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鶏口牛後

 萌菜先輩に睨まれながら、急いでグラウンドへと出ていった俺たち放送部は、体育祭実行委員長にガミガミと説教をされてから、放送機器の準備をするために校舎内の倉庫へと向かっていった。実際に俺たちに指示を出したのは、実行委員長様ではなく執行部の一年らしき男だったが。


「にしてもこれ、放送部にやらせることなのか。去年とかどうしてたんだ?」

 去年はいま三年の益岡先輩ともしかしたらその上の代の先輩がいたのかもしれないが、今と違って大所帯だったということはなかっただろう。無線機やら重たいスピーカーやらをチェックして外に運び出すというのはなかなかに重労働だ。

 体育祭当日は、運営は基本的に執行部および実行委員が中心となり、実際の放送業務も彼らが担当するはずだ。準備だけを俺たちにやらせるというのはどうにも腑に落ちない。


「実行委員もてんやわんやなのでしょう。指揮系統がぐちゃぐちゃで現場は混乱を極めているとか。とても悠長に放送機器を準備するどころではないそうよ」

「俺が言うのも何だけど、それ体育祭大丈夫なのか?」

橘は視線を上にしてなにか考えているようだったが、

「まあ、萌菜先輩がどうにかするんじゃないかしら」 

 とだけ言った。普段はそっけない態度をとっているくせに、なんやかんやで先輩のことは信頼しているらしい。


「あのやたらうるさい実行委員長は無能なのかよ」

 実行委員長と名がつくからには、ちゃんと仕事を実行するべきだと思うのだが。

「弱い犬ほどよく吠えるっていうじゃない」

 これはまた手厳しいご意見を。

「……仕事に遅刻した俺らがとやかく言えた義理はないけどな」


 

「あのさ、全然違う話なんだけど」

 安曇がガサゴソと備品をいじくりながら言った。

「なんだ?」


「まるモンってどんな小学生だったの?」

 何を言い出すのかと思ったら、黙々と作業をするのもつまらないから、なにか面白い話でもしろということらしい。……こんなところで昔話をする気にはならないが。

「俺の過去を探ってもいいことなんてないぜ」

 橘が口を挟んで言うには、

「そんなことないわ。素性もしれない人間がそばにいると思うと、安心して眠れないもの。そうよね安曇さん」

「部活仲間を素性の知れないやつとか言っちゃうのは問題かと存じますが」

「いや! そんなんじゃなくて、単に気になっただけだからね」

「そうね。私も花丸くんがどんな男か考えていると、気になって朝も起きられないもの」

「朝は起きろよ」

「夜眠れなくて寝坊しかけるという意味よ。それくらい読み取ってくれるかしら」

「俺エスパーじゃないんだけど」

「いいから私の美容と健康のためにさっさと話してくれるかしら」

 ……。

 あまり自分語りというか、昔話をするのは好きではない。人の記憶とは不思議なもので、昔のことを思い出そうとすれば蘇るのは苦い記憶ばかりだ。 

 だがこうなってしまっては話さずにはいられないだろうから、せめてライトな話でもしておこう。

 

「俺のガキの頃と言ったら、見目麗しい坊っちゃんですねと近所で評判の――」

「誰が創作をしろといったのかしら」

 思い出を多分に美化して語ろうとしたら、ピシャリと橘に遮られてしまった。


 仕切り直し。


「……まああれだ。どこにでもいる普通の野球少年だったな」

「え! まるモン野球やってたの?!」

 人を見た目で云々という決まり文句を教えておくべきだったな、この子には。

「俺昔野球やってたんだぜって意味のわからない自慢してくる中年男性って多いのよね」

 話の腰を折ることには定評のある橘さんが、すかさず茶々を入れてくる。

 

「お前は夜の蝶のバイトでも始めたんか?」

「あら? 橘美幸の操はダイヤモンドより固いと一部で評判の私が、そのようないかがわしい仕事をするわけないじゃない。私に触れられる男はこの世界に一人しかいないのよ。つまり将来の夫だけよ」

「あっそう」

 そんなことを声高らかに宣言されても、困りますがな。


「みさおがダイヤモンドってどういうこと?」

 橘の妙な言い回しを理解できなかった安曇がキョトンとしている。

 橘はそれには答える気がないらしく、棚の方を向いて作業に没頭しているふりをする。どうしてこの女は都合の悪いことをすべて俺に押し付けるんだ。

 安曇を無視するのも可愛そうなので、渋々疑問に答えてやった。

「ビッチじゃないって意味だよ」

「あ……。うん、……なるほどね」

 

 三人いるはずの広いとは言えないその倉庫は、なぜか静まり返っていた。


 このいたたまれない空気どうしてくれるの?

 

 沈黙に耐えきれなくなったのか頬を若干染めた安曇が再び口を開いた。

「でもまるモン、ほんとに野球してたの?」


「嘘ついてどうすんだよ。昔は男子は野球かサッカーという時代があったんだよ」

「昔は、ってまだ十六じゃん」

「花丸くん、心はおじさんだからね」

「失敬な。ちょっといい感じに落ち着いてるだけだろ」

「ものは言いようね」


「野球かぁ。どこのポジション? 私お父さんがプロ野球良く見てるからわかるよ」

「……ボールボーイとバットボーイをやらせたら右に出るものはいないと言われたな」

 卒団式のとき、舞台上で監督に。……あのおっさん人格破綻してるだろ。思い出すだけでご飯三倍は吐き出せそうな凄惨な記憶。他のコーチや父兄が監督のスピーチに沸いている中、苦笑いしていた親父とおふくろの顔は今でも忘れられない。……これだから昔の話は嫌なんだ。



「ボルボーイ? そんなポジションあるんだ」

「安曇さん、今のは『野球やってたけど結局レギュラーにはなれなかった』という花丸くんの自虐ネタよ」

「あ……」

 さすが橘さんはよくお分かりで。


「何年間やっていたのかしら?」

「一年から六年までだな。一応最後まで続けた」

「六年間ベンチを暖め続けたということかしら?」

「それだけじゃないぞ。夏場は団扇(うちわ)で他のやつを煽いでやったりもしたな。花丸の煽りスキルは満点だなってよく褒められた」

「それあなたが煽られてるじゃない」

 は! 四年越しの真実?!


 続けて橘はどこか納得したような表情をして

「あなたがこうまでひねくれた理由がわかった気がするわ。試合に負けるたび連帯責任だと言われて、試合に出てないのに監督にぶたれていたから、性格が歪んでしまったのね」

「いや違うな。むしろ他のチームメイトはみんなぶたれているのに、試合に出てない俺だけスルーされるというある意味罰ゲームを毎回受けていたからだな。どちらかと言うと」

 だからチームの中じゃ俺が一番()たれてない。だから実質ナンバーワン。エースよりエースらしい。


「チーム内ですらハブられるなんて。……あなた前世で一体何をやったの?」 

「……俺が聞きたいよ」


 野球をやっていたという記憶は全く悪夢そのものだが、強いて俺に残されたものがあるとすれば、血反吐を吐くほど練習したことで得た人より(若干)高い身体能力と、チームプレイなんてくそくらえという訓戒だな。……最悪かよ。


 そんな話をしているうちに、実行委員に渡された放送器具のリストをチェックし終えたので、本部テントまで戻ることにした。


 本部に戻って、実行委員長様はいづこやらとキョロキョロと探していたが、見つからないので仕方なく、俺たちに指示を出した執行部の一年生に、与えられた任務の終了したことを伝えた。


「ご苦労さまです。お手伝いありがとうございました。本番前日にリハーサルを行うので、そのときになったらまた機器の準備をお願いすると思います」

「わかった」


「山本くん」

 誰かが俺たちの方を向いて声をかけてきた。どうやらこの執行委員のことを呼んだらしい。直ぐに返事をしてそちらの方へと歩いていった。

 それとなく見ていると、その山本という執行委員に学校祭の準備をしている人間が指示を仰いでいるらしい。山本は書類を指差しながら何かを説明していて、合点の行ったらしいその人物は山本に礼を言ってどこかへと歩いていった。

 それが終わるやいなや、あちこちから山本、山本と名前を呼ばれて、当の本人は淀む様子もなく次々に指示を出している。山本くん大人気じゃないか。なるほど、萌菜先輩の出るまでもなく、この山本某という執行委員がポンコツ実行委員長の穴を埋めているようだから、学祭の準備間に合いませんでした、という最悪の事態はなんとか避けられそうだ。


 高校の一員として、行事が滞り無く行われそうだという状況を確認できた俺は満足して、部室に引き返そうとしたその時だった。


「おい!」

 割と大きめの声が響き渡った。何事かと近くにいた人間は反射的に声のした方を見た。

 俺たちを怒鳴りつけるだけ怒鳴りつけて、特に指示も出さなかったお偉い体育祭実行委員長様が戻ってきたらしい。


 山本と俺達がいる本部テントにやってきて、

「何勝手にビニールシート広げとんのや。陸上部のじゃまになっとるが!」

 と、場を回していた山本を怒鳴りつけた。

 確かにいつもは何もないグラウンドの一角に、大きなブルーシートが何枚も広げられてあった。俺たちが倉庫に行っている間に、マンパワーを駆使して山本が準備させたのだろう。


 山本は実行委員長の怒声に怯むことなく冷静に答える。

「ですが平井先輩。体育祭まであと二週間を切ってますし、各群団のマスコットも渡り廊下に収まらないサイズになってきています。そろそろ場所をグラウンドに移さないと色々と支障をきたすんですが」

 マスコットというのは、木と竹で骨組みを作る巨大なハリボテのことだ。一年から三年を縦割りで八つの組に分けて群団とし、それぞれの群団でマスコットを作るのである。山本が言ったように夏休みの間、制作は屋根のある渡り廊下で行われていたのだが、たしかに各群団のマスコットはそろそろ廊下を歩くのに難儀するくらいのサイズになってきている。

 

「そんなん各々工夫させて何とかさせりゃええやろが。部活のじゃまになっちゃいかんだろ!」

「学校祭は、学校全体の行事ですから、各部活の代表もそのことは納得しているはずです。僕は規定通りに指示を出しただけですよ」

「規定だルールだ、そんなことばっか言っとったら、まともな仕事ができんやろが」

 外部の俺でさえ、実行委員長の言い分が全く道理から外れていることは考えるまでもない。自分がすべき仕事をきっちりこなしている一年に対して引け目を感じ、八つ当たりしているようにしか見えない。

 なるほど、指揮系統がグチャグチャという橘の言葉は全くそのとおりのようだ。山本がまとめようとしてはそれをぶち壊す阻害因子がいては終わる仕事も終わらなくなるのも当然である。


 行く末をハラハラしながら見つめて、誰かこの場をまとめてくれよと心の中で毒づいていたところ、

「そのまともな仕事を邪魔しているのはあなただと思うけれど」

 ぼそりと橘が呟いた。

「おい、要らんこと言うな」

 俺は冷や汗の出る思いで、橘を諌めようとした。


 近くにいた奴らがこらえきれずに吹き出してしまっている。 


「そこ、何笑っとんだ!」

 ビシリと飛んできた怒声に、すっと笑い声はひいた。


 実行委員長はギロリと睨んで、なにか言いたげな顔をしていたがまた可哀相な山本の方を向き直って、

「お前、執行部かなんか知らんが他の奴らに指示を出して、いい気になってんじゃねえよ、一年のくせに」

「……はい、すみません」

 山本は実行委員長に噛み付くのはやめて、平謝りしている。


 橘と同様、俺も嫌味を言ってやりたかったが、なにぶん今日は仕事をすっぽかしていたので、上級生に対して横柄な態度を取るのは憚れる。かと言って、丁寧に対応してくれた山本が不条理に攻撃されているのを默ってみているのも忍びない。

 どうしようかと、悶々としていたら透き通るような声が聞こえた。


「随分元気がいいなあって思ったら平井くんじゃん。なんかあったの?」

 萌菜先輩が騒ぎを聞きつけてやってきたらしい。彼女はそう言って、山本に何やら目で合図を送っている。


 実行委員長は不承不承といった感じで

「執行部の人間が実行委員の仕事に口出ししてくんのが気に入らん。あんたのとこの一年坊連れて帰ってくれ」

 萌菜先輩はため息とも取れるような感じで小さく息を吐いてから、

「うちの人間が口出しをするのはそうせざるを得ないからだよ。執行部の仕事は生徒会活動が円滑に執り行われるよう、各委員会の手助けをすることだ。特に対象の委員会のトップが役に立たない場合はその人物に代わって全面的にバックアップをする必要がある。委員長である君がそれを必要としないと言うなら、山本には別な仕事をやらせるけど。人手の足りていないところは他にもあるし。でも他の実行委員は本当にそれがいいと思ってるのかな?」

 萌菜先輩は周りにいる人間に確認をするようにあたりを見回してから、

「平井くんは執行部の手助けはいらないと言ってるけど、山本をこの仕事から手を引かせてもいいと思う人いる? 手あげて教えて頂戴」

 周りにいる人間は誰も反応しなかった。それもそのはずだろう。見た限りではこの場にいる実行委員に指示を出していたのはこの山本という男なのだから。

「山本がいないと困るって人は?」

 萌菜先輩がそう尋ねたら、みんな顔を見合わせてから、バラバラと手を上げた。


 萌菜先輩はそれを見て満足したように、

「ということだから、しばらく置かせてもらうよ」

 といってスタスタと歩いていった。


 平井実行委員長は顔を真赤にしてこめかみをピクピクとさせていた。その場にいる全員が動くのをためらっているみたいで、気まずい雰囲気に包まれていた。


「作業再開してもらいますね」

 おずおずと山本が平井に確認したところ、

「勝手にやっとけ!」 

 とどなって苛立たしげに歩き始めた。


 平井は俺と安曇と橘の横を通って、テントから出ていこうとしたのだが、やめておけばいいのに立て掛けてあった鉄パイプを蹴飛ばした。

 危うく安曇がパイプに叩かれそうになったのを、俺が体ごと引き寄せて回避させてやった。


「大丈夫か?」

「あ……ありがとう、まるモン」

 危うく事故を起こすところだった平井は気まずそうにこちらを見ている。


 危険なことをしておいて詫びも入れない実行委員長に腹がたった俺は、流石に文句の一つでも言ってやろうと思って口を開きかけたのだが、その前に橘が

「粗相をしたのにその始末も自分でできないなんて、いい年した人間のすることではないわ。ここって確か高校だったわよね? 私の知らないうちに幼稚園児が紛れ込んだのかしら?」

 切れのある嫌味を繰り出した。


 その日知ったことは、感情が極限まで高まると本当にゆでダコみたいな顔になるということだった。


 そんな美術の資料集にでも載せてやりたいくらいの顔芸を披露した平井は、結局何もしないまま、立ち去ってしまった。


 橘の度胸に舌を巻いていた俺だったが、彼女は今度はこちらを向いて

「いつまでひっついているつもり?」

 と眉をひそめながらいった。


 なんとなく安曇をかばうように俺の背の後ろに立たせていたのだ。

 橘は明らかに俺に対して言ったのに、代わりに安曇が反応して

「ご、ごめん!」

 とぱっと体を離した。

 どこか怪我をしていないかと、もう一度まじまじと彼女の方を見たのだが、男にジロジロと見られるのは恥ずかしいのか、安曇は体をもじもじとさせている。あまり見ていると橘がセクハラだなんだとうるさいので、そのへんでやめておいた。


 その場にいた実行委員たちと一緒に、平井が派手に倒していった鉄パイプを直してから、俺達は部室へと戻っていった。



「鶏口牛後とは言うけれど、あんなのにだけはなりたくないな」

 歩きながらポツリと呟いた。

「人の陰口を叩くなんて良くないわ」

 何を今更いい子ちゃん振っているんだろう。

「お前も色々言ってなかったっけ?」

 

「直に言ったから陰口にはならないもの」

 確かに直に幼稚園児呼ばわりしてたな。それもだいぶ嫌味な言い方ではあったが。


「でも俺の陰口は滅茶苦茶言ってそう」

「そんなことないわよ。あなたのことを思い出しては笑っているだけよ」

「それで十分ひどいと思うんだけど」


 そこで安曇がフォローを入れる。

「でも美幸ちゃんがまるモンのいないところで悪口言ってるの見たことないよ」

「おいおい。無理して橘を庇おうとしなくていいんだぜ」

「……ホントなんだけどなあ」


「いいのよ安曇さん。この男に私のことが分かるわけがないんだから」

「そうか? 俺結構お前の人となりはわかってると思うんだが」

「そう? じゃあなんで私が花丸くんに意地悪を言うか分かる?」

「……分かってたらとっくに対処してるよ」

「それが原因ね」

「いや意味分かんね」

 

 部室に入り荷物を取ってから、橘は

「安曇さん、このあとカフェにでも行かない?」

「うん! 行く」

 仲が良いのはいいことですな。


 女子二人がキャッキャウフフしてるのを微笑ましく思いながら

「じゃあ、お疲れさん」

 と声をかけ俺はかばんを持って部室を出ていこうとした。


「ちょっと。何一人で帰ろうとしてるのかしら?」

「はい?」

「カフェに行くと言ったでしょう」

「俺のこと誘ってったっけ?」

「何を言っているのかしら? 私がカフェに行くと言ったら、鼻の穴を広げて一緒に行きたいですと興奮気味に言うのがあなたの仕事でしょう」

「そんな仕事に就いた覚えないんですけど」

「とにかく、私と安曇さんが悪い虫につかれないように付いてきなさい」

「馬鹿言うな。俺なんかがボディガードになれるわけ無いだろ」

 街中で誰かが背後に立つたび、通り魔じゃないかとビクビクしている俺である。


「知らないの? 野生動物は珍妙なものがあると警戒して近づいてこないものなのよ」

「おい。お前は俺及び世間の男をどういう目で見てるんだ」

「本能で生きてる獣かしら?」

「お前は全く酷いこと言うな」

 この橘美幸の男嫌いは一体どこからやってくるのだろう。聞く限りではこいつの親父はまともな人間のようだし、過去に男関係でトラウマでもあるのだろうか?


 そんなことを考えていたら安曇が俺の袖を引っ張ってきて

「ねー、まるモンも行こうよ」

 という。


「いや普通に用事あるから」

 こればかりは事実だからどうしようもない。

「部活仲間とカフェに行くより大事な用事があなたにあるの?」

 

「カフェなんていつでも行けるだろ」

「今日というこの日に私と安曇さんというかけがえのない存在とカフェに行くことの意義を見いだせないなんて可哀想な人」

「ごめん。何言ってんのかわかんない」

「……そう。どうしても来られないのなら、花丸くんの道化じみた人生を肴にコーヒーを飲んで、安曇さんとの会話に花を咲かせておくわ」

「はいはい。行ってら」

 

 俺はそれだけ言って、部室を出ていった。別に橘の言動に怒っているわけではない。あれのああいう態度は今に始まったことではないから、特に思うことはない。

 これからある用事のため、こんなところで時間を潰すわけにも行くまいので、足を運ぶスピードを速めた。

 


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