8話
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そのあと父親たちは一時間くらい生産性のない喧嘩をしていた。最終的には自分の子供可愛い自慢になっていた気がする。論点どこいった。
___だけれど、いずれはこの婚約、決まってしまうと思う。
なぜなら、国王は、私たちの家に王子を連れてきたから。
普通なら、私達が出向かなければいけない立場である。なのに、わざわざこちらに連れてきたということは、多分、顔合わせの意味なんだろうと思う。
さっきはかなり冗談めかして言ってきたが、国王様はこの婚約に対してかなり前向きだってことだ。
___まぁともかく、婚約の話がすぐに決まらなかったことは良かった。
これで、《あの作戦》を実行できる。
半年前くらいから、婚約を破談にさせるために考えておいた作戦だ。多分、成功する、父親の性格的に。これで成功しなかったら面倒くさいので成功させたい。
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午後6時半。
家族全員がダイニングに集まる。
貴族の家にしては小さめなテーブルだ。
私たちのひいおばあちゃんにあたる人が「静かな食事なんて辛気臭い!」と言ったことがきっかけで、小さく話しやすいテーブルに変わったらしい。豪胆な人である。
だから、うちの家族はみんなで団らんしながら食事をする。もちろん、お客様などを呼ぶときは広いテーブルで静かに食事するけどね。外面は上手に繕ってるよ。
給仕による食事用意が終わったので、晩餐が始まった。
兄が今日学園であったことなどを、両親に嬉々として、新しく魔法が使えるようになったことなどを話しておりどんどん話が盛り上がっていく。
が、私はわざと黙り込んでその会話に入らずに、何かを考えているふりをする。
このまましばらく父のアクションを待つ。
___だいたい15分ほど経った頃か。
「…アメリア、どうしたんだい。元気がないじゃないか。」
父親が話しかけて来た。
かかったな。
___作戦実行じゃ!
「うっ、ぐすっ。」
まずは嗚咽を漏らす!
「どうしたアメリア!!」
「アメリアちゃん!」
「リア、どこか痛いのかい!?すぐに医者を!」
3人が驚嘆の声を上げて、顔を真っ青にした兄が叫ぶが、それをやんわりと否定する。
「いえ…お兄様、リアはっ、どこも、痛くっ、は、ございません。」
兄のほっとした顔がうかがえる。
「なら、一体どうしたっていうんだい?いきなり泣き出すなんて…。」
心配そうに、父が私に尋ねる。
私は小さく息を吸って、前々から用意していた台詞を嗚咽交じりに言った。
「お父様っ、私、王子様と婚約しなければっ、ならないのですか…?」
同時に、ぽろぽろと、事前に溜めておいた涙を流す。
第一作戦『必殺★泣き落とし!』
母が「まぁ…」と声を漏らし悲しげな表情をしている。
ゔっ、ごめんなさい。嘘泣きです。この半年間涙を流す練習しまくってました。
これもフラグを折るためなんです。良心など…痛まない!痛まないぞ!
案の定、パパンはオロオロしている。しばらく狼狽えたあとに、ごほん、と一つ咳払いをして話し出した。
「いや…まだ確定ではないが…。でも、王子は歳の割に聡明で、その、容姿もかなり良いだろう?だから…、良い条件じゃないかと…って、あぁ!そんなに泣かないでくれ、可愛いアメリア!」
私はさらに涙を流し、父の気をひく。
___可愛いアメリア、ね。パパンよ。ごめんね、私はあなたのその気持ちを今から利用する!
父は少々間を置いたあと、私の目を見て、ゆっくりと、
「…アメリア、もしや婚約が嫌なのか?」
そう尋ねた。
小さくうなづく。
___第一作戦はうまくいった。
ここから第二作戦で一気に畳み掛ける。
「私、お父様と結婚するつもりでしたのに〜〜!うわぁぁぁぁん!!」
第二作戦、『奥義★私大きくなったらパパと結婚する!』
ごめんなさいパパン、君の私に対する溺愛っぷりを利用させてもらう!
大声で泣きわめく、見た目は四歳、精神年齢二十二歳女性。許せ、今はりっぱな美少女ロリなんだから。
大泣きしつつ、周りの反応を見る。
ぽかんとした顔をしている兄。
「あらまぁ…」と驚いた様子の母。
多分、二人とも、私が年相応に泣いたことなどないから、どうすれば良いのか迷っているのだろう。
___そして、肝心の父。
「…………。」
あれ、無反応?
真顔のまま固まっている。
何も言わないことを不思議に思ったのか、母が「オズワルド?」と声をかけるが、一向に動かない。
見兼ねた侍女のリリーがパパンの様子を見る。
そして目を見開いて、だんだんと呆れ顔になっていき、私たちに一言告げた。
「奥様、多分、旦那様は気を失ってらっしゃいます。」
___なんてこったい。まじかよ。
なんだろ、可愛い娘の初めてのお願い、泣かれたこと、パパと結婚する〜!作戦の衝撃がもろボディにヒットしたらしい。スリーヒット!
そんなことを考えている時、母が席をすっと立った。そして、父のそばに行き___
パシィィィン!!
頬を平手打ちした。意外に武闘派らしい。結構すごい音した。そしてパパンの肩を揺らしながら、
「オズ!起きなさい。娘の前で気絶するなんてみっともないわよ!」
そう言うと、父の目の焦点がしっかりした。
「___はっ。ここは現実か?今、娘が僕と結婚したいと…初めて私にお願いを…僕生きてる?」
生きてますとも、私が殺しかけたけれど。
「もう、オズったら…!今日国王様がいらっしゃるって言うから、婚約の話になるのは私もわかってましたわ。だけど貴方、さては事前にアメリアに話していなかったのね?私、貴方がアメリアに直接話しておくって言ったから王子を家に通したのよ?」
そう父を叱咤すると、母は私の元へとやってきて、両の手を優しく握って話し始めた。
「リア、ごめんなさいね。貴女がいくら手のかからない聡明な子だとしても、まだ四歳の女の子であるってことを、父は忘れてしまっていたみたいなの。貴女にも気持ちがあるのに…。
ともかく、この話は一旦保留にするわ。幼い貴女の気持ちを置き去りにしてまで、急いでする必要なんてないから。いいわね、オズワルド!」
母がそう言って振り返ると、なぜか異様に、悟りを開いたような、何か境地にたどり着いたような…謎の表情の父がいた。
「貴方…どうしたの。その顔。で、わかったの?」
怪訝な表情をした母が尋ねる。
すると、父は真顔のままで、
「ああ、わかった。勿論だよ。アメリアは僕と結婚するんだ。なんてったってアメリアの初めてのお願いだからな!ふはは!あんなのにはくれてやらない。せめて僕を超えるくらいの男になってからだ。リリー!馬車の手配を!
いや、馬車などいらない!馬で行く。今すぐ王宮にいってくるぞ、破談だ破談だーーー!うおおおおおお!!」
と、ちょっと危ない感じのご様子で、晩餐の最中なのに、全力で馬屋まで走っていってしまった。
「はぁ…どうしてあんなに短絡的なのかしら。」
母が頭を抱えていた。
兄は相変わらずぽかんとしている。まだ七歳だもんな。普通は状況飲み込めないよ。
リリーは堪えきれずにちょっと笑ってる。
なんだか、思ったよりも大仰なことになった。
だけど、とにかく、作戦成功だ。
短絡的ですが、極めて優秀です。決断力があるっていってあげてください。






