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聖女様は撲殺がお得意のようです  作者: 來進
一章 マリー成長編
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1. 転生からの

(はっ!!)


・・・気が付くと、そこは屋敷の中だった。


見覚えのない場所に辺りを見渡す。

佳澄がいた部屋には、如何にも高そうな置物や豪華な装飾の施された家具。

そして、屋根付きのふかふかのベッド。

があった。


(これは間違いなく...)


「異世界転生ってヤツね!!」


ビシィ!とキメ台詞と共にしっかりとポーズを決めた佳澄は目の前の鏡に映る自分の姿を見る。


「ほうほうほう...ふんふんふん...これは・・・」


「美人だねぇ」


かの有名な女優のような造形のように整った輪郭。つぶらで大きな瞳。手入れがされているのかサラサラで白い髪。あ、髪飾りもいい。

そして、、、


「何といってもこのプニプニ触感の若い肌!!なんだこれ!?ゼリーなのか!?餅なのか!?弾力がすごくて柔らかくてプニッとしていて、それでもって・・・」


若返り故の現象。

今の彼女を端から見れば、貴族に生まれた可愛げのある少女だ。

子供故にクリっとした瞳にプニッとした肌の感触は、大人になった彼女には到底味わえないものであったのだ。

子供のころに味わっておけば・・・っ。何回後悔したことか。


「それにしても、ここってどこだろう?」


鏡の前でドレスをひらひらさせて自身の可愛さに酔いしれながら、ふと今の自分の記憶を探る。


(ん~思い出せない。前世のことを人格がすっぽり入ったように思い出したせいか・・・)


前世の記憶を取り戻した彼女は、まだ前の世界で死んでからここに転生していることしか知らず、全くといっていいほど今の自分を知らない。


(ん~どうしたものかな~。私の名前が佳澄(かすみ)っていうことしか・・・)


思い出そうとしても真っ新(まっさら)で、前世のことを思い出す前の自分の記憶をひねり出そうとするが...一向に思い出せない。


「あれ?でも私の名前はマリーってことは・・・?うん?」


「そう...確か、私の家は代々続く由緒正しき名家・フォースト家に生まれた次女マリーでもって。今は確か学園に通うまで貴族として基礎を身に着ける期間であって・・・。ん?」


「あっ思い出した。そうだよね、そう、そう・・・」


と思いふけりながら、その場で右往左往して今の自分のことを確認する。

すっかり現実を忘れ思考の世界に浸っていると、突然部屋の扉をノックする音が聞こえる。


コンコン。

(あびゃ!?)


「お嬢様。朝の食事のお時間です」


そう言って部屋に入ってきた女性は、メイド服を着ており何より無表情だった。

彼女のことはマリーが良く知っている。彼女はサフィア通称フィで親しまれるこの家のメイドだ。

元々この家に仕えていたメイドだったが、今はこうして私の身の回りのお世話をしてくれている。

まぁ、無表情ってところが怖いけど。


「うん、わかった。すぐ行くね」


「・・・・・・。」


鏡の前で今一度身を整えたマリーは、それを見て振り返ったサフィアの跡を付いていく。


小鳥の囀りが聞こえてくる。

この世界にもちゃんと小鳥がいて、動物がいるようだ。

些細なところで、この今見ている光景が幻ではないのだと安心する。


マリーはチュンチュンと小鳥が楽しく歌っている様子を耳で聴きながら、前を静かに歩くサフィアの姿を見つめ自分も短い脚を懸命に動かし前に進む。

部屋を出て長い廊下をしばらく歩いていると、急に前を歩いていたサフィアが歩みを止めた。


「お嬢様。」


「ん?なに?」


こちらへと振り返り、彼女より身長の低いマリーを見下ろす。


「いや・・・失礼しました。何でもありません」


そう言って(きびす)を返すと、サフィアはまた歩き出す。

彼女が何を言いたかったのか聞きたかったが、置いてきぼりをくらいそうだったのでそれを追うようにして私も付いていく。


シーンと静まり返った廊下に私の足音が響く。

コツコツコツと足音が響くだけで気まずい沈黙が続き、ふと思いふけろうとしたとき私は食卓のある部屋にたどり着く。


彼女が何を言いたかったのか気にはなったのだが、初めて食べる異世界の食事というものに熱中しすっかりそのことを忘れたまま食事を終えてしまった。

結局、彼女が何を言いたかったのか分らぬまま、私は朝食を済ませ部屋に戻ったのだった。

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