神殿を探す為に必要なこと。
「で、どこにあるんだい? その神殿というのは」
「さあ」
「いや、さあって、知らないの? 女神さん」
「ついこの間までは、ブラジルのリオデジャネイロにあったわ」
「へえっ。オリンピックがあった国にあったんだ。じゃあ、リオに行けば良いんだね」
「いえ、たぶんもう神殿はそこにはないわ」
「どうして?」
「どうしてって、だってその神殿は定期的に移動するから」
「移動する?」
「ええ、リオの前はロンドンにあったわ」
「ロンドンに? その前は?」
「その前は北京にあったわね」
「分かった。その法則、僕分かったよ。その北京の前にはアテネにあったんだろう?」
「いえ、違うわ。三軒茶屋にあったわ」
「そんなところに? 予想外れたわ。嘘でしょ。どんな法則だよその移動」
「でも、あなたが入ればたぶん何とかなりそうな気がするわ」
「いやいや、流石に僕にそんな能力はないでしょう。女神様がパワーを持っている時に僕が隠し場所の発見能力をもらっていたら簡単に見つかったんだろうけど」
「それは確かにそうね。でも、私達まだ人生これからだと思うの。これからがスタートだと思うの」
「まあ、それはそうだと思うけどさ。でも、世界は広いからなあ。三軒茶屋にあったりするなら、今度は下北あたりにあったりするのかなあ」
「たぶんそうよ。あなたは、中々に感が鋭そうだもの」
「じゃあ、下北に行ってみる?」
「ええ、良いわね。これがデートっていうやつね」
「違うよ!」
「それに仮に間違っていたとしても、それはそれでオーケーね。なぜならばまた新たな場所を探さなければならないからね。つまり人生は冒険と言いたいのよ。見つかるまで私達の冒険は永遠に続くのよ」
「何でそんなに張り切っているの? 張り切っているわりには、あんまり見つかって欲しくないようにも聞こえるし」
「そ、そんなことないわよ。ただ冒険はいつの時代も心躍るものだって言いたいだけよ」
この女神、絶対見つける気ないだろう。本当にただ単に色んな場所に、冒険というか、旅行したいだけじゃないのか? でも、法則からすると、今度は東京の可能性もあるにはあるんだよなあ。なんで北京の前に、三軒茶屋だったのかは謎だけど、だけど、ここ三回はオリンピック開催地繋がりだから、東京のどこかにあると信じて絞って行動してみるのもいいかもしれないな。
「ああ、言い忘れていたけれど、私もう女神じゃないから、その神殿見えないから。そしてあなたにもその神殿を見る力は備わっていないわ。今現在ね」
「お手上げじゃないか!」
「いえ、そんなことないわ。さっき言ったでしょう? まだ可能性は僅かにある、って。つまりどういうことかというと、あなたが、あるいは私は霊能力を開花させれば、見えない物も見えるようになることが可能かもしれないということよ」
「霊能力を開花? 僕、霊とか妖怪の類は見えないというか、一切信じていないんだけど」
「あら、奇遇ね。私よ」
「あんたもかよ! だめじゃん。だめだめじゃん!!」
「そんなことを言わないで。傷つくわ。カスはカスなりに。あなただってそうでしょう? 屑だって、屑なりに傷つくでしょう?」
…………。
「屑だ、屑だってもういいよ! それよりもこれからどうすればいいのか。どうすれば霊能力が開花するのかを教えてくれよ。何か知っているんでしょ」
「ええ、いくつか方法はあるわ」
「それをだから最初に言ってくれよ」
「一つ目の方法、まずは死んで自分が幽霊になる」
「いや、死んでんじゃん。神殿見つけられても、死んでんじゃん。ギャグじゃないけど。いや意味ないじゃん死んでたら、見つけた所で誰に気付いてもらえないし、そもそも肉体がないから女神になることも不可能ですよね。僕にもデメリットしかないし」
「そんなに真剣にならないでよ。ただの冗談よ」
「いやあ、冗談きついっす」
「二つ目の方法、高名な霊能力者の師事を仰ぐ」
「ほうほう」
「三つ目の方法、自身が霊能力者になって妖怪を退治したり、妖怪と仲良くなって、妖怪に何か妖怪? と言われるぐらいのマブ達になる」
「何か妖怪ってギャグを言いたかっただけやん」
「違うわ。最期の二つは真の助言よ」
「偽物の助言を最初にすんな!」
「ふふ。では二番目と三番目の助言どっちにしますか? 選んでください!」
もういいよ。どうでも。でも三番目の方法はまだ僕自身が霊能力に全く目覚めていない状態だから、危険な気がする。だから最初に高名な霊能者に習って、霊能力の基礎を身につけてから、三番目の妖怪退治とかをした方がいいかもしれない。
僕は考えたことをそのまま、女神様に言った。
「あなたならそう言うと、思ったわ」
「じゃあ、そういうことにしようか」
「でも、それは出来ないわ」
「何で? どうして? ホワイ女神ピーポー」
「だって、この世界にそんな高名な霊能力者は誰一人としていないのだから」
「だから、嘘をつくな!! それじゃあ最初から一択じゃないか! あ、それとももしかして三番目の選択ももしかしたら嘘?」
「いいえ、それだけは本当よ」
「じゃあ、もうそういう嘘とかはこれからはいいから、真実だけを話してくれよ」
「でも、真実というのは時に、嘘と表裏一体だわ」
「そういうのもういいから。分かったよ。僕が悪かったよ。というわけで、さっさと妖怪退治やら、妖怪と仲良くなったりしようじゃないか」
「そうね。では行くとしましょうか」
「で、どこに?」
「歩いていれば自然と妖怪は出てくるわ」
「今、巷で話題の何とかGOみたいだな」
「電車でGOかしら」
「いや、古いわ!」
「それとも、ひろみ郷のことかしら」
「違うわ!」
僕はもう疲れた。本当に女神との会話にまるで無理やり漫才をさせられているみたいで心底疲れた。
「じゃあ、今から探しましょうか。妖怪を」
「やっぱり明日からでいいかな。僕も疲れたよ」
「そう、もっとやる気を出してよ」
「あんたのせいだよ!」
僕と女神は高級ホテルのスイートルームに別々に泊まり、今日の疲れ(主に僕だけの疲れ)を癒すことにした。もちろん僕の全額奢りでね! とは言っても、ただ女神様にもらった能力でお金を出しただけだけど……。そういうわけで、あまり女神様には強く言えない僕であった。




