俺の名前は外野守
第六章始まります
俺の名前は外野守。
皆は天才というものを知っているだろうか。
そう、俺の事である。
今神宮界隈で最も熱い男。本町のベーブルースと呼ばれた男だ。野球を愛し、野球の女神に愛されている。
先の夏の大会では投打ともに大活躍し、その実力を球界に知らしめた。
おまけに頭脳明晰ときている。自分の溢れんばかりの才気が恐ろしいまである。
ハリウッドのエージェントにスカウトされるのも時間の問題な気がする。というわけで今日も本町の商店街をウロチョロする予定だ。俺が世界の外野と呼ばれる日もそう遠くない。
まあ、俺のことはいいのだ。俺が俺であるのは俺が俺として誕生した時から変わらぬことであり、それを論じても仕方ないだろう。
問題なのは、この俺と悠久の時を駆け、再び運命が今この場で交錯した、この男。
先ほどから俺が話しかけているのに、全く上の空で聞いているのかいないのかまるで知れない。元来無気力な奴ではあったが、ここまで酷いことはなかった。話題を変え、品を変え、あの手この手で気を引こうとするのだが、全然興味を示さない。俺は寂しい。
奴の好きな数学の話でもするかと思って、この世に球体は存在するのか、という話題を吹っかけてみても、生返事しか返ってこなかった。
最近のこやつはずっとこんな感じなのである。
この間なんかは、休み時間とあればいつもは参考書とにらめっこしているのが、ぼーっと何もしないでいるので、ちょっかいでもかけておこうと近づいたら、真顔で何やらぶつぶつ言っている。
何を言っているのかと思って耳を澄ませてみれば
「私が私を見つめてました。なんで? なんで?」
と意味の不明な事を申していた。
思うに夏の暑さで大脳皮質が熱暴走を来たしたに違いない。今度銭湯の水風呂にでも浸からせようと思う。
ところで俺が目下気になっていることは、コーヒーの種のことを、コーヒー豆と呼ぶ理由についてだ。
あれはマメ科ではないから正確にはコーヒー種と呼ばなければならないと思うのだが、どうだろうか。
同様にカカオ豆もマメ科ではないから、カカオ種と言うべきだと思う。
気になる。……木になるだけにwwwww