今日から、妖怪退治を開始する。
スイートルームでお互い一夜を過ごした、朝を迎えた。
僕が廊下に出ると、ちょうど、女神様も廊下に出てきた。
「あら、タイミングがいいわね。私達まるで、赤い紐で繋がっているみたいね」
「それを言うなら、赤い糸だろ?」
「いいえ、違うわ。あなたの首についた赤い紐を、私が引っ張って行っているのよ」
「それ僕ただの、犬ですやん」
「ふふっ、あなたネガティブなのね」
「いやいや、女神様がネガティブ思考に誘導しているんでしょ」
「そう、私ったら無意識の内に……。私って罪な女ね」
「実際に罪を犯して、夢の中に閉じ込められましたけどね」
「そ、それは言わないで」
女神様の声が急に震えだした。よっぽど夢の中の生活がきつかったのかもしれない。僕は女神様に質問してみた。
「ねえ。女神様、女神様は一体どのぐらいの期間夢の中で夢のような暮らしをしていたの」
「それは皮肉かしら、私はもう、一年も夢の中に閉じ込められていたのよ」
「一年か……」
僕は短いのか、長いのかよく分からなくなって、曖昧な感じに返事した。
「あなた、今一年、短いみたいに思ったでしょ!」
「正直、ちょっとだけ思いました」
「一年ってあなたが思うよりも遥かに長いのよ。しかも、常に状況が変化し続ける夢の中なのよ。もう頭が混乱して、発狂する寸前だったわ。だって、ヘビが現れたと思ったら数秒後には竜になって、襲いかかってくるような出来事が日常茶飯事なのよ。そんな所で私は一年間も31536000秒もいたことになるのよ」
「へえ、でも31536000秒か。最高さ! ロックーおおお! とも読めますよね。凄いロックな生き方だったんじゃないでしょうか」
「そ、そうかしら。そう言われてみると、何だか私のあの時間はとても濃い有意義な時間だったように感じられるわ。ありがとう。いや、ありがとう!! 会場の皆!!」
女神様はトラウマを乗り越えようとしているのか、それともその気になったのか。ロックンローラーのようにマイクを会場に突きだすふりをして、通行人にレスポンスを求めた。
僕は他人のふりをした。




