転生前の
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私の名前は天霧佳澄。
会社員として働く、やっと今の生活にも慣れてきた21歳若者で
グサッ
「えっ・・・?」
驚く間もなく、口から吐血し倒れ込む。
「きゃああ!!」
近くにいた女性が悲鳴を上げて遠ざかる。
それにつられ、周囲を歩いていた人間が次々と立ち止まった。
「女性が倒れてるぞ!」
「え、やばくね」
「おい...あの男、何か持って・・・」
佳澄を刺したフードを被った男は、佳澄の体から血が流しているのを確認すると人混み紛れて走り出した。
手に持っていた包丁にいち早く気付いていた男性が後を追う。
女性が多い...
こんな時まで私は、女性に囲まれているのか・・・
別に異性からモテるわけでもないのに、なぜか私の周りにはいつも女性が囲っている。
同性と仲良くなれるのは嬉しいけど・・・やっぱりイケメン王子様に抱き締められたい人生だった......
どれくらい経っただろうか。
遠くから救急車の音が近づいてくる。
誰かが通報してくれたのだろう。
腹を包丁で刺され、大量の血を流しながら倒れている佳澄は早過ぎる自分の死に涙を流す。
腹から流れ出た血が地面に血だまりをつくり、涙がその血だまりを薄めるように頬を伝り滴り落ちる。
(これからだっていうのに・・・)
(まだ、やり残したことだって...やっと仲良くなれた友達だっているのに・・・)
意識が、いつの間にかぼやっと曖昧になっている。
そんな佳澄に、到着した救急隊が呼びかける。
もう答える気力もない。
答えようとしたけど、口にたまった血が邪魔で声を発することもできない。
佳澄の意識がより朧気になっていく。
段々と痛覚や聴覚の機能も曖昧に感じ、周りの喧騒もいつの間にか聞こえなくなっていた。
混濁する意識の中、ふと何かが頭に触れる。
全身を包み込むような温かみを持った手のようなもの。
その手は私を労うかのようにそっと撫でた後、不思議と気持ち悪かった感覚もなくなりただ居心地の良さだけが佳澄を支配した。
段々と意識が薄らぐ。
体の中の内臓の大半が悲鳴を上げ苦しむ。
佳澄はカバンから溢れた右手の近くにあったものを握りしめる。
(どうせ死ぬんだったら、生まれ変わったあとの人生を願おう・・・)
握りしめていた絆創膏を片手に、この世界に嘆いた。
どうか、来世は異世界が良い・・・と。
続きます