4話目! 少女視点
ここで釣り?人間か?
少女が最初に思ったのはこれだった。
A級冒険者であるリーシャはこの死の森と呼ばれる、ダークフォレストに依頼を受けてきていた。
リーシャについていけるどころか足手まといにしかならない人しかおらず一人で依頼を受けることが多かった。
今回の依頼は森の入口にあると言われている月の薬草を3束持って帰る依頼だった。
奥へ行けば行くほどモンスターが強くなると言われている森の入口はA級止まりのリーシャにとってぎりぎり生きて帰れる境目だった。
一泊するのはあまりに危険で軽装で逃げることを第一とした装備で死の森へと向かう。
森の外周にたどり着いた時点ですでにB級6人で討伐できるといわれるB級モンスターのガイアゴーレムが大量にいた。
ガイアゴーレムは近づくと敵対するのでできる限り離れて進む。A級とはいえガイアゴーレム複数体は厳しいのだ。
キングパンサーやデスフロッグ、フライオクトパスとB級からA級まで当たり前のように徘徊している。
それらに見つからないようにゆっくり進むと入口につく頃には昼頃になっていた。
そこからモンスターに見つからないように月の薬草を探す。
入り口付近で見つかったのはぎりぎり依頼に届かぬ2束分ちょっとだった。
届かないと依頼料が減らされるため欲をかいて中域にまで足を進めてしまった。
そして中域手前で4束分が見つかった。追加報酬に浮かれるも辺りが暗くなりつつあることにようやく気がつく。
一泊することを想定してないため暗い森の中を帰らないとならない。
この森で準備を怠って睡眠をとることは死に直結する。
絶望を感じている中ふと何かを焼く匂いが聞こえてくる。
こんな森で香るはずもない調味料の匂いが漂う。
匂いにつられ、ついその方向に進むと湖で魚を焼いているおじさんを見つける。
こんなところで釣りして魚焼くとか正気か?そもそも人間なのか?
そして串にさして焼いている魚はたしか毒がなかったか?
そう考えていると無意識に身動ぎしてしまう。
これはおじさんに気が付かれたと思い覚悟を決めておじさんの前に出る。
「あっすみません。良い匂いがしたもので...少し分けてもらえないでしょうか?」
変なことを口走ってしまった。すると
「どうぞ?」
とだけ返してくれ焼く魚を増やしてくれた。毒の無い魚を焼き始めてくれる。
もしやこのおじさん毒だと分かってて魚食べようとしてるのだろうか?
前に毒耐性のスキルを持った冒険者が言っていたことを思い出す。
毒があるものはうまい、と
おじさんも毒耐性があるのかなと思い気にしないことにした。
途中串焼きも食べるかと聞かれたけど毒耐性を持ってないので断ることにした。
おじさんが分けてくれた魚料理はおいしかった。
しかしまだ森の中、気を抜きすぎた気もするがまだ気を抜けない。
おじさんはどうするのかと思えばテントを何もない空間から取り出す。
料理の途中でも何もないところから調味料を取り出していたが気のせいだと思っていた。
だが冒険者同士での詮索は原則禁止である。
おじさんがテントに入ろうとしてるのを見て自分もその場に横になる。
寝るのは危険だとしても横になるだけでも多少は休めるからだ。
その様子を見ておじさんが
「テント持ってきてないなら貸すぞ?」
とテントを貸してくれた。断っても遠慮するなと押し切られおじさんは木に登り寝てしまう。
困惑しつつもおじさんに感謝するがこのテント何か魔力を感じる。
隠蔽系の魔法かなと思い中に入ると中央に複雑に組み合った魔方陣が宙に浮いていた。
魔方陣と魔方陣が縦、横、ななめと接続され大きな一つの魔方陣となっていた。
こんな魔方陣をリーシャは見たことがなかった。
組み合わさる一つ一つに別の魔法が組み込まれているのは分かるが大半が読み取れない。
読み取れる魔方陣がいくつがあるが知ってる魔方陣とやや違うところがあり知ってるものよりも消費している魔力が格段と少ない。
魔方陣を読むのは得意だと自負していたリーシャは驚く。
読み取れる魔方陣には、モンスター避け、強靭化、自動回復だけだったが明らかに20個は同時に魔法が発動している。
そしてしばらく魔方陣に見とれていたがふと普通に直立していることに気が付く。
こんなテントに余裕があったかと思い上を見ると自分の身長の2倍ほどの高さがあった。
見たことのない伝説の空間拡張の魔方陣が含まれてることに遅れながら気が付く。
幅も相当あり10人くらい横に寝られそうですらある。
おじさんも中で寝れそうだが気を使ってくれたんだなと思う。
奇跡的な出会いだったと思いつつ溜まった疲労を回復するためにリーシャは眠った。
朝おじさんに感謝をのべ名前だけでも聞かせてもらおうと思ったがおじさんは教えてくれなかった。
おじさんは選別だと言いお土産を持たせてくれた。
中域以降にあるはずの月光草
奥地にあるんじゃないかと推測されている幻想茸
中域に生息するクリスタルタートルの甲羅の3種類である
月光草は月の薬草の上位素材と呼ばれていて作り方は見つかってないがエリクサーの素材ともいわれる。
幻想茸は様々な上級治療薬の素材となる
クリスタルタートルは20センチほどの硬すぎるモンスターの甲羅である
こんなにもらえないと返そうとしたときにはおじさんはもうその場にはいなかった。
感謝しつつ気を引き締め街に向かう。道中奇跡的にモンスターの姿を一切見かけず無事帰宅した。
依頼は成功しお土産のクリスタルタートルの甲羅以外を渡す。
それを見た職員がギルドマスターを呼びギルドマスターと対面する。
S級に進級するかどうかと聞かれ自分の成果じゃないからと断る
その後おじさんについての情報を探ってみるがSS級にもS級にもA級にも見つからなかった。
ギルドマスターに尋ねるも心当たりがないという。B級なら似た容姿はいたがと言われるがB級ではクリスタルタートルの甲羅は手に入らない。
別人だと判断し見つける当てがなくなり見つけるのを断念する。
こうしてリーシャの不思議な体験は幕を閉じる