初めての妖怪退治をする僕。
しばらくして、女神様の興奮が収まると、僕は女神様とようやく行動を本当の本当に開始することになった。
「本当に、歩いていれば妖怪が出てくるのですか?」
「そうね。そうだと思うわ。少なくとも、私が女神の時はそこらじゅうに妖怪がいるのが見えたわ」
「そうなのですか。それのしてもそう考えると怖いなあ。でも本当に見えるのかなあ」
「まず、見えると思い信じることから始めましょう。そして、耳を澄ませて、目を凝らして、匂いを嗅いで、妖怪の気配を感じるのです」
「はあっ。でも、妖怪を見つけてもどうやって退治したらいいんですか?」
「それは、あなたの特殊能力を使えばいいじゃない」
「えっ、でも僕大した特殊能力を使えませんよ」
「そんなことはないわ。あなた時間止めたり出来るのでしょう?」
「まあ、十秒ぐらいですが」
「その間に見つけた妖怪に近寄って捕まえて、屋上から突き落とすのよ」
「ひでえ。妖怪虐待だ」
「あなた、退治と虐待は全然違うわ。虐待は退治する気がなくて、ただじわじわといたぶって楽しんだり、自分のストレスのはけ口にすることを言うけれど、退治は、やっつけることを目的としているわ。だからビルから突き落とそうが、水の中に沈めようが、ぶっちゃけいいのよ」
「まあ、害虫としてみればそうかもしれないけれど、だけど、例え害虫扱いだったとしても、あまり苦しませて死なせたくないなあ」
「それは私だって同じよ。ただ、それ以外に今の私達に妖怪を退治する能力があるとは思えないの。もしあなたが強力な、陰陽師だったり、火使い、氷使いだったとしたら、苦しめずに一瞬で倒すことは出来るのでしょうけれど、あなたはまだ未熟。それが出来ない。だったら、今のあなたなりに例えあなたの理に反するとしても、それをしなければならないでしょう」
「そうだね。その通りだと思うよ。僕もっと力をつけて、妖怪を苦しめないで退治出来るように修行したいと思うよ」
女神と会話をしていると、「あっ! いたわ。妖怪よ! 悪の妖怪よ! あそこよビルの上よ!」
女神が指差す方を見ると、確かに小さなビルの屋上に妖怪と思われる生物がいた。
やはり、神経を凝らして見たことが影響したのだろうか。
「あなたが今妖怪を見えるのはたぶん、私の影響が大きいわね。私は腐っても鯛。腐っても女神よ。だから、例え、女神としての能力は使えなくてもあの程度の超超蛆虫ゴミ虫屑虫カス虫級のレベルの悪妖怪だったら、なんとかギリで、ハイレグを履いているぐらいの際どいギリな感じで見ることが出来るようね。これは何とか首の皮一枚つながったわ。さあ、上へ参りましょう」
「上へ? でもどうやって。階段を上るのか? その間に逃げそうな気がするけど」
「はい、空を浮遊することが出来るのはどこのどいつですか?」
「ああ、そういうことか」
僕は女神を抱えると、空中浮遊をして屋上へと上った。でも幸いなことに誰に見つかるでもなかったのでそれは幸いだった。でも仮に見つかったとしても特撮とか、撮影ぐらいにしか思われないだろう。
僕は屋上に着くと、女神を下ろした。それにしてもこの間は、10メートルぐらいしか浮遊出来なかったけど、今日はもっと高く浮遊することが出来た。これはあれかな。慣れみたいなもんかなあ。自転車に乗る的な感じで。まあ、後でそれについては女神様に聞けたら聞いてみよう。
「さあ、覚悟しなさい! 妖怪!」
「もしゃもしゃ、もしゃもしゃ」
妖怪がもしゃもしゃと何やら呟いている。
「あれは何の妖怪なんですか?」
「あれはアンダーヘア妖怪よ」
「アンダーヘア妖怪?」
「そうよ。いたずらで、友達にアンダーヘアを燃やされた毛が憎しみを抱き、妖怪と化したのよ」
「そんな妖怪いるんだ……」
僕はあっけにとられた。
「何、ぼーっと突っ立っているのよ。早くしないとあの妖怪逃げちゃうわよ。あの妖怪とろそうに見えるけれど、ああ見えて俊敏なのよ。そしてあの妖怪は、罪のない人間に襲いかかることになるわ」
「あの妖怪、そんな悪い妖怪なんだ」
「ええ、その通りよ。人々のアンダーヘアに潜み、互いの毛を絡ませるという特殊能力を持っているわ」
「それは嫌だなあ」
「そう思うのなら、早く退治するのよ」
「分かったよ。やってみる。でもどうすればいいかなあ。でも、毛の妖怪なんだったら、火が有効かもしれない」
僕はアンダーヘア妖怪の傍に走って行くと、彼の頭というか体に火種を落とした。そして、彼の体を掴んで(掴めた!)ぐるぐると回して空気を入れた。それは火を起こす時にする行為と同じ行為だった。
すると、妖怪の体が突如として発火した。どうやら火起こしは成功したようだ。って火起こしじゃなかった。
「もしゃもしゃもしゃもしゃ」
妖怪は僕の顔を見ながら炎に包まれ、焦げ臭いと共に煙になって天へと帰って行った。
「あの妖怪どうなったのでしょうか」
「怨念が晴れて、彼はまた素敵なアンダーヘアに生まれ変わると思います。彼を退治することは彼にとっても良かったことなのです。彼も今取りつかれていた呪縛から解放されたのです」
「そうなんだ。良かったことなんだ」
「ええ、妖怪にとってはね。悪い妖怪は取り除けない寄生虫に取りつかれているようなものなのです。だから退治するしか方法はないのです。あの妖怪もありがとうと点で思っているはずです」
「そうか、それならば嬉しいな」
「ええ、今度はあなたのアンダーヘアに生まれ変わるかもしれませんよ」
「そ、それは遠慮しておきたいですけどね」
こうして僕の初めての妖怪退治は無事完了した。
次はどんな妖怪が僕の前の姿を現すのだろうか。
僕は不安と共にどこか楽しみを感じている自分に気付いた。そして妖怪を成仏させたいという使命感もどこか感じるようになっていた自分にも気づいた。




