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正直の頭に神宿る

作者: Blood orange

『いいかい、正直者が一番だよ。』

『うん!わかったよ! ばっちゃん』


代々うちの家系は、教師だ。父方の祖父母も母方の祖母もしかり。教育実習生として未来の教師になる兄弟達。

俺は自分の家族が普通の仲のいい家族だとずっと思っていた。ずっと。

道端で拾った硬貨をネコババしようものなら、目から星が出る拳骨を食らわせられたものだ。


冒頭へ戻る。

俺の拙い脳味噌の中でリフレインする。

これってどう言う事だよ!?


遡る事1時間くらい前か。

たまーにいい事でもすっかなぁと神社の落ち葉を綺麗にしてたら、心臓から口?違う!口から心臓が飛び出してくるかとばかりに吃驚した。

人間本当に驚くと腰抜かすんだな。

落ち葉の中に埋もれていたのは、菩薩顔の諭吉。

一万円札が100万枚だぞ。見つけた時は思わず挙動って何度も左右確認しちまった。

誰の目にも止まらなかったのか?

俺だってこんなの拾わなかったら。誰が今時こんな手の込んだいたずらするんだよと天に向かって吠えたいくらいだ。

たまたま今日は栗狩り用の籠持ってるから良いけどさ。

普通だったら、両手に抱えきれない札束持った男なんて怪しすぎんだろ。

いや〜たまにはいい事すると幸運が来るんだなぁ。

この菩薩顔の諭吉達見て、ネコババしようかと迷ったさ。

ネコババ…所謂窃盗罪。

俺ショボい頭の中には大きな天秤がある。片方には俺のクリーンな経歴、もう片方には100億。

正直ビンボーでもいいじゃねーか。 死んでないけどばーちゃんも言ってたじゃないか。

人間正直が一番。

全部諭吉を拾った俺は、迷う事なく交番へgo!

ここで挙動不審な警官からは薬物の取引かと疑われたがな。

ラップに包んである諭吉を見れば、誰でもそう思うがな。

ホッと一息ついたら、看板持ったヘルメット野郎がやって来て、人を小馬鹿にした顔でドッキリ〜だと。

んで『俺たちずっとモニターで君のこと見てたんだよ。笑えるー』

こいつらは俺のガキの頃からの腐れ縁だったが、大学進学と就職で都会へ出てからは俺や田舎に住んでる人間を小馬鹿にするようになった。

ここで俺が怒れば、彼奴らの思う壺だ。

母ちゃん情報によれば、彼奴ら全員就職先で取引先の受付嬢やバイトで入ってきた学生達にセクハラ、パワハラにストーカー行為までして、学生の子が社長の娘だったから今までの彼奴らの悪行が全部バレちまって、奴等は仲良く全員揃って左遷になったと言うのが先月の話だった。派手好き自分大好きな彼奴らにとってこんな田舎暮しは、忘れ人と同じなんだろう。

先週から、色んな所でいたずらをしては、驚く人の反応を盗撮してネットの動画に流して笑ってる。

俺のみじんこ並みの勇気を返せ!

だが俺は大人だからな。そうでしたかと笑顔でかわしたさ。

家に帰れば、正直ビンボー命だと思ってた家族から、どうして一割くれと言わなかったんだとばあちゃんに怒鳴られ、お袋からはやっぱあんたは…と盛大にため息つかれたよ。

親父や兄貴達からもお前みたいな馬鹿丸出しのと親とも兄弟とも思いたくない、縁切りだと怒鳴られたのさ。

打ち拉がれた俺の目の前に出されたのは、絶縁状。

な、なんだよ!

散々身内に馬鹿だのうつけだの阿呆だのと罵られ、俺は家を叩き出たさ。

俺の怒りはMAX。そのまま役所に親との絶縁手続きをした。

自分の家族があんな奴らだったなんて思わなかった。100億拾って判った事は、大金は人の内側透けて見える。

俺が失ったのは偽りの正義を語ってた元家族と思い出。


家を出てから一年、俺の元に来たのは一通の手紙。

け、警察?!

手紙の内容はこうだ。

ドッキリと言えば、制作費として丸々貰えると思っていた奴らだったが、その後の警察の取り調べで?自分達が100億をネコババしようと企んだ。

映像の方は俺が現金見つけて右往左往していた時の俺が滑稽だったから撮っただとさ。

偽ドッキリ制作班達は、それぞれに闇金、飲み屋のツケ、勤務先の横領とかで真っ黒い奴らばかりだった。

で結局、あの100億はドッキリとかじゃなかったって事で、一年経っても落とし主が現れず、全額俺のモノになったと。


ニュースで放映されるとまた元身内が騒ぐのはわかってるさ。

去年の段階で親に絶縁状を叩きつけられたしな。

それを持って俺はすぐさま弁護士の元へと向かった。税金はもちろんの事、元身内との縁切りをするためだ。それ等の手続きを済ませ身軽になった俺は空の上。あいつらがどれだけ集ろうとも、他人の俺には関係ない。


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