2C教室、二時間目
高宮さんは遅刻魔である。だから今朝のように、席替え大好き大門先生が突発的に席替えをすると言い出した時、高宮さんは大変困るはずだ。遅れて教室へ来たら自分の席が行方不明なのだから。
「近くなってよかったあ」
「そうだね」
中学校の頃からの仲で、そこそこ親しい花園さんに言われて、にっこり笑顔で答える。
さて、席が変わった。今まで気にしていなかったが、高宮さんはどうするのだろう。席替え後の座席表は、教室後ろの黒板に貼ってあるとはいえ。
高宮さんは二時間目が終わる頃にやってきた。おそらく、終わってから教室へ入るつもりだったのだろう、いつもは休み時間のうちにやってくるのだから。なのに、朽木先生が廊下で隠れている高宮さんを見つけて、教室へ入るよう言ったのだ。
さて高宮さんはどうするのだろうかと見ていると、ドアに一番近い席にいた苅原くんが、高宮さんに声をかけた。
「おはよう」
高宮さんはきょとんとして、それから苅原くんをじっと見つめて、ふにゃりと笑った。
「おはよう、苅原くん」
「うん、おはよう、高宮さん。今朝、席替えしたんだ。高宮さん、席わかる?」
「空いてる所。ありがと」
高宮さんはそう言って、一つだけ空いている席に向かった。休み時間ならともかく、授業中には迷いようがなかった。
高宮さんがモテる理由は何となくわかってしまったが、苅原くんが高宮さんを好きらしいということも、高宮さんを追う彼の視線で察してしまったが、調査は継続することにする。
高宮さんは未だ謎だらけだ。普段笑わない人が笑うのは、くる。じっと目を合わせてから笑うなんて、ドキッとしないわけがない。