シスコンの兄が三匹の子豚をする話
兄 エロい本を隠したがってバレた。エコロジスト
妹 地味に兄の脳内を読んでいたりする。兄以外は読めない
「兄、諦めるんだ。どう弁明してもこれは無い」
「いや、待ってくれ!これには深い理由があるんだ!!」
いつも以上に目が凍っている妹が片手に持つのは、世間で言うR-18な本である。決して中学生の女子が持っていて良いものでは無い物だ。いや、なんかこれはこれで需要はありそうだけど。
「…理由を話して。黙秘権はない」
「最初は自室の本棚にあったんだ」
今妹が持つ本は俺の私有物ではない。俺の友人である野球部のものである。俺はあいつが部屋に女性をあげるからと言って、本を押し付けられただけの被害者だったりする。
睡眠欲、食欲と並んで三大欲求とされる性欲。これらは生物に備え付けられた、大自然の摂理であって然るべきだ。なのに世間は性を規制し、我々もその世間の目を気にして細々とやるしかない(当然の対応)。自然の摂理に逆らうのであれば、人間が地球を壊しているとは否定できないではないか(責任転嫁)。
地球を大切にして行くエコロジストとして、性欲を肯定するしかなかった。つまりは断れなかったのだ。
「…少し後悔はしてる」
「声が小さい聞き取れない。もう一度」
「いやいやいや、少し待ってくれ独り言だ」
さて、ここで大切なのは俺が良くても世間が許してくれないという事だ。この目の前にある環境保全本も人の目に触れてはいけない。断じてやましい事をしているのでは無く、神に祈る隠れキリシタン的な立場だ。つまり隠さなければならない。ということで無難に本棚の二列目にカバーを変えて仕舞っていた。
「でも、気づいてしまったんだ。それではお前が本棚から手にとって読んでしまう可能性に!!」
「兄が早く起きたら私も暇して本を借りる事無くなる筈」
「兄的に休日に早く起きるとか無理」
さっき説明したように睡眠欲もまた三大欲求。エコロジストだから逆らえない。なんて模範的な環境保全者なんだ。偉い。
「なので別の場所に変えたんだ。天井へと」
「そこで発想が大冒険しすぎだと思う」
俺なりに考えたんだ。俺が日時生活で最も見ない場所はどこかって。そう、天井。ぶっちゃけ寝起きでも天井を見る奴は少ないと思う。シンジくんが知らない天井だ…って言えたのは、シンジくんが毎日天井を確認してる天井フェチである可能性がある
「でも、これもダメだった。今の俺の部屋は電球が切れかけていて、定期的にディスコしてるからだ!!」
「私もチカチカしてるとつい見てしまう」
いわゆる視線誘導。このミスディレクションを利用して、 マジックを部屋で披露することを検討したぐらいには、自己主張の激しい点灯加減である。
「そして辿り着いたんだ、俺の部屋に隠せる場所がないという結論にな。だから最終手段として妹の本棚にカバーを変えて隠した!!」
「兄はそれを私が部屋で見つけてしまった時の事を、もう少し考えておくべき」
「返す言葉もない」
灯台下暗しという言葉がある通り、意外と人は近くにあるものに目を向けてない。
つまりは妹の本棚に入れる事が正解であると。
カッコウも敵の巣に我が子を置き育てるという。あえて相手の懐に隠すのは弱肉強食の世界でも正解の一つとされるものだという事だ。
「…聞いたけど弁明出来てない。判決、暫くおかず一品抜き」
「嘘だ、お前なら理解してくれると思ってたのに!!」
三大欲求の一つである食欲を満たさなくなった俺は、エコロジストとは言えなくなってしまった。所詮俺も人の子だったということか。
「三匹の子豚は最後の時間をかけて作ったレンガの家が安全だった。つまりはもっとエロ本を隠す時間をかけるべきだったんだな」
「まずエロ本を預からない事を心掛けるべき」
しっかりとその日の夕方からおかずが消えていた