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Case1-3 ハジマリのサイショ
「あ…愛歌…?」
飛夜理がぽつりと呟いた。
そうすると、はっと愛歌は俯いた顔を上げ、はは、と苦笑いをした。
「なんでもない、うん。なんでも」
そして、愛歌は目線をふと反らし、ははっ、と小さく笑い、教室を後にした。
「…気にしない方が…良い…」
薄黒い、髪色の少年がぼそっと呟いた。
はぁ、と飛夜理は頷いた。
「やっぱり、妙だ…」
飛夜理はぼやいた。
今日出会った舞菜という少女、奇妙な性格の愛歌、さっきの薄黒い髪の少年。
まだ半日も経つか経たないかの時間なのに、疲れた気がする。
「や、坂下くん。」
うわっ、とつい声を上げた。
にこにこと笑う横結びの少女にその少女の影に隠れる少年。
「ほら、優も挨拶しなよ。」
少女の影に隠れていた少年が恐る恐る顔を出した。
(うわ…っ、よっぽどの人見知りだなぁ…)
と、飛夜理は思いつつも、自分もそうか、と悟った。
「よろしく…お願いします。空下優です」
いそいそと挨拶をした。
やっとまともな人出てきた、と思いつつも、他の皆と楽しくなりそう、とも思った。




