恐怖の女 〜悪魔の女〜
その女、元々なのか突然なのか分からないが、いつの頃からか現れるようになった。
顔をほぼ半分隠すほどの大きなマスクをして。
見た感じ顔のパーツは綺麗な方に入ると思う。
でもなんでかこんな暑い日なのに変わらずマスクをしている。
帽子もかぶってるから日焼け予防のためかもしれないのだが、汗一つもかいてないから何か違和感のようなものを感じる。
真昼だから半袖のワンピースを着ているのはいい。夏だからね。
でも他が気になって仕方がない。
気になった1人の男性がその女性に声をかけた。
ちょっとした好奇心でだ。
でも女は無表情。
笑うことはあっても目だけしか見えないから気持ちが悪い。
そこでちょっとしたいたずら心からマスクに手を伸ばしたりするとスッと男性から離れて歩き出す。こっちはそのマスクの下が見たいというのに…。
きっと綺麗な顔をしているに違いないと勝手な想像をして嫌がる女の顔からマスクをひっぺがした。
すると女は無表情から怒りの顔へと変わり口を徐々に開いていく…。
初めはボーッとしていただけだったが、広がり続けるその方を見て男は叫んだ。
「バ、バケモノ!!」
そう言った瞬間にこと切れた。
女は無表情のまま男の喉仏に指を突き刺していたのだ。それを見ていた他の通行人は悲鳴をあげその場から逃げ出した。
滑るように走り出し、次々と人を襲う。
捕まったものは皆噛みつかれたり、手に持っていたナイフで切り裂かれたり、骨を折られたりとまさに地獄絵図のようだ。
その後、しばらくして警察官がやって来たが、見るに耐えない有様だった。
女はそこにはもいうなかった。
消えたのだ。
忽然と…。
見ていたものたちは皆声を揃えて言う。
「あれはバケモノに違いない。それか幽霊か…。」
幽霊が人を襲うなんて話聞いたことはない。きっと誰かが変装してやった事だと思う警官たちは皆が警棒を手に近辺をしらみつぶしに当たる。
でもね?どこにも現れていないというか、見た人が一人もいないという事に不気味さを感じたものは多かった。
迷宮入りになるかと思われた時、ある情報が入って来た。
どうやらまたその女が現れたようだ。今度は絶対に捕まえてやると息巻いていた自分だったが、のちにその事を後悔するなんて今の時点ではわからなかった。
今周りを取り囲んでいるのは同僚たち警察官10人以上いる。
その中心に女は立っていた。
下を向いたまま誰の顔も見ようとはしない。
一歩前に出た同僚警官がさらにもう一歩近づこうとした時女はその懐に突然入り込みこう聞いて来た。
「アンタはどう死にたい?」
ヒューヒュー言う音と共に聞こえて来るその声、不気味さは半端ない。
同僚は慌ててその女から離れようとするも女に片腕を掴まれ捻り上げられると悲鳴を上げた。
「た、助けてくれ…。」と。
しかし女は力を込めて男の腕をへし折る。
同僚はその場に倒れて口からは泡を吹いていた。
他の同僚達は警棒を手に女に近づく。
女はふっとかき消えていなくなったと思ったら背後に回られていた。
僕はその隙をつこうと近づいたが、フワリとかわされた。
仲間は皆一斉に近づいたが、女に触れることができたものは誰一人としていなかった。
皆地べたに倒れている。
一瞬のことで何があったのかは全くわからなかった。
正直怖いと思ったのはこの時が初めてだった。
本当に幽霊なのか?それとも異常者?
しかし地べたにうずくまっている同僚の姿は紛れもなく本当のことだ。となると、今ここで動けるのは僕だけになる。
震える両手で警棒を握って女の側に近づこうと動く。
女はクスクスと笑っている。
僕の動きがよほど笑えたんだろう…。今はそんな事に構ってる場合じゃない。
女を捕まえなくては。
ただそれだけだった。
「わぁー!」と掛け声と共に女のもとに走っていった僕は思いっきり警棒を振り下ろした。
ガツンと何かにあたる音が聞こえ、つむっていた目を開けるとそこには女が倒れていた。
頭部から血を出して。
当たったのか?
本当に?
帽子はどこかに飛んでいっているのか長い髪が伸びていた。
マスクはまだしたままだ。だけど片耳から外れ、かた頬が見えた。
その顔を見た時僕は恐怖しかなかった。
口が耳の近くまで裂けていたからだ。
歯もびっしりと生えている。
口裂け女だと思ったのはその一瞬だ。
女はサッと立ち上がると僕のそばからフッと消えた。
見ると視界の隅を走っているではないか。
僕は慌てて追いかけたよ。
目的は捕まえる事。
女は海岸まで全速力で走っていった。
逃げ場はどこにもない。
僕は徐々に間合いを詰めていく。
すると女は突然笑い出した。
クスクスクス…ハッハッハッ!
その奇妙な行動に後から駆けつけた仲間達もその場で固まってしまった。
「な、何がおかしいんだ?」
「あんた達みんながよ。おかしいじゃない。たかが女一人捕まえるのによってたかって…それがおかしくないって?笑えるわ。」
「あ、あんたは一体?」
「あっ、私?私は…どっち?生きてる?死んでる?クスクスクス。さ〜てどっちかな?」
「笑い事じゃないぞ!」
「じゃあ、なに?死んでるって?誰が決めたの?そんな事。アンタ?それともアンタ?」
女はそう言いながらも同僚達に指を向けると手には拳銃を手にしていた。一体いつ?誰の?」
笑いどころではなかった。
発砲でもされたら始末書もんだ。
僕は腰に手を当てて拳銃を持っているのを手越に確認した。あった。良かった…ではない!誰のかわからないが、発砲されることもある。
その場にいたもの達すべてに避難を促した。
しかし、発砲はしないでその場に捨てて海へドボンと飛び込んだ。
女は泳いでいく。
沖へ沖へと…。
今回のこの騒動、どうしたものかと同僚に聞くも同僚達も返答に困っているようだ。
まさか化け物が出て襲われましたなんて言えやしない。
迷宮入りになりそうな予感がした。




