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新聞部部室、放課後

 西棟北階段三階に出る幽霊。東棟南階段のペントハウス、日だまり同盟。朽木先生と雲洞谷さんの関係。高宮さんが、自分の魅力をどれだけ自覚しているのか。気になることはたくさんある。


「ねえ、永原」


 呼びかけると、永原は読んでいた本から目を離さないまま答えた。部室は今日も二人きり。


「何?」


「七不思議知ってる?」


「あー、ここの? 鳰海学園じゃなくて、高校だけの?」


「うん」


 永原が顔をあげた。


「それ、お前のほうが詳しいんじゃないのか。小学校からずっと学園なんだろ?」


「それはまあ。ただ、一般的な認識を知りたいと言いますか」


 外が見える窓辺から離れて、永原の斜め向かいの椅子を引いた。座って足を組む。


「あー、そうだな。有名なのは、西棟の北階段の幽霊か。図書館のグランドピアノと、放送部の職員情報記録は実在するやつで。あとは屋上の秘密クラブ。あれ? 四つしか知らないな」


 幽霊は、西棟北階段三階付近と、深夜の屋内プールに現れる。北階段は女子生徒、プールに出るのは金髪美女とのことなので、おそらく別人だろう。

 幽霊の仕業かどうかはわからないが、なぜか、第一体育館では忘れ物が多い。そしてなぜか、第一体育館でなくしたものは、第二体育館で発見される。

 図書館にある黒いグランドピアノには、白いペンで誰かの名前が記されていて、その人物がどこの誰なのか、誰も知らない。

 放送部、というより放送室には、全職員の来歴から趣味嗜好まで記録されたファイルがある。金庫に保管されているそうだ。ファイルを見るために放送部に入る生徒もいるが、放送部に入ってもファイルは見られない。


 永原の言う屋上の秘密クラブとは、日だまり同盟のことだろう。良家の子女が集うサロンで、場所は不明。実体も不明なので、集っている生徒が良家の子女というのは、あくまでも噂にすぎない。日だまり同盟の名前が知られているのは、毎年、入学式と卒業式に花が贈られるからだ。

 そうだ。日だまり同盟とは謎の組織であり、その所在地は不明。場所を知っている生徒がいれば、それは同盟の関係者だ。


「永原、もしかして、日だまり同盟のメンバー?」


「はっ? はあ? なんで」


「日だまり同盟が屋上にあるなんて、普通は知らない」


「あっ。あー、そう」


 永原は誤魔化す選択をしないようだった。嘘がつけない性格だという自覚はあるのだろう。


「連れてって。紹介して。あいさつしたらすぐ帰るから」


「今、読書中だから」


「じゃあ一人で行く」


 宣言して席をたつ。ドアの前に窓辺へ近寄り、外を見下ろした。いくつか下校する生徒の姿はあったが、喫煙中の柏原先生の姿はなかった。時間を見ると、部室の五分遅れの壁時計は、午後四時を示している。この時間なら、高宮さんもまだ帰らないだろう。


 私がドアに手をかけたところで、バタンとハードカバーが閉じられる音がした。振り向くと、永原がため息まじりに立ち上がっていた。


「面白いものなんてないからな、期待するなよ」


 そう言って、永原は本をかばんに入れた。案内してくれるのだ。

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