欺瞞
暗い自室に、何をするでもなく座っていた。
こっちに来てから半年経つが、未だに気持ちが安らぐことがない。街にいても、学校にいても、そして家にいても、どこからともなく聞こえてくるざわざわとしたさざめきが五月蝿くまとわりついているようだった。パパが揃えてくれた椅子も、座り心地が悪く感じられて、先程から何度も体勢をもぞもぞと変えている。
そんな折、誰かが戸を叩いた。お継母さんだろう。
彼女はドア越しから
「……花丸くんたちもうすぐ来るわよ」
と私に告げた。
私は一呼吸おいてから、答えた。
「……会いたくない」
「どうして? あなたに会うため、わざわざ日本から来てくれたのに」
「……私は、周りの人を不幸にする」
「どうしてそう思うの?」
「……」
「あなたが周りの人を不幸にすると言うのなら、わざわざここまでやってきたあの二人は何?」
「……ただの友達よ」
「だったら会わない理由もないじゃない。友達なら会うのが普通でしょう」
「……私にはあの二人に会う資格なんてないわ」
そうだ。私は彼らをひどく傷つけたのだ。そんな私が恥ずかしげもなく彼らに会えるはずがない。
「本当にそう思っているのなら、どうして朝早くから着替えていたの?」
「……」
「早く準備なさい。あなたのお父さんはあなたに他人を蔑ろにしていいだなんて言ってないでしょう」
それからしばらくして、お継母さんが家の外に出ていく音がした。彼らを迎えに行ったのだろう。
私は顔を伏せた。視界は真っ暗だ。
……いや。ずっとずっと真っ暗だった。
あの日見えていたはずの、正しい道はもう見えていない。