スイーツ大会と犬川の微笑み
スイーツ王の俺はこの勝負に勝たなければ名が汚れてしまう。
くだらないと思う人もいるかも知れない。しかし、好きなものは人それぞれ違ったりするものだ。だから人それぞれのプライドを持っているだろう。
そのプライドを守ることが使命なのだ。
「頑張ってね」
他人事みたいに扱う犬川。その隣で目を閉じたまま沈黙を貫く猿吉。それも木の幹にもたれながら。
「涼しいわね木陰って」
当たり前だろ。涼しくない木陰なんてあるのかよ。
俺に聴こえるように声量を大きくしているのが余計に腹が立つ。
そんなこと考えてる場合じゃなかった。まずはビニールハウスから物色しておこう。
ビニールハウスに近づいてみる。一見はただの郊外にありそうなビニールハウスだが異世界だからか何かオーラが違う。
いざ入ってみると外よりも涼しく温度設定しているみたいだ。地面には畑に似た土を使っており縦に三列果物が実った植物が植えてあった。
農業については門外漢だが果物は味見してみれば使えるか使えないかくらいは判る。
俺は膝くらい位置にある果実をしゃがんでつまみ採ってみる。色は紫でイチゴくらい大きさをしており形は蔕を除けば完全な球体だ。
口に入れてみる。甘味は少ないが酸味がそれを際立たせるので近いならブルーベリーだろうか?
「まずはこれを二十個ほど、あとは二種類」
もう一方のビニールハウスにも行ってみる。そこはみかんくらいの大きさをした赤色の果実。
これも味見してみた。かなり甘味があって酸味が少なく果物としては現実世界には無いような未体験の味だと舌が唸っている。
「これはこれでありかも」
この果実は大きいので三つほどにしておいた。
それにしても果実の大きさがあれだけ違うのに元の地面から茎の頂までの背丈はほぼ同じというのが少し気になってる。どうでもいいと思うが。
あとひとつを採るためビニールハウスから退出。一旦テーブルに果実を置いてこよう。
俺はケーキの用意してあるテーブルに向かった。
広大な畑の方からディエゴチームの怒鳴り声が聴こえるが気にしないようにした。
「次は畑の方に行ってみるとするか」
「わっ」
突然、後ろから肩をに手を乗せられ振り向いたが顔が困惑しているのか、俺を見て爆笑する犬川。
「ハハハ本当志乃って面白いわ」
人の顔見て笑うとは無礼な行為を。
「でさフフどうよフフフ」
「まずは笑いを鎮めろ」
「それもそうね」
まだ口元がにやついてるぞ。
改めて俺を見なおす。
そしてしゃがみこんで爆笑し始める。何がそんなに面白いのか判らん。
「大丈夫ですか犬川さん」
「やめて話しかけないで笑いが、フフ止まらない」
俺は聞く耳持たずの犬川をその場において畑へ向かうことにした。
「では結果を発表します一位はスーパーアホしのチームです」
こんなチーム名つけるのなんて一人しか居ない。犬川アイツあとで説教だ!
俺は真後ろに並んで立っている犬川を睨み付ける。
「フフ」
口を抑えながらかすかに嘲笑う犬川。こいつ許さん。
「一位の訳してアホチームは決勝に進出しましたので城内の大広間二階にあります待合室のAで待機していてください」
「一位だぞ志乃。やはりお前のスイーツ愛は本物と証明されたぞ」
猿吉が俺のスイーツ愛を称賛している目の前で口を抑えて笑い続ける犬川。というかアホチームで訳すなよ志乃チームにしろよ。
「早く行こうぞ志乃」
俺を急かせる猿吉。
「早くしないと置いてくわよ」
「今行きます」
そして今度は少し微笑む犬川。どうしたんだあいつ?
一行は決勝のために待合室に向かうのだった。




