4話
鏡の前で自分の顔をまじまじと見つめる。
腰まで長く伸びた淡い銀髪に、大きな緋色の猫目、すっと通った小さな鼻に血色の良い唇。外に出ないためか少々青白い肌…
佐倉未花__もとい、ローズブレイド公爵家長女、アメリア・ローズブレイド。今日で4歳になる。
そしてこの世界に転生してからちょうど一年だ。
最初は、ただただ転生したのかなぁ、神様ありがとう〜、とか楽観的に考えていたのだけれど、この一年で前世のことをいろいろ思い出して、気づいた。
「この容姿、名前。私、完全に『幼き野薔薇のニルヴァーナ』の令嬢アメリアじゃんか!」
説明しよう!
『幼き野薔薇のニルヴァーナ』とは知る人ぞ知る超大作乙女ゲーである。どんなゲームかというと様々な個性を持ったイケメン攻略キャラクターと魔法の世界で恋するゲームである。
確か、キャラクターは五人。
ローゼアモル王国二王子、通称「赤薔薇の王子」
(ちなみにゲーム内でのアメリアの婚約者である)
ジークフリート・ローゼアモル
冷徹侯爵、通称「茨の騎士」
ネージュ・ヴァンダービルト
魔族とハーフの美少年、通称「落花の魔術師」
アシル・キュービット
癒しの神官見習い、通称「緑葉の癒し手」
オーギュスト・バーナーズ
気弱な天才文官見習い、通称「結実の知恵」
ハインリヒ・リットン
この五人の過去に触れ、トラウマを癒したり、壁を克服したりして、愛を育むのである。
まぁ、ここまでの説明ならただの普通の乙女ゲーと変わらない。ステレオタイプだ。しかし、このゲームにはある特徴があった。それは___
「…初等部に入るまでにあと2年しかない。ヒロインが現れるまでは5年、か。」
そう、初等部編から物語が始まるのだ。
詳しくいうと、初等部三年生から。その時期にヒロインである、私の命を脅かす___
メルシー準男爵家、通称「真白の慈悲」
ノバラ・メルシー
が、転校してくる。
大抵の乙女ゲーは高校が舞台になることが多いが、このゲームは初等部編、中高等部編、大学編の三部作となっている。(無論、未花はショタコンなので初等部のみしかプレイはしていない
)
そして初等部編の悪役が…
ローズブレイド公爵家我儘令嬢、通称「漆黒の花弁」
アメリア・ローズブレイド
この私なのだ。
学年の女王様的存在のアメリアは転校してきたヒロインを兎に角いじめまくる。
そんでもって、卒業式の日に、『嫉妬の神アテ』に呪われヒロインを潰しにかかるが、ヒロインと攻略キャラが、『至福の神ニルヴァーナ』を降臨させ、アメリアを消し去るのだ。
いや、最初はね、12歳程々の年齢で嫉妬狂いってやばくないか?と思っていたけど、こんな幼い時に自分の婚約者がヒロインに攻略されてその上殺されるって…
「すごい不憫じゃないですかねー。」
そう思ったファンは結構いたらしく、アメリアのifルートを書いた2次創作なんかは結構流行っていた。
閑話休題。
ともかく、あと五年間でやらなければならないことを決める。
まずは…
「おし、パパンに第二王子との婚約をされる前に説得だ。」
確か婚約するのは6歳、小1の時だった気がする。
決まってしまう前に、この話をなかったことにしよう。
運良く今日は休日。いつもは王宮で敏腕宰相として働く父は家にいる。
私は父のいるであろう書斎へ向かうため、部屋を出た。
がんばれアメリア