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目に映るのは、激しい光の渦。


輝かしい、白い光。

それが幾重にも重なり、渦を巻く。


ここは一体…。

そんなことを考えていると、光はやがて勢いを失い、一筋の光が方向を指し示す。


あぁ、そうか…。

俺は、死んだんだ。


しかし、これはまさかとは思うが、異世界転生というものではなかろうか?

死後の世界に行くぐらいなら異世界転生の方がいい。

以前までは、異世界に一方的に召喚する召喚術師によく腹が立っていたものだ。

もちろん、マンガやアニメで見たときに思ったことだが…。


もしも、俺に第二の人生があるのだとしたら、それはきっと……ん!


眩しい光がやっと終わりを迎えた。


「ここは…?」


辺りを見回すと、赤い絨毯にレンガ調の壁。

天井からはシャンデリアに似た照明道具が釣り下がっている。

どこか中世ヨーロッパ風な造りに似ている気がする。


「また勇者ではなかった…。でも、もうこれ以上は無理ね。」


そんな声が聞こえたと思ったら、部屋の中から大勢の人が現れた。


「えっ…!?」


魔法か何かで見えないようにしていたのだろうか。

術者と思われる人たちの中から、屈強そうな人たちに囲まれながら姿を現したのは、女の人だった。

身なりからして、かなり位の高そうな人だ。


「初めまして。私は、この国の王女であるマリエルと申します。」


王女様か…!

これは、ひょっとして…。


「突然のことで驚いたかと思います。あなたは、私たちが…」

「召喚したんですよね!?」


食い気味に話を遮った俺に対して、王女は目を見開いて動きを止めた。

少ししてから、また話し出した。


「そ、そうですが…。こちらが驚くことになるとは…。転生したことに驚きはないのですか?」


王女は、戸惑いながら俺に聞く。


「いや、そんなに…。というかちょうど死んだとこだったので、助かりました。ありがとうございます!」


その通り。

死後の世界でなくてよかった。

異世界転生物が好きだったこともあり、この現状に落ち込むどころか興奮すらしている自分がいる。


「そうでしたか…。それならよかったです!」


王女の声の調子が少し明るくなったように感じる。

王女は俺に事情を説明してくれた。


内容をまとめると、ここはムーン帝国という国であり、勇者を召喚しようと召喚術を使ったとのこと。


しかし、勇者が召喚される確率は低く、大体は平均的な能力やスキルの人が召喚されるのだとか。


また、こうした異世界からの召喚は特殊なものであり、召喚術師はその生涯で一度だけ行使できるオーバースキルなのだ。


何回も召喚を繰り返したが、平均的な能力のものが多く、すぐに元の世界に返したという…。


最後の1人となり、みんなの願いと祈りのもと召喚されたのが俺。


そして、俺も勇者ではなかったが、平均よりも能力値が高いこととスキルが価値の高いものだと判断されて残したのだとか。まぁ、「最後の1人だったし…」とボソッと呟く声も聞こえたが。


俺は、元の世界に戻されなくてよかったと安堵のため息をついた。

もし戻されていたら、本当にあの世に行っていたと思う。

やはり気になるのは、スキルだな。

価値の高いスキルとはどんなスキルなのだろうか?


疑問の表情で王女を見ていたら、すぐに王女は頷いて話してくれた。


「あなたのスキルは、召喚術の行使!つまり、あなたの職業は召喚術師よ!!」


「やはりチート…!って、えっ!?召喚術!!?」


召喚術ってチートではないよな…。

驚いて辺りを見回すと、召喚術師がごろっといることがわかる。


「はい。召喚術です。価値が高いと言ったのは、次の勇者召喚のときに力になるという意味です!」


王女は、胸を張って話している。


いやいやいや…。

異世界からせっかく転生してきたのに、転生者が異世界から勇者を召喚する!?そんなばかな…!


終わった…。俺のチート人生の夢、ついえたり…。


「そうですか…。わかりました。一生懸命修行して召喚術をマスターします。」


俺は少し気持ちを切り替えて、王女に伝えた。


王女は嬉しそうに頷いた。


「ありがとうございます。あっ、あと、私のことは気軽にマリエルと呼んでいいですからね。ええと…」


「わかりました。マリエル様、俺の名前は亮太と言います。よろしくお願いします。」


俺は、自分の名前を伝えて頭を下げた。

これからどうなるんだろうか。

ただ、召喚術師は重宝されるようだから、いきなり野原に放り出されることはないだろう。


「もう、様はつけなくていいのよ!亮太、よろしくお願いしますね!」


マリエルの本来の性格が垣間見える。

とてもフレンドリーで、明るい性格なのだろう。


状況が状況だったため、あまりよくは見ていなかったが、改めてマリエルを見ると…


外見も本当に美しい。美しいというより、可愛らしいか?

髪は肩にかかるほどであり、さらさらの黒髪である。

顔立ちは、端正なものであり、目もはっきりとしている。

年齢は、俺と同じく20歳ぐらいに見える。


マリエルは、俺の細かいステータスを解析するために、場所を移動しようと伝えた。


マリエルとお付きの兵士の後ろを俺が歩く。

長い廊下をしばらく歩いた先に、派手な装飾が施された扉があった。


その扉の中に入ると、何人かの魔導師と思われる人たちが水晶を囲んで立っていた。


「亮太、水晶に両手を触れて。」


マリエルがそう言って、俺の手を軽く触った。


この水晶に触れれば、俺の能力がわかるのか…!

まぁ、もう勇者じゃないからあまり期待はしていないけどね。


さっと水晶に両手を触れた瞬間、水晶は白い光を放出した。

その光は一気に部屋全体を包んでいった。


「まぶしい…!!」


マリエルや周りの魔導師たちも驚き、慌てている声が響く。

数秒後、光がおさまると水晶にはヒビが入っていた。


「こんなことは初めてです。どれ……!!!!??」


魔導師の中でも一番偉そうな年老いた男の人が水晶を除き込む。


「ふむ、マリエル様。これは…とんでもないことが起きとるぞ…!」


男は驚いた表情のままマリエルに声をかけた。

マリエルも近づき、水晶を覗く。


「えっ…!?ユニークスキルが複数!!?」


驚いたマリエルが口にする。


「亮太、あなたは今までの勇者よりも素質があるかもしれない。ユニークスキルを複数所持した人は今まで現れていないの。それに、召喚術以外のユニークスキルが2つあるんだけど、どちらも未確認スキルよ!」


「まじで!!?」


俺は思わず声を上げていた。

チートでなくてもいいから、とにかく召喚術以外のスキルがあったことが嬉しい。

一体、どんなスキルなのだろう?


「スキル名は、“モンスターハウス”と“神術(融配)”てなっているけど…。」



マリエルが口にしたこれらのスキル。

実は、とんでもないスキルだった。


最後だけマリエルがアリエルになっていた…(修正済み)。

危うく、別の世界の話になるところでした。

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