーティが始まる前に出ていくそぶりを見せ、事件の全てを隠れ見た。もちろん、夫の最後の姿までも。そして夫の願いどおり彼女は、涙を流しながら必死に町を出た。できるだけ遠く、自分の素性がばれないところを目指して歩き続けた。何日も歩き続けた彼女はとある店の前で倒れてしまい、その店の主人に助けてもらい、2人は恋に落ちた。子どもも生まれ、穏やかな生活をしていた。しかし、彼女にとって泰治は忘れられない人であった。彼女はずっと想っていた。

夫の死後、その気持ちはさらに強くなった。そして、彼女は泰治が起こした事件の真相が書かれた手紙を自分の子供に渡し、後世に伝えてもらおうと考えた。泰治の手紙はこうだ。


貴子へ

君よりも先に旅立つことを許してほしい。この手紙は私の最後の希望だ。

ここに私が起こす出来事の真相を書きとめようと思う。

今、この国では大きな問題がある。それは、人口増大に伴う食糧不足だ。恩念山のあるこの地域は土が悪く、この国で1番食料の自給が悪い。しかし、この地域はなぜか大量に食料があることにお気づきなさった天皇である幸樹様は私に任務を与えてくださった。そうして私達はこの町にやってきた。私はすぐにこの町に都から食料を高値で買い、この町の住人に渡している貴族がいることに気づいた。私はその行為は彼らがこの町を愛しているからだということを踏まえて報告をした。しかし、幸樹様からのご返答は「住人、貴族、この町にいる全員は我が国の弊害にしかならない。すぐに処分せよ。」とのことだった。数日後、幸樹様にご命令された暗殺部隊の部下が到着し、すぐさまパーティでの計画をたてられた。人を殺さず、解決することを願っていた私に幸樹様の部下は「あなたが心をお決めにならないとこの計画はうまくいきません。それにこの計画が失敗したら、奥様が危険な目にあわれますよ。」と言ったのだ。その時点で私は彼らが天皇家の厄介者である私と貴子もパーティで殺そうとしていることに気づいていた。私は貴子だけは巻き込みたくなかった。貴子を逃がすためには計画を実行し、貴子への監視の隙を作るしかないと思った。

もし、この手紙を本当に貴子が読んでいるなら頼みがある。計画を容認し、最終的に実行させたのは確かに私だ。しかし、その裏には私には到底逆らうことのできない存在がいたことを後世へ伝えてほしい。もうこんな残酷な計画が起きないように。


最後まで君を頼ってしまう夫ですまない。

                                          泰治


「ひどい。」

僕は、率直にそう思った。

「ここからが、本題。慧、自分が特別養子縁組で、今の家にいることは知っているよね。」

「あぁ、知っている。唯は僕に復讐をしようと考えているってことだろう?」

「、、、、、、」

唯はなぜか悲しそうな表情をして黙ってしまった。だから、僕は続けて話しかけた。

「僕の祖先が幸樹様だから。でも、僕は本当に恩念山の事件について深くは知らなかった。」

「嘘をつくな。祖先の存在まで知っておきながらそんなこと信じれないよ。」

唯は僕を方をしっかりと見て言った。そしてこう続けた。

「慧、ごめんね。慧には関係ない祖先の話なのは分かっている。だけど、私の祖先が一生懸命さがしても見つからなかった幸樹様の血筋を私は見つけることができた。私は復讐をしなければならない。けど、、、、、、慧のこと大好きだから、、、、、、。」

唯はなにか心が苦しいような表情を浮かべた。この時、僕の中にも嫌な予感がよぎった。

「唯、、、、、、?」

「慧のこと幼馴染以上に大好きだから、バイバイ。」

唯は、自分のおなかにナイフを刺した。

「唯!」

唯はバタンと床に倒れた。僕はすぐ駆け寄った。

「慧?」

うしろから声がした。振り向くと、聖が手で頭をおさえながら立っていた。

意味がわからない。なんで、聖は死んだんじゃないのと思った。しかし、そんなことよりも唯の助ける方が先だと思い、聖に叫んだ。

「聖、救急車よんで!」

「え!?」

聖は唯から流れる血を見て動揺していた。やばい、出血が多いと思い聖をせかした。

「聖!はやく救急車よんで!!」

「う、、、、、、ん。分かった。」

そのあと、唯は病院に運ばれたが、あまりにも出血が多く亡くなった。


救急車の後、警察にも通報した。

驚いたことに、死んでいたと思っていたみんなも先生も生きていた。

唯の協力者であった先生が強力な麻酔で眠らせ、血のりを振りまいていただけだった。

壁も二重に設置し、外から見られないように、また明かりが灯っているように見せることで不気味だと思い関係のないクラスメイトが帰るように仕向けようとしたらしい。しかし、明かりが灯っていることでクラスメイト全員が怖がらずそのまま入って来て麻酔を打たれたのだ。

先生はオカルトが好きで恩念山について調べていたところを唯に見られ真相を知り、協力をしたそうだ。


唯の死から三カ月がたった。

先生は、辞職し、僕たちは唯の起こした事件を忘れるぐらい受験勉強追われている。

聖は、唯を死んだショックのあまり、ひきこもりになってしまった。


僕は、忙しい勉強の合間を縫って毎日恩念山に行っている。

警察にあの事件が起こった経緯は僕にあると祖先の話も交えながら話をしたが、なかなか信じてもらえず世間には女子高校生が起こした動機が不明の事件となっている。しかし、紛れもなく事件の発端は僕であるので僕は毎日唯に謝りに行っている。


それと、、、、、、


唯が天国で笑顔でいることを信じてこう言う。


「唯、肝試しいつかしようね。」

この小説は慧の日記です。

しかし、ただ事件の真相を慧が書いているだけではありません。

唯の想い、また最後の言葉に隠された慧の想いを感じてもらえたら嬉しいです。

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