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新聞部部室、放課後

 新聞部の部室は、教室のある東棟の北の端に位置する。小会議室と名のついた小部屋には、長机とパイプ椅子と戸棚、デスクトップのパソコンとそれから、まるで台所のようなシンクとガスコンロがある。換気扇も当然。窓からは玄関や正門、昇降口も見える。人の出入りが見えるのだ。


 高宮さんはたいていの日には、一人で来て、数人で帰る。自転車は銀色と水色の間のような、ありふれた色だ。


「何見てんの?」


「高宮さん」


「高宮? 何かあったのか?」


 見える範囲から高宮さんがいなくなってしまったので、振り返った。新聞部の少ない部員の一人、私の同級生である永原が、ノートに鉛筆を走らせていた。部室に他の部員はいない。


「永原は高宮さんのこと、どのくらい知ってる?」


「そう言われてもな。まあ、小中高と一緒だけど、別に仲いいわけじゃないからな」


 永原と小学校、中学校が同じというのは新しい情報だ。先日話を聞いてしまったサッカー部の二人も、永原と同じ中学校だった。つまり高宮さんと同じ中学校を出ているのだ。高校二年生で、まだ好きなのかと問うくらいだ、中学生の頃からなのだろうか。


「高宮は、まあ、昔から男子に人気あったよ。告白したやつは、未だにいないみたいだけどな」


「それ、本当に人気なの?」


「さあ。中学一年の時にさ、ほら、小学校が三つくっついて同じ中学校になったんだけど、ある小学校の人気の男子が、高宮好きになってさ。その男子のファンみたいな女子たちが、よそ者に取られてたまるかって、高宮に絡んでたことあって。それを、うちの小学校のやつらでなだめたんだ。高宮は誰も好きにならないからって。だから、まあ、男子にも女子にも、味方は多いと思うよ」


「ほー」


「あー。お前、小中高ずっとここなんだっけ。じゃあ、あんまりわからないのかな?」


「あ、そうじゃないよ。中学校からのよそ者、とか、高校からのよそ者、とか、わかるけど」


 高宮さんのケースはいまいち想像できなかった。永原の話からわかったことは、高宮さんが男女問わず好かれているらしいということだけで、私から見て、それは今も変わらない。


「学校一の美少女なら、雲洞谷さんで間違いないのになあ」


「あー。だよな」


 永原の適当な相づちから目を離す。窓の外を眺める作業に戻ると、深緑のジャガーが敷地内を出ていくのが見えた。あれは数学の朽木先生の車だ。

 朽木先生は生徒におモテになる。クールな雲洞谷さんが唯一デレる相手だ。朽木先生も雲洞谷さんには他より甘いので、あの二人は怪しいと思っている。朽木先生の実家の力がとんでもないので、調査には踏み出せないままだ。自称雲洞谷さんのファンである永原も「触れないほうがいい真実はあるのだよ……」などと言うし。


 朽木先生の車が見えなくなって、ちょうど、午後五時のチャイムが鳴った。部活動のない生徒は帰れと言う放送は、放送部が作っているもので、現在は高宮さんの声で流れている。そうだ、高宮さんは放送部だった。放送部の顧問の先生の一人に、養護教諭の鏡先生がいる。保健室に入り浸っている謎はこれで解決でいいや。

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