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新聞部部室、放課後

 廊下でプリントをぶちまけた子がいた。高宮さんは当たり前のように拾い集めて、お礼なんて要らないと笑顔で去った。

 落とし物は拾って、生徒指導室に届ける。知り合いや、先生には、いつも笑顔であいさつする。掃除には手を抜かない。高宮さんが放課後、遅刻三回ペナルティの教室掃除をした日には、いつもより綺麗な教室になる。高宮さんが日直の日は、黒板が綺麗。きれい好きであるらしい。


 あまり笑わない人だと思っていたが、見ていれば、笑顔は多かった。いつも、目を合わせてから笑うのは、癖だろうか。


「謎だ」


「何が?」


「高宮さん」


「高宮? あー、まだ高宮の追っかけしてたんだ、お前」


「追っかけというか……」


 新聞部の部室には、今日も私と永原しかいない。一年生の部員はゼロだし、三年生は情報集めと言ってふらふら敷地内をさまよっている大門先輩、一人しかいない。顧問の小野先生は毎日午後五時過ぎに深緑の自転車で帰る。ちなみに、大門先輩と私の担任の大門先生は従兄弟だそうで、先輩はいつも先生と車で来て、先生と車で帰る。ずるい。


「あ。朽木先生の車に雲洞谷さんが乗ってる」


「嘘だろ」


 バッと永原が顔を上げた。


「うっそー」


「ふざけんなお前。あー、もう、よかった。よかったわ」


「ほー。まだ雲洞谷さんの追っかけしてるんだ、永原は」


「追っかけじゃねえよ、好きなの。オレのアイドルなの」


 アイドルと呼ぶなら、追っかけでも間違いないと思うのだが。自称ファンではあるが、追っかけまではしていないのか。


 朽木先生の車は正門で一度停まり、門の外でタバコを吸っている柏原先生と何か話してから、ゆっくりと出ていった。


「あれ……?」


「今度は何だよ。柏原先生がまた敷地内でタバコ吸ってるとか? どうせ文句言われるのに、何であと一歩外に出ないかなあ」


「え、いや、別に」


 いつものレモン風味炭酸ジュースを、ぐっと喉の奥に流し込んだ。しゅわしゅわ甘い。たしかに、よく見れば柏原先生は敷地内に立っていた。だが、私が驚いたのはそこではない。柏原先生の立ち位置は、永原も言う通り、いつものことだ。

 永原を盗み見ると、デスクトップのモニターと睨みあっていた。明日発行の壁新聞を仕上げなければならないのだ。朽木先生の深緑のジャガー、その後部座席に雲洞谷さんが乗っていた。なんて、言わないほうがいいのかもしれない。

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