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言葉の裏のウラの罠と悲しい嘘

生井京介がパーティーを終えてスタッフと楽屋に帰ると、ドアに何やら1枚のカードが挟まっている。引き抜いて見てみたが何も書いていなかった。勘の良い京介は何かを閃いたようでホテルスタッフにライターを借りると、カードの下から火で炙ってみる……。

出てきた言葉に驚きを隠せなかった。


ーオマエ タイセツナヒト ウシナウダロネー


だが、京介が驚いたのは脅迫文では無く、文章そのものだった。新人賞に選ばれた彼の推理小説の物語の重要なカギを握るサブタイトルだったからだ。

ただのイタズラだ。そう思いドアを手前に引くと突然、楽屋が爆発した。京介は吹き飛んだドアと壁に挟まれ動けなくなっていた。

爆発に気づいたスタッフが警察、消防に連絡を入れてからおおよそ5分後に救助隊の人が来て…というところまでは覚えていた。目が覚めると病院のベッドの上。体には、たくさんの管が付いていた。目を開けて少し経つと20台前半くらいの看護師が来て「生井さん。わかりますか?ここ、病院ですよ!」と優しく声を掛けてくれた。手を動かすと、今度は主治医の先生が来て、目に光を当てられて。

それから数日が経ち、回復が早く一般病棟の1人部屋に移動となった。ある日、部屋で小説を考えていると部屋の入り口のノック音がした。

「どうぞ」

部屋に入ってきたのは、優しい笑顔の私服の人と怖い顔をした背広を着た2人組の男だった。

2人は警察手帳を見せた。

「警視庁刑事部捜査一課の押原と引田です。被害に合われてすぐで申し訳ないのですが、覚えている範囲で構いませんので、当時のあなたの行動とパーティーの様子など詳しく教えてください」と引田。

「はい。あの日は……」


東京駅丸の内南口を出て目の前に建っている『フォンターナ・プリンスグランドホテル』で新人賞最優秀賞を獲得した作品『闇~オマエ タイセツナヒト ウシナウダロネ~』の受賞記念パーティーが午後6時より開かれた。午後0時を回った時には、すでにホテルの前に200メートル越えの長蛇の列が出来ていたそう。午後6時05分に壇上に登場し少し話をした後、京介の乾杯の挨拶で食事がスタートした。参加費はアルコール・ソフトドリンク飲み放題付きのビュッフェスタイルで1人5000円。パーティーの参加者は、全部で2000人。内閣総理大臣や大物政治家、俳優、彼の親戚や友人で500人。他の方々は、彼の本に巻いてある帯に付いている応募券を送って当選した1500人である。

「パーティーが終わり、お客様が帰った後、みんなで片付けをしました。解散して、楽屋に着くとドアノブの少し上のところに例のカードが挟まっていました」

「なるほど。では、なぜ、あなたは炙り出しだと分かったのでしょうか?」

「私は推理小説作家で、ありとあらゆるトリックを勉強してきました。カードを取ったとき、甘い香りがしたので炙り出しだと確信が持てました」

「では、ライターは誰に借りましたか?」

「ホテルスタッフの絵島幹広さんという方に借りました。絵島は小学校からの同級生で今回のパーティーの手配も全てやってくれました」

「貸してくれた絵島さんは、その後、どこに行きましたか?」

「確か…、私の隣の部屋です。用事があったとかで」

すると突然、2人の顔が渋った。

「実は、あなたが病院に運ばれてから現場検証をした結果、男性の遺体が発見されました。身元を調べた結果、男性は絵島幹広さんだということが判明しました」

京介の目からツーっと涙が流れ落ちた。

「辛いとは思いますが、捜査に協力していただきたいのですが、よろしいでしょうか?」

優しい笑顔で押原が伺いを立てると、京介の重い口が開いた。

「刑事さん、協力します。その代わり、条件があります」

「何でしょうか?」

彼の言う条件とは、絵島の遺品を受け取るということだった。

2人は少し拒んだが、すぐに連絡をして刑事部長に許可をもらった。



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