元女神界の番人と闘う。
花やしきを潜ると、僕と女神が光に包まれた。
これが、異世界転生かなんて冗談っぽく思った。
包まれた先は石造りの神殿でまるで東京タワーの真下にいるような不思議な空間だった。東京タワーの下実際に行ったことないけどね。テレビで見た感じの雰囲気と近い感じがした。
「でも……誰もいない?」
「そうかもしれないわね。ここを見つけるのも容易ではないし、それの女神を目指すのも簡単ではないしね。私みたいな元女神の場合は例え自らの意思で離脱して、ブランクが100年あったとしても無条件で女神に戻ることが出来るけどね」
「へえ」
「それだけ、女神様っていうのは貴重な職業なんだよね」
「うーん。選ばれ者……か」
「うふふ」
女神様は胸を張って自慢げなポーズをとった。
「じゃあ、行きましょう」
道は進むべき方向を示しているかのように色の違う石が線のように先へと続いていた。
「それにしても広い所だね」
「そうね。昔は女神志願者で溢れんばかりだったけど、今はもう廃れてしまっているわね」
「でも何で廃れてしまったんだろう」
「それは人々が、世の中に希望を持たなくなったからよ。だから、女神が必要とされる時代じゃなくなったの。願いを叶えて欲しいという人間が昔よりも減ったのよ。でもそれは女神界にとっては残念だけど、人間にとってはいいことだと思うわ」
「どうして?」
「だって女神に頼らなくて、自分達の力でやっていく力がついて来たってことだもの。でもそれでも女神はなくなりはしないと私は思うわ。いつの時代も私達のことを必要としてくれる人は世界のどこかにはいるはずだもの。たとえばあなたみたいにね」
「そうか。そうだよね」
「うん。でも仮に願いを持つ者がいなくなって、私達の職業が完全になくなってしまっても私達はそれを喜んで受けると思うわ。そして私達は人間界に降りたり、転生したりして人間と共に歩むと思うの。今ままでもそうだったように、これからもずっとそうすると思うわ」
「はあ。流石女神様だね。僕心から感動したよ」
「あら、ありがとう」
「何をくっちゃべっているんだ? この神聖な空間で」
「そ、その声はダイナンね」
「ん? その声はお前かバニラムーン」
「えっ、女神様バニラムーンっていうんだ。今更だけど。よろしくバニラさん僕は両親が失踪したので、名前はありませんけど」
「そうなのよね。じゃあ私がつけてあげるわ」
「いいんですか?」
「ええ、遠慮しないで。じゃああなたの名前は時三でどうかしら」
「時三ですか。ちょっと古臭い名前ですが、良いですね。昭和の雰囲気がして、レトロな感じで」
「そう、気に行ってもらえて嬉しいわ」
「で、それはそうとダイナン、そこをどいてくれない。どうせこの道の先にいるんでしょう?」
「うん。じゃあでもここをどくことは出来ないんだ。何せ使命だからね」
「使命? 使命って何なのよ」
「昔はここは自由に女神転職の儀式を女神ならば受けることが出来たけど、それが改正されてね。というのも、メガ女神がそういう風に決めてね。試験官を倒さないと、先に進むことが出来ないようになっているんだよ」
「はあっ、そういうことね。ま、一筋縄では行かないような気はしていたけどね。で、ルールはどうなっているの?」
「ペット以外の使用は禁止されている」
「じゃあ、時三は大丈夫ね。私のペットだから」
「なっ!?」
「嘘をつくでない、バニラその人間がペットであるはずはない。もしそうだというのなら、証拠を俺に見せろ。でなければ到底試験を受けることは出来ないぞ」
「分かったわよ」
バニラ女神はそう言うと、僕の目の前にやってきた。
そして。
「ちゅ~~!!」
と大きな音を立てて、僕にキスをした。
「これで分かってくれた? これペットだから出来ることよ。そうよね。時三。私とあなたは運命の赤い紐で結ばれているのよね。時三」
「まあ、確かにそう言われた時もありました」
「ほらね。そういうことよ」
「くっ、仕方がない。しかし人間だからといって手加減は出来ないぞ。これは仕事なんだからな。もちろんバニラ女神。あなたも例外ではない。逃げるのならば今の内だぞ。女神のパワーがあるならば、ともかく、ただの女神を放棄した、元女神人間が、女神界の番人を務めたことがある俺を倒せると思うなよ」
「なんか一気にあの神官悪役っぽい雰囲気になったな。主に言動と態度が」
「うるさい! これも仕事なんだ。ちゃんとやらなけれど、俺が人間界に、あるいは夢世界に落とされることになる。だから手加減は一切しないぞ!」
「分かった分かった!」
「参る!」
「時三! 戦闘モードに入って。そして殺すつもりでやって! 大丈夫、あいつ女神界の元番人だから爪一つでも残っていれば再生させることは可能だから。それぐらい生命力ある奴だから」
「うへぇ」
何だか、すごい展開になってしまったなあ。
僕は力を溜めて、自分の今できる能力を全開モードにした。




